発達障害と漢方薬

抑肝散(よくかんさん)と抑肝散陳皮半夏

抑肝散は「漢方診療医典」によると、「神経症で刺激症状が激しく、一般に癇が強いといわれている、肝気のたかぶりによる興奮を抑え、鎮静させるところから抑肝散と名付けられた」そうです。

抑肝散はADHDにも効能があり、抑肝散や抑肝散陳皮半夏はいらいらや易怒的、暴言、暴力、神経過敏や不眠に効果があるそうです。

ADHDに有効な漢方薬の研究に取り組んでいる一二三堂薬局のホームページによると、ADHDによる症状は精神状態がコントロールできないことによって生じていると考えており、漢方医学では精神状態をコントロールするのは主に「肝」で、「肝」は気の流れをスムーズにして精神状態を安定にする働きがあるそうです。

そのため、「肝」の力が衰えることは「肝」にためられていた「血(けつ)」が消耗しているためにそれを補うのを目的として、地黄、当帰、芍薬、阿膠、酸棗仁、竜眼肉などの補血薬を含んだ漢方が有効なのだそうです。

焦燥感が強く短気な状態であれば、黄芩や黄連などの熱を鎮める清熱薬も使われるそうです。他に竜骨や牡蠣も気持ちを鎮める効果があるとのことです。

島根大学医学部精神医学講座の宮岡剛准教授を研究代表者とする研究に、抑肝散が自閉症スペクトラムに対して有用性があるかという研究があります。

人参養栄湯

久留米大学医療センター副院長で先進漢方治療センター教授の惠紙英昭先生によると、中学生の時に発達障害と診断され、その後も学校や職場で問題を起こしていた方が、人参養栄湯によって、それまでの問題行為がなくなり、職場でも問題を起こさないで働いているとの事で、アスペルガー症候群などの発達障害の患者に良いように思うとの事です。
同様に、神田橋処方で知られる神田橋條治先生も「発達障害系の患者さんには人参養栄湯が良い」とおっしゃり、処方された発達障害の患者さんは過敏さが軽減して角がとれて丸くなっていくそうです。

大柴胡湯(だいさいことう)と甘麦大棗湯(かんばくたいそうとう)

大柴胡湯は自閉症の子どもの不眠にに有効なのだそうです。また、自閉症の娘に甘麦大棗湯を試してみましたが、良かったですよという声もありました。岡クリニックの岡留美子先生によると、自閉症には抑肝散や大柴胡湯などの柴胡剤が使用されますが、柴胡剤は興奮状態を抑えられても「こだわり」には効果がなく、一方井で肝麦大棗湯は「こだわり」を緩和してくれるとのことです。

大柴胡湯加抑肝散

漢方による治療に取り組んでいる飯田誠先生は、児童精神科医として国立精神・神経センターに勤務され、定年退職後に調布市に「飯田医院」を開業した方です。自閉症の方に大柴胡湯と抑肝散との合剤を、自閉症に処方したところ、表情が明るくなり、視線が合うようになった。言葉のない子でもコミュニケーションがよくなり、こちらの言うことがわかるようになった。ひどいこだわりがなくなった。急な計画の変更にもパニックにならず。融通がきくようになったなどの変化があったそうです。

自閉症スペクトラムの漢方薬

ポレポレクリニック院長の辻内先生によると自閉症スペクトラム(ASD)によく使われる漢方薬として、四逆散、抑肝散、肝麦大棗湯(かんばくたいそうとう)、酸棗仁湯(さんそうにんとう)のほか、抑肝散加陳皮半夏、柴胡清肝湯(さいこせいかんとう)、柴胡加竜骨牡蠣湯(さいこかりゅうこつぼれいとう)などを使うそうです。

参考

Wikipedia

Phil漢方 No.70 2018

厚生労働省科学研究成果データベース

一二三堂薬局

漢方学習ノート「自閉症は漢方でよくなる」

そらとも広場

第61回日本東洋医学会学術総会伝統医学臨床セミナー 抑肝散の応用(2011)

漢方トゥデイ 印象に残る症例②(2013)

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