知的障害(精神遅滞)の定義と診断、治療について

知的障害は精神遅滞とも表される、知的発達の障害です。知的機能や適応機能に基づいて判断され、知能指数により分類されます。様々な中枢神経系疾患が原因となるため、正しい診断を受けて、早期に治療・療育・教育を行う必要があります。本人のみならず、家族への支援もかかせない発達障害のひとつです。

知的障害(ID: Intellectual Disability)は、医学領域の精神遅滞(MR: Mental Retardation)と同じものを指し、「知的発達の障害」を表します。すなわち「1. 全般的な知的機能が同年齢の子どもと比べて明らかに遅滞し」「2. 適応機能の明らかな制限が」「3. 18歳未満に生じる」と定義されるものです。中枢神経系の機能に影響を与える様々な病態で生じうるので「疾患群」とも言えます。

有病率は約1%前後とされ、男女比はおよそ1.5:1です。知的機能は知能検査によって測られ、知能指数(IQ)70以下を低下と判断します。IQ値によって、軽度・中等度・重度と分類されることもあります。重い運動障害を伴った重度知的障害を重症心身障害と表記することもあります。

適応機能とは、日常生活でその人に期待される要求に対していかに効率よく適切に対処し、自立しているのかを表す機能のことです。たとえば食事の準備・対人関係・お金の管理などを含むもので、年長となって社会生活を営むために重要な要素となるものです。

診断

症状が重ければ年齢の若いうちから気づかれ、軽いと診断も遅くなります。幼児期には言葉の遅れ、たとえば言葉数が少ない・理解している言葉が少ないといったことで疑われます。また合併症が先に気づかれて、後に知的障害(精神遅滞)と分かることもあります。

診断にあたっては、症状の評価とともに原因疾患の有無を調べます。原因として知られるものに、染色体異常・神経皮膚症候群・先天代謝異常症・胎児期の感染症(たとえば先天性風疹症候群など)・中枢神経感染症(たとえば細菌性髄膜炎など)・脳奇形・てんかんなど発作性疾患があげられ、多岐にわたっています。

どの検査をどこまで行うかは、お子さんの症状に基づいて決定されます。すなわち日常の様子や両親など保護者の訴え、なによりも本人の診察所見を総合して決まるもので、ケース・バイ・ケースと言えるでしょう。知的評価に加えて、粗大運動能力・手先の操作性・社会性・言語の理解表出の力も診断に際して大事な情報となります。

医学的な診断は上記の基準でなされますが、精神遅滞(知的障害)に対する福祉的な捉え方には変化が生じています。それは知的な能力と日常生活における活動能力は必ずしも並行したものではなく、個人ごとに必要な援助は異なることが指摘され、必要な援助の様式と強さによって、精神遅滞(知的障害)を分けていこうとする立場です。サービスを受けるための制度として、療育手帳があります。申請条件はお住まいの都道府県によって若干異なることもありますので確認する必要があります。

治療と予後

精神遅滞のほとんどで、基礎にある知的障害そのものを改善させることは難しい状況です。しかし恵まれた環境下においては適応機能などが向上する可能性が十分あります。早期に発見され適切な療育が施された場合、児の長期的予後は改善するとされています。本人のみならず家族への支援も欠かせないと考えられます。

知能やその遅れに関する知識の啓蒙や教育を当事者のみならず一般社会に行うこと、家族や遺伝に関するカウンセリングがなされることも有用と思われます。出生前後の適切な医学的対応や生後のさまざまな福祉的・教育的支援(特別支援教育)は、精神遅滞や二次的な合併症を最低限にとどめることに役立つと思われます。

厚生労働省「e-ヘルスネット」より

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