発達障害の原因とメカニズム、治療10 注意欠陥/多動性障害ADHD(脳基質編)

脳の基質異常

ADHDは脳の発達の遅れが関係していると考えられています。
また脳の神経伝達物質であるドーパミンやノルアドレナリン(ノルエピネフリン)の働きが不足していることも分かっています。
その仕組みはニューロン(神経細胞)から放出されたドーパミンなどの神経伝達物質が隣のニューロンの神経伝達物質受容体に結合して、情報を伝達します。
受容体に結合しなかった神経伝達物質はトランスポーターと呼ばれる取り込み口から元のニューロンに再取り込みされます。
ADHDではこのトランスポーターが過剰に働いて、神経伝達物質を再取り込みし過ぎてしまう可能性が考えられています。
ADHDはタイプによって、大脳の前頭前皮質や側頭葉の活動が低いタイプや前帯状回や大脳辺縁系の活動過多のタイプ、大脳の皮質全体が活動過多のタイプがありそれぞれ、症状に違いがあります。

ADHDの場合、脳のサイズが小さい部位があることが確認されており、それはPTSDなどトラウマへの脆弱性と関係している部位が含まれ、ストレス体性の低さや過敏さを示唆しています。
オランダ・ラドバウド大学の研究では、ADHDと診断された1713人とそうでない1529人の脳をスキャンしたところ、ADHDの人の方がわずかに脳の5つの領域が小さいことが分かっています。
この5つは側坐核、偏桃体、尾状核、海馬、被殻という部分です。側坐核や被殻は、報酬系と関係している部分で、やる気や意欲に関係しています。
これは学業に集中することが困難な傾向があることを示しています。

尾状核は学習や記憶と関係し、脳のモードを切り替えるスイッチのような役割をしています。例えばバイリンガルの人が言語を切り替える時に尾状核が働いていることが分かっています。偏桃体は、危険を察知するアラームのような機能を果たしており、海馬は短期記憶などの学習に関係しています。

偏桃体や海馬が小さいことは、PTSDをはじめ、しばしばADHDの人がなりやすいといわれる境界性パーソナリティ障害でも確認されています。

海馬の萎縮はストレスホルモンのコルチゾールによって起こることは知られていますが、海馬や返答たちの領域が小さいことが、トラウマ体験によりPTSDが発症しやすいとも考えられています。

睡眠不足の子どもは海馬が小さく、ADHDの子どもは乳幼児から睡眠障害を抱えやすいことが海馬の発達を送らせている可能性があります。
オランダ・アムステルダム自由大学医療センター(VUmc)での研究ではADHD患者の75%は、睡眠のためのホルモンであるメラトニンの分泌変化など、睡眠に関連して現れる生理的徴候が、健常者に比べて1.5時間遅く、これに伴って睡眠中の体温変化も遅いことが分かっています。

ADHDの子どもは同年代の子どもと比較すると脳の成熟の遅れが見られ、特に行動のコントロールにかかわる前頭前皮質には最大5年の遅れが見られています。
しかしADHDの若者に見られる脳の成熟の遅れは、多くの場合、20代後半まで緩やかに成長していく中で最終的には追いつくものとされています。

ADHD治療につながるタンパク質

2018年、タンパク質アルギニンメチルトランスフェラーゼ8(Prmt8)はADHDの改善とアセチルコリン量の調節に重要なことが分かりました。

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