WISC-Ⅲ知能検査の結果を指導・支援に活用するために

ここでは、検査結果から求められた群指数(VC,PO,FD,PS)に着目した、それぞれの群指数の特性から生じる学習面、行動面・社会性での困難、および支援の例を紹介します。

学習における支援

1 言語理解(VC)が弱い子どもへの学習面の支援

基礎的な困難として考えらえること

● ことばを理解することが苦手

● ことばで表現することが苦手

● ことばを使って考えることが苦手

認知特性から生じる学習の困難例

● 指示の理解が難しい

● あることばを間違った意味で使うことがある

● 文法的に不正確な言い方をする

● 音読はできても内容を理解していないことがある

● 作文を書く際、内容的に乏しい

● 文章題を書くのが難しい

● 時間の概念を表す言葉の理解が難しい

支援の例

○ 言語指示はやさしいことばで簡潔に、ゆっくり、はっきり伝える

○ 一度で理解できない時には指示を繰り返す

○ 集団支持を理解できない時には個別に言う

○ 絵や図、文字やモデルを示して伝える

○ 実際の生活や場面と結び付ける

○ 文章の内容を絵で示す

○ 作文を書く際、写真や資料などを手がかりとして与える

○ 文章題を解く際、キーワード(例:「合わせて」「のこりは」に注目させる

○ 文章題の内容を絵や図で示す

2 知覚統合(PO)が弱い子どもへの学習面の支援

基礎的な困難として考えられること

● 目で見たことを理解することが苦手

● 動作で表現することが苦手

● 物事を空間的・総合的に処理することが苦手

認知特性から生じる学習の困難例

● 聞いた内容を頭の中でまとめることが難しい(なぞなぞ)

● 話している内容がまとまりにくい

● 文章を要約することが難しい

● 量を比較することが難しい

● 形を弁別したり、構成したりすることが難しい

● 図形の見取り図や展開図を描くことが難しい

● 表やグラフにまとめることが難しい

支援の例

○ ことばで説明する

○ ひとつひとつ順を追って説明する

○ 部分から全体へ説明する(例:段落をおさえてから文章全体へ)

○ 頭の中で操作させるのではなく、具体物を用いる

○ 図形の特徴などは、ことばで定義付ける

○ モデルを提示するときには、ことばを添えて説明する

○ 位置や場所などは上下左右、順序、方向、目印などを言語化して確認する

(例:上から〇段目、右から△番目)

3 注意記憶(FD)が弱い子どもへの学習面の支援

基礎的な困難として考えられること

● ことばや数をすぐに覚えることが苦手

● 数の操作が苦手

● 中位の集中や持続が苦手

認知特性から生じる学習の困難例

● 聞き間違いがある

● 聞いたことをすぐに忘れる

● ちょっとした雑音でも注意がそれやすい

● 促音や拗音などの特殊音を書き誤る

● 書けないひらがなやカタカナがある

● 簡単な計算や暗算ができない

● 九九が暗唱できない

支援の例

○ 中位の集中を促してから話しかける

○ 一度で理解できない時には指示を繰り返す

○ 絵や図、文字やモデルを補助的に用いる

○ 紙を使って計算させる

○ メモを活用する

○ 言語指示や説明は簡潔に行う

○ 集団支持を理解できないときには個別に言う

○ 覚える事柄を意味付けして覚えやすくする

○ 九九を覚えられない場合は、九九表を使ってもよいことにする

4 処理速度(PS)が弱い子どもへの学習面の支援

基礎的な困難として考えられること

● 目で見たことをすぐに覚えることが苦手

● 形を正確にとらえることが苦手

● 物事を素早く処理することが苦手

(目と手の協応の力)

