自閉症スペクトラム障害(ASD)の人の寿命
2016年、スウェーデン・カロリンスカ研究所によると、自閉症スペクトラム障害(以下ASD)の患者は、健康的な人の平均寿命に比べて約18年も寿命が短いことを示す研究結果を発表しました。
研究はスウェーデンの国家登録データから社会コミュニケーション障害を持つ2万7000人と、健康な250万人を対象に調査しました。
その結果ASDを持つ人はそうでない人より平均18年寿命が短いのですが、ASDのみ診断されている人は平均より12年、ASDに加えて学習障害と診断されている人は平均30年も寿命が短い傾向にあるとの事です。
あるスウェーデン国内の調査では、ASDを持つ約40%がてんかんを持っています。
自閉症チャリティ団体Autisticaによると、自閉症患者は著しい社会・文化的圧力を受けているという調査結果を報告しており、他人からのいじめ、調和の圧力・社会的隔離などの複合的原因が、ASD患者を自殺に走らせていると指摘しています。
学習障害を持つ成人のASD患者の自殺する可能性は一般平均の9倍以上になるという事が分かっています。
女性の自閉症
自閉症は男性の方が女性よりも発症率が3~4倍高いといわれます。
2016年に報告された研究では、知能指数が高い自閉症の女性は自身の症状をカモフラージュするのが一般的であるとのことです。
さらに意志が自閉症の女児を判別できず、その理由として自閉症は男児では過活動で見分けやすいのに対して、女児は不安が強くうつ病のように見えるためと考えられています。
また、幼少期に自閉症を見つけるための「自閉症診断観察スケジュール(ADOS)などの手法は、男児向けに設計されているため、女児の自閉症は見逃されがちとも言われます。
一般に、女性の脳は自閉症を発症しにくくする「女性保護効果」ともいうべき現象が見られます。
そのため女性は自閉症を引き起こす脳細胞の突然変異が男性よりも重症化あるいは、より多く発生することが分かっています。
2015年のワシントン大学での研究は、重度の自閉症女性13名を調査したところ、自閉症を持たない人に比べ、「CTNND2」と呼ばれる遺伝配列に多くの変異が見られることが分かりました。
他の何千というデータを評価することで、この遺伝子が配列に突然変異を起こしていることが確認されました。
さらにゼブラフィッシュの遺伝子に手を加えて、突然変異を起こしたところ、自閉症が分かっている脳内の部分に問題が生じた事が確認されました。
さらにマウスを使ってCTNND2遺伝子の変異を促す実験を行ったところ、脳の短期記憶に重要な海馬に存在するニューロンが相互に対話する動きを止めてしまうことが分かりました。
変異遺伝子が自閉症ではない親に検出される例もあり、同一変異で自閉症と自閉症スペクトラム障害が生じている家系があることから、遺伝子変異だけで発症するのではなく、何らかの要素が発症には必要であるということが分かってきました。