ここでは、検査結果から求められた群指数(VC,PO,FD,PS)に着目した、それぞれの群指数の特性から生じる学習面、行動面・社会性での困難、および支援の例を紹介します。
学習における支援
1 言語理解(VC)が弱い子どもへの学習面の支援
基礎的な困難として考えらえること ● ことばを理解することが苦手 ● ことばで表現することが苦手 ● ことばを使って考えることが苦手
| 認知特性から生じる学習の困難例 ● 指示の理解が難しい ● あることばを間違った意味で使うことがある ● 文法的に不正確な言い方をする ● 音読はできても内容を理解していないことがある ● 作文を書く際、内容的に乏しい ● 文章題を書くのが難しい ● 時間の概念を表す言葉の理解が難しい |
支援の例
○ 言語指示はやさしいことばで簡潔に、ゆっくり、はっきり伝える
○ 一度で理解できない時には指示を繰り返す
○ 集団支持を理解できない時には個別に言う
○ 絵や図、文字やモデルを示して伝える
○ 実際の生活や場面と結び付ける
○ 文章の内容を絵で示す
○ 作文を書く際、写真や資料などを手がかりとして与える
○ 文章題を解く際、キーワード(例:「合わせて」「のこりは」に注目させる
○ 文章題の内容を絵や図で示す
2 知覚統合(PO)が弱い子どもへの学習面の支援
基礎的な困難として考えられること ● 目で見たことを理解することが苦手 ● 動作で表現することが苦手 ● 物事を空間的・総合的に処理することが苦手
| 認知特性から生じる学習の困難例 ● 聞いた内容を頭の中でまとめることが難しい(なぞなぞ) ● 話している内容がまとまりにくい ● 文章を要約することが難しい ● 量を比較することが難しい ● 形を弁別したり、構成したりすることが難しい ● 図形の見取り図や展開図を描くことが難しい ● 表やグラフにまとめることが難しい |
支援の例
○ ことばで説明する
○ ひとつひとつ順を追って説明する
○ 部分から全体へ説明する(例:段落をおさえてから文章全体へ)
○ 頭の中で操作させるのではなく、具体物を用いる
○ 図形の特徴などは、ことばで定義付ける
○ モデルを提示するときには、ことばを添えて説明する
○ 位置や場所などは上下左右、順序、方向、目印などを言語化して確認する
(例:上から〇段目、右から△番目)
3 注意記憶(FD)が弱い子どもへの学習面の支援
基礎的な困難として考えられること ● ことばや数をすぐに覚えることが苦手 ● 数の操作が苦手 ● 中位の集中や持続が苦手
| 認知特性から生じる学習の困難例 ● 聞き間違いがある ● 聞いたことをすぐに忘れる ● ちょっとした雑音でも注意がそれやすい ● 促音や拗音などの特殊音を書き誤る ● 書けないひらがなやカタカナがある ● 簡単な計算や暗算ができない ● 九九が暗唱できない |
支援の例
○ 中位の集中を促してから話しかける
○ 一度で理解できない時には指示を繰り返す
○ 絵や図、文字やモデルを補助的に用いる
○ 紙を使って計算させる
○ メモを活用する
○ 言語指示や説明は簡潔に行う
○ 集団支持を理解できないときには個別に言う
○ 覚える事柄を意味付けして覚えやすくする
○ 九九を覚えられない場合は、九九表を使ってもよいことにする
4 処理速度(PS)が弱い子どもへの学習面の支援
基礎的な困難として考えられること ● 目で見たことをすぐに覚えることが苦手 ● 形を正確にとらえることが苦手 ● 物事を素早く処理することが苦手 (目と手の協応の力)
| 認知の特性から生じる学習の困難例 ● 書くのが遅い ● 文字を視写することが難しい ● 書くときの姿勢や、鉛筆等の用具の使い方がぎこちない ● 音読が遅い ● 形態的に似た漢字と読み誤る ● 演算記号(+,-,×,÷等)の理解が難しい ● 計算が遅い |
支援の例