認知の特性から生じる学習の困難例

● 書くのが遅い

● 文字を視写することが難しい

● 書くときの姿勢や、鉛筆等の用具の使い方がぎこちない

● 音読が遅い

● 形態的に似た漢字と読み誤る

● 演算記号(+,-,×,÷等)の理解が難しい

● 計算が遅い

支援の例

○ ことばで説明する

○ 課題に費やす時間を十分にとる

○ 文章を分かち書きにして示す

○ 写すべき見本をなるべく子どもの近いところに置く

○ 図形の特徴などは、ことばで定義付ける

○ 覚える事柄を、意味付けして、覚えやすくする

○ 使いやすい筆記用具(鉛筆、消しゴムなど)を用意する

○ 視写する量を減らす(例:ワークシートの利用)

行動面・社会性への支援

1 言語理解(VC)が弱い子どもの行動面・社会性の支援

基礎的な困難として考えられること

● ことばを理解することが苦手

● ことばで表現することが苦手

● ことばを使って考えることが苦手

認知特性から生じる行動や社会性の困難例

● 言語的な指示が理解できず集団行動からはずれてしまいやすい

● 日時や場所、やりとりなどを理解と表現が不正確でトラブルになる

● 事の流れや感情などをことばで説明できず誤解されやすい

● 会話に参加することが難しい

支援の例

〇 集団支持を理解できない時には個別に言う

〇 一度で理解できない時には指示を繰り返す

〇 約束は紙に書いて確認する

〇 あいさつや約束の取り決めなど、ロールプレイをとおして練習をする

〇 言語指示はやさしいことばで簡潔に、ゆっくり、はっきり伝える

〇 絵や写真などを身ながらマンツーマンで会話の練習をする

2 知覚統合(PO)が弱い子どもの行動面・社会性の支援

基礎的な困難として考えられること

● 目で見たことを理解することが苦手

● 動作で表現することが苦手

● 物事を空間的・総合的に処理することが苦手

認知特性から生じる学習の困難例

● 場面や状況、相手の表情を理解できずその場に

あった行動ができない

● 位置や方向、場所などを間違えてトラブルになる

● 持ち物の整理や分類がしにくい

● 社会的なルールが理解しにくい

支援の例

○ 場面や状況、その時の気持ちなどをわかりやすいことばで伝える

○ ロールプレイを通して対人的な行動について練習する

○ 位置や場所などは上下左右、順序、目印などを言語化して確認する

○ (例:上から2段目、右から3番目のロッカー)

○ 持ち物はしまう場所ごとに色分けした目印をつけておく

○ ルールはことばを用いて一つずつ確認する。

3 注意記憶(FD)が弱い子どもの行動面・社会性の支援

基礎的な困難として考えられること

● ことばや数をすぐに覚えることが苦手

● 数の操作が苦手

● 注意の集中や持続が困難

認知特性から生じる学習の困難例

● 友達の名前が覚えられない

● 約束を覚えていられずトラブルが生じやすい

● 相手の話を最後まで集中して聞いていられない

支援の例

○ 中位の集中を促してから話しかける

○ 覚える事柄を意味付けして覚えやすくする

○ 覚えておくべき事をメモする習慣を形成する

○ あいさつやよく用いる言い回しなどはロールプレイをとおして練習する

○ 言語指示や説明は簡潔に行う

○ 絵や図、文字やモデルを補助的に用いる

4 処理速度(PS)が弱い子どもの行動面・社会性の支援

基礎的な困難として考えられること

● 目で見たことをすぐに覚えることが苦手

● 形を正確にとらえることが苦手

● 物事を素早く処理することが苦手

(目と手の協応の力)

認知特性から生じる学習の困難例

● 必要な物がすぐに見つけられない

● 授業の準備が間に合わない

● 授業時間内に課題が終わらない

● 板書を写し終えることができない

● 活動のペースがゆっくりで、同学年集団の遊びについていけない

支援の例

○ 授業によって必要な準備や用具のチェックリストを作る

○ 使う用途によって持ち物に色分けした目印を付けておく

(例:図工の時間に使う物に赤いシールを貼っておく)

○ 課題の優先順位を考え、授業時間内に行う課題を厳選する

○ 学校全体で異年齢集団での活動を積極的に取り入れる

参考 山口県ホームページ

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