ビネー式知能検査3 田中ビネー知能検査とは

田中ビネー知能検査とは

田中ビネー知能検査とは、心理学者の田中寛一によって、1947年に出版されたものです。1954年、1970年、1987年に改訂されて、現行のものは2005年に出版された田中ビネー知能検査Ⅴです。

旧版では精神年齢と生活年齢の比によって知能指数を算出するようになっていましたが、現行版では、14歳以上の被験者には精神年齢を算出せず、偏差値IQ(知能指数)だけを求めるようになっています。

田中ビネー知能検査Ⅴの特徴は

個別式の知能検査で、検査結果から知能指数(IQ)や精神年齢(MA)を算出して、知的発達段階を把握できます。合格や不合格になった問題の傾向から、学習課題を設定することができます。

「思考」「言語」「記憶」「数量」「知覚」などの問題で構成されており、アセスメントシートの活用により、発達年齢や認知特性が把握できます。

問題への取組の様子から、学習活動や支援方法を工夫する手がかりを得ることができます。

例)落ち着いて取り組めたか。集中できる時間はどのくらいか。わからない時にどんな様子を見せるか。等

また14歳以上では結晶性、流動性、記憶、論理推理の4分野についてそれぞれ偏差値IQを算出することが出来ます。

検査の基本原則

生活年齢2歳0カ月~13歳11か月の場合

子どもの生活年齢と等しい年齢級から開始します。1つでも合格できない問題があったら下の年齢給へ下がって、全問題を合格する年齢級まで行います。

前問合格すると、上の年齢級に進み、全問が不合格となる年齢級まで行います。(13歳級の問題を1問でも合格した場合は、成人級を実施します)各年齢級の問題は原則として問題番号順に実施します。

生活年齢14歳0ヵ月以上の場合

成人級の問題を全問実施し、通常は下の年齢級に下がることはしません。

例外的な検査手順

発達の遅れが予想される場合、不合格が続いて意欲が低下しないように開始年齢級を予測して始める場合もあります。

採点の方法

生活年齢(CA)の算出 → 精神年齢(MA)の算出 → 知能指数(IQ)の算出の順に行い、それぞれの算出方法は、「田中ビネー知能検査Ⅴ検査法採点マニュアル」を参照します。

知能指数(IQ)の判定 平均:100

健常領域:80以上

知的境界領域:71~79

軽度知的障害:51~70

中度知的障害:36~50

重度知的障害:21~35

最重度知的障害:20以下

行動観察の記録

検査中の様子を該当項目に〇印をつけたり、適宜観察記録を書き加えたりしてします。

検査の導入と経過

導入場面 

・スムーズに入室 ・逃げ出す ・泣く ・嫌がってなかなか入ろうとしない。

・最初入室を拒むが、次第に慣れる ・歩きまわって席に着かない ・落ち着かない

・ソワソワしている ・場面の変化に無頓着

テスター

・ラポートが(とれる/とりにくい) ・最初から楽しむ ・人見知り ・泣く

・恐れる ・口をきかない ・反抗的 ・なれなれしい ・甘える ・依存的

・リラックス ・緊張 ・物おじせず、自立的

問題に対して

質問に対する応答性   難しい問題に対して 言語について

・話を(よく聞く/聞かない)   ・あきらめずに取り組む    ・ハキハキと話す

・質問の了解がスムーズ     ・一応は考えてみる      ・ゆっくり話す

・質問の了解に手間取る     ・考えこむ          ・ためらいがちに話す

・何度も質問を聞き返す     ・気にする          ・早口

・よく考えて反応する      ・平気である         ・声が小さい

・よく考えないで反応する    ・すぐあきらめる       ・語尾が消える

・一生懸命に取り組む      ・全然手をつけない      ・(幼児音/幼児語)が

・自信をもって反応する     ・閉鎖的になる         ある

・拒否的で応えない       ・怒る   ・泣く      ・吃る

・黙り込む           ・他のことをする       ・語彙(豊富・少ない)

・自信がないと反応しない

・催促しないと反応しない

・真面目に応えない

動作、作業について

・テキパキ行う ・要領よく行う

・慎重  ・几帳面  ・粗雑

・見通しを立てて行う

・試行錯誤しながら行う

・計画的に行う

・行き当たりばったり

・工夫しながら行う

 問題を解いた後

・うれしそう  ・はしゃぐ

・不安そう   ・無頓着

・正誤を気にする

解釈は行動観察と反応分析から解釈します。

問題の構成

1~13歳 (96問)  14歳以上[成人級] (17問)

1歳級の下に発達チェックがあり、言語、動作、記憶、数量、推理、構成などのさまざまな内容があります。

年齢級番号課題名合格基準
1歳級01

02

03

04

05

06

07

08

09

10

11

12

チップ差し★11

犬さがし

身体各部の指示(客体)

