自閉症スペクトラムにみられる「3つ組の障害」について

自閉症スペクトラムの定義

ローナ・ウィングは自閉症スペクトラム(ASD)を社会性、社会的コミュニケーション、社会的イマジネーションの3つ組の障害と定義しました。

社会性の障害
(社会性の質的な差異)

同年代の他者と相互的な交流を行うことが困難なことが基本的な特性です。幼児期には他者の存在への無関心、人により物への興味の強さで表現されることが多く、学童期以降には親密で対等の関係を友人と構築することの困難さが特徴です。

例えば、相手が嫌がっていても抱きつきに行ったり、見知らぬ人にも警戒心が乏しかったり、間違っても謝らない、相手の困惑に気付かず関わっていったりということが見られます。

相手にも都合があることを知能年齢相応に気付いて、相手を快適にさせる事を自分自身も楽しく思って、その技術を自然に身につけて相手と関わりを持つことや、場の空気を読んだり周囲に配慮して行動したり、挨拶や礼儀といった常識を獲得していくことが困難といえます。

そのため、悪気がないのに「非常識」「自己中心的」ととられ、他人の怒りを買ってしまうことつながります。

本人としてはルールや具体的な基準が示されてないのだから自分は悪くない。そう言われなかったのだから、基準を示さないのにどうして怒られるのかといった感覚があるようです。

ASDの人たちの社会性は発達しないわけではなく、ゆっくりと発達し変化していきます。

また、知的に高い人たちは、これまでの経験をもとに自分で特性が目立たないようにカバーしていることも多く見られます。

社会の常識や暗黙のルールに無頓着なため、自由な発想ができたり、孤立しても継続できることで、やり遂げられたり、周囲の感情に惑わされないといったことが長所となる場合もあります。

社会的コミュニケーションの障害
(コミュニケーションの質的な差異)

コミュニケーションには、表出(話すことや表情・仕草などで表現する)と理解(聞くことや相手の表情や仕草を見る)があります。対人場面におけるコミュニケーションは、そうした表出と理解の両方が円滑かつスピーディーに行える事で成立します。

“表出”には、言葉以外に身振り手振りなどのジェスチャーも含まれます。そうした表出全般に偏りが生じえます。ASDの人には言葉以外のジェスチャーといったようなコミュニケーションにも困難があります。

ASDの人のコミュニケーション障害はコミュニケーションの発達の遅れが本質ではなく、社会的場面でのコミュニケーションの方法が独特であるのが特徴です。

コミュニケーション方法の偏りとして

・一見流暢に話し、専門用語や四文字熟語などを多用する人でも、意味を十分に理解せずに使用している。

・ASDの人は知識として獲得している言葉の数と実際に使われる言葉にギャップがある。

・音程や抑揚、速さ、リズムに偏りがあり話し方が単調。

・リズムが不自然

・自分の好みのことを一方的に話し続ける。

・話題の偏り

・ワンパターンなフレーズ

・相手の言葉をそのまま繰り返してしまう。

といったことです。

”理解”については、

・他人の話を聞いていない。

・言葉を字義通りに受け取ってしまう。

・冗談や皮肉、たとえ話を理解しにくい。

・言葉の裏を読むことが苦手。

・相手の発した言葉の中で自分の気になった部分のみに着目してしまう。

・相手の話している途中で他のことを話し始める。

・休憩時間と勉強時間の切替ができず、話し続ける。

といった偏りがあります。

本人としては、「色々と思い浮かんだことを頑張って伝えようとしているのに、なぜ怒るのだろう。」「興味のない話だから、伝えたいことがあるなら文字にしてほしい。」と感じたりしています。

コミュニケーションによって得られるメリットに気付いていなかったり、コミュニケーションそのものを楽しむ、あるいは相手にコミュニケーションを期待されていることを気付いていない場合も見られます。

社会的イマジネーションの障害
(イマジネーションの質的な差異)

目の前の現実にはない事柄(物・情報・可能性など)について頭の中で操作する能力がイマジネーションです。イマジネーションを発達させることで、自分の予想していた事柄と予想外の現実との間にも共通功を見出して「そういうこともある」と思ったり、その展開に至った事情を推測して納得したり、思いがけない展開の落ち着く先を予測し安心できる能力を獲得します。つまり急な変更でも安心、納得し予想のつかない未来を楽しめるのはイマジネーションのおかげです。

イマジネーションに偏りがあると、考え、行動、感情などのリセットが難しく柔軟性に乏しい行動パターンになります。譲れない決め事や周囲に奇妙な印象を与えるほどのものや情報への執着、新しいことに手をつけようとしない、いつまでもぶつぶつ文句を言う、指示通りに行動するが精神疲労が著しいなどが見られます。

ASDの人が物を並べる、特定のものを集める、同じ行動を繰り返すなどの“こだわり”といわれる行動は、イマジネーションの障害が背景にあります。次に起こることを想像することが難しく、自分なりに見通しをもつことができないため、同じパターンを繰り返し行うことで安心しやすいです。

そのため突然のスケジュール変更や中止、ルール変更などを極端に嫌がりパニックになることがあります。

例外を認めなかったり、他人の誤りを許さないといった事も同じ特性が原因で現れます。

本人としては「決められらルールや決まったことをどうして変更するのかわからない」「変更があったために出来ないのを、自分が起こられるのは納得いかない」といった感情に結びついていきます。これらのことは誰かの立場を想像することが難しいということで現れます。

また、自分の好みの物や知識を集めたり、物をそろえることを好んだり、せっかく集めても、それを本来の目的ではなく、ただ蒐集することだけで満足することもあります。

目に見えないもの(イメージ)の共有は苦手なことが多いが、そこに具体的な実物、写真、絵、文字などの情報が見える形であると、イメージを他者と共有しやすくなるのが特徴です。

また、決められた手順や一度決めたルールにこだわるため、物事を真剣に取り組み、単純作業などを嫌がらずに続けられる。規則正しく生活できる。記憶力が高いなどの長所となって現れる場合があります。

参考

Wikipedia

よこはま発達クリニック

iPECペック研究所

全国地域生活支援機構

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