○ ことばで説明する
○ 課題に費やす時間を十分にとる
○ 文章を分かち書きにして示す
○ 写すべき見本をなるべく子どもの近いところに置く
○ 図形の特徴などは、ことばで定義付ける
○ 覚える事柄を、意味付けして、覚えやすくする
○ 使いやすい筆記用具(鉛筆、消しゴムなど)を用意する
○ 視写する量を減らす(例:ワークシートの利用)
行動面・社会性への支援
1 言語理解(VC)が弱い子どもの行動面・社会性の支援
基礎的な困難として考えられること ● ことばを理解することが苦手 ● ことばで表現することが苦手 ● ことばを使って考えることが苦手
| 認知特性から生じる行動や社会性の困難例 ● 言語的な指示が理解できず集団行動からはずれてしまいやすい ● 日時や場所、やりとりなどを理解と表現が不正確でトラブルになる ● 事の流れや感情などをことばで説明できず誤解されやすい ● 会話に参加することが難しい |
支援の例
〇 集団支持を理解できない時には個別に言う
〇 一度で理解できない時には指示を繰り返す
〇 約束は紙に書いて確認する
〇 あいさつや約束の取り決めなど、ロールプレイをとおして練習をする
〇 言語指示はやさしいことばで簡潔に、ゆっくり、はっきり伝える
〇 絵や写真などを身ながらマンツーマンで会話の練習をする
2 知覚統合(PO)が弱い子どもの行動面・社会性の支援
基礎的な困難として考えられること ● 目で見たことを理解することが苦手 ● 動作で表現することが苦手 ● 物事を空間的・総合的に処理することが苦手
| 認知特性から生じる学習の困難例 ● 場面や状況、相手の表情を理解できずその場に あった行動ができない ● 位置や方向、場所などを間違えてトラブルになる ● 持ち物の整理や分類がしにくい ● 社会的なルールが理解しにくい |
支援の例
○ 場面や状況、その時の気持ちなどをわかりやすいことばで伝える
○ ロールプレイを通して対人的な行動について練習する
○ 位置や場所などは上下左右、順序、目印などを言語化して確認する
○ (例:上から2段目、右から3番目のロッカー)
○ 持ち物はしまう場所ごとに色分けした目印をつけておく
○ ルールはことばを用いて一つずつ確認する。
3 注意記憶(FD)が弱い子どもの行動面・社会性の支援
基礎的な困難として考えられること ● ことばや数をすぐに覚えることが苦手 ● 数の操作が苦手 ● 注意の集中や持続が困難 | 認知特性から生じる学習の困難例 ● 友達の名前が覚えられない ● 約束を覚えていられずトラブルが生じやすい ● 相手の話を最後まで集中して聞いていられない |
支援の例
○ 中位の集中を促してから話しかける
○ 覚える事柄を意味付けして覚えやすくする
○ 覚えておくべき事をメモする習慣を形成する
○ あいさつやよく用いる言い回しなどはロールプレイをとおして練習する
○ 言語指示や説明は簡潔に行う
○ 絵や図、文字やモデルを補助的に用いる
4 処理速度(PS)が弱い子どもの行動面・社会性の支援
基礎的な困難として考えられること ● 目で見たことをすぐに覚えることが苦手 ● 形を正確にとらえることが苦手 ● 物事を素早く処理することが苦手 (目と手の協応の力)
| 認知特性から生じる学習の困難例 ● 必要な物がすぐに見つけられない ● 授業の準備が間に合わない ● 授業時間内に課題が終わらない ● 板書を写し終えることができない ● 活動のペースがゆっくりで、同学年集団の遊びについていけない |
支援の例
○ 授業によって必要な準備や用具のチェックリストを作る
○ 使う用途によって持ち物に色分けした目印を付けておく
(例:図工の時間に使う物に赤いシールを貼っておく)
○ 課題の優先順位を考え、授業時間内に行う課題を厳選する
○ 学校全体で異年齢集団での活動を積極的に取り入れる
参考 山口県ホームページ