語彙(物)★14

積木つみ

名称による物の指示★12

簡単な指図に従う★19

3種の型のはめこみ

用途による物の指示★21

語彙(絵)★24,25,37

チップ差し★1

名称による物の指示★6

1個以上

2/3

2/4

1/6

2個迄

1/6

1/3

2/2

1/7

1/18

8個以上

3/6

2歳級

13

14

15

16

17

18

19

20

21

22

23

24

動物の見分け

語彙(物)★4

大きさの比較

2語文の復唱

色分け

身体各部の指示(主体)

簡単な指図に従う★7

縦の線を引く

用途による物の指示★9

トンネル作り

絵の組み合わせ

語彙(絵)★10,25,37

8/9

5/6

4/4

1/2

完全

5/5

2/3

1/2

6/7

基準

2/3

14/18

3歳級

25

26

27

28

29

30

31

32

33

34

35

36

語彙(絵)★10,24,37

小鳥の絵の完成

短文の復唱(A)

属性による物の指示(物の選択)

位置の記憶(犬と自動車の配置)

数概念(2個)

物の定義

絵の異同弁別

理解(基本的生活習慣)

円を描く

反対類推(A)

数概念(3個)

16/18

基準

1/2

5/6

完全

4/4

2/3

9/9

2/2

1/2

2/4

2/2

4歳級

37

38

39

40

41

42

語彙(絵)★10,24,25

順序の記憶

理解(身体機能)

数概念(1対1の対応)

長方形の組み合わせ

反対類推(B)

18/18

2/2

1/2

2/2

3/3

2/3

5歳級

43

44

45

46

47

48

数の概念(10個まで)

絵の不合理★49

三角模写

絵の欠所発見

模倣によるひもとおし

左右の弁別

6/6

2/4

1/3

5/5

2/2

3/3

6歳級

49

50

51

52

53

54

絵の不合理★44

曜日

ひし形模写

理解(問題場面への対応)

数の比較★58

打数数え

3/4

3/3

1/3

2/3

2/4

3/3

7歳級

55

56

57

58

59

60

関係類推

記憶によるひもとおし

共通点(A)

数の比較★53

頭文字の同じ単語

話の不合理(A)

3/3

1/2

2/3

4/4

各2計

1/2

8歳級61

62

63

64

65

66

短文の復唱(B)

語順の並べ換え(A)

数的思考(A)

短文作り

垂直と水平の推理

共通点(B)

1/2

3/3

1/2

1/2

1/2

1/2

9歳級

67

68

69

70

71

72

絵の解釈(A)〈交通事故〉

数的思考(B)

差異点と共通点(物の異同)

図形の記憶(A)

話の不合理(B)

単語の列挙

基準

1/2

1/2

2/2

1/2

18以上

10歳級

73

74

75

76

77

78

絵の解釈(B)〈遠足〉

話の記憶(A)

ボールさがし

数的思考(C)

文の完成

積木の数(A)

基準

3/4

基準

1/2

2/3

10/14

11歳級

79

80

81

82

83

84

語の意味★85

形と位置の推理★90

話の記憶(B)

数的思考(D)

木偏、人偏のつく漢字

話の不合理(C)

3/5

1/2

3/5

1/2

各2計7以上

1/2

12歳級

85

86

87

88

89

90

語の意味★79

分類

数的思考(E)

図形の記憶(B)

語順の並べ換え(B)

形と位置の推理★80

4/5

4パタン以上

1/2

基準

2/2

2/2

13歳級91

92

93

94

95

96

共通点(C)

暗号

方角

積木の数(B)

話の不合理(D)

三段論法

1/3

2/2

2/3

2/4

1/2

3/3

成人級

結晶性

流動性

記憶

論理

推理

A01

A06

A08

A10

A15

A03

A13

A11

A14

A16

A17

A02

A04

A05

A07

A09

A12

抽象語

概念の共通点

文の構成

ことわざの解釈

概念の区別

積木の立体構成

マトリックス

語の記憶

場面の記憶

数の順唱

数の逆唱

関係推理(順番)

関係推理(時間)

関係推理(ネットワーク)

関係推理(種目)

数量の推理(工夫)

数量の推理(木の伸び)

参考

Dr.Clover’s Computer Clinic

サイコロジスト101

文教大学人間科学大事典

Wikipedia

Quizlet

総合心理相談 ES DISCOVERY

心理学用語の学習

中村屋

Webcat Plus

鈴木治太郎の知能の発達理論の検討

古市出版

白梅学園大学・短期大学紀要 戦前における鈴木治太郎の「適能教育」論の特徴と意義

鈴木ビネー知能検査改訂への道 心理検査出版社社員へのインタビューから

東京学芸大学紀要 総合教育科学系第59集(2008)

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする