自閉症とその原因や症状、治療について

自閉症は多くの遺伝的な要因が複雑に関与して起こる生まれつきの脳機能障害で、症状が軽い人たちまで含めると約100人に1人いると言われています。自閉症の人々の状態像は非常に多様であり、信頼できる専門家のアドバイスをもとに状態を正しく理解し、個々のニーズに合った適切な療育・教育的支援につなげていく必要があります。

自閉症とは

自閉症は「1. 対人関係の障害」「2. コミュニケーションの障害」「3. パターン化した興味や活動」の3つの特徴をもつ障害で、生後まもなくから明らかになります。最近では症状が軽い人たちまで含めて、自閉症スペクトラム障害という呼び方もされています。

自閉症概念の広がり

長い間、自閉症はかなり稀で重い障害だと考えられてきました。しかし最近、比較的症状が軽い「アスペルガー症候群」や「非定型自閉症」の存在がよく知られるようになりました。これまで周囲に理解されず性格の問題などと誤解に苦しみ、支援の対象でなかった人たちが気づかれるようになったのです。

自閉症の原因

自閉症の原因はまだ特定されていませんが、多くの遺伝的な要因が複雑に関与して起こる、生まれつきの脳の機能障害が原因と考えられています。胎内環境や周産期のトラブルなども、関係している可能性があります。親の育て方が原因ではありません。

自閉症の症状・合併症

自閉症の人々の状態像は、年齢や知的障害(精神遅滞)の有無、症状の程度などによって非常に多様です。幼児期では「目が合わない」「他の子に関心がない」「言葉が遅い」などで気づかれることが多く、「一人遊びが多い」「指さしをしない」「人のまねをしない」「名前を呼んでも振り向かない」「表情が乏しい」「落ち着きがない」「かんしゃくが強い」などもよく見られます。

自閉症の人々の半数以上は知的障害を伴い、症状が重い人では合併が多くなります。残りの約3割は知能には遅れがない、高機能自閉症と呼ばれる人々です。言語を獲得して学業成績が良い場合もありますが、人との会話は苦手です。児童期・青年期には注意欠陥/多動性障害(AD/HD)、学習障害(LD)、てんかんを合併しやすいことが知られています。

自閉症の発生頻度

最新の報告では、自閉症は約100人に1人いると報告されています。性別では男性に多く、女性の約4倍の発生頻度です。ただし、女性では 過少評価されている可能性もあります。[1]自閉症のきょうだいの発症リスクは、約10-20倍であることが知られています。[2]

自閉症の治療

現代の医学では自閉症の根本的な原因を治療する事はまだ不可能ですが、彼らは独特の仕方で物事を学んでいくので、個々の発達ペースに沿った療育・教育的な対応が必要となります。かんしゃくや多動・こだわりなど、個別の症状は薬によって軽減する場合があります。信頼できる専門家のアドバイスをもとに状態を正しく理解し、個々のニーズに合った適切な支援につなげていく必要があります。乳幼児期から始まる家庭療育・学校教育そして就労支援へと、ライフステージを通じたサポートが、生活を安定したものにすると考えられています。

厚生労働省「e-ヘルスネット」より