K-ABC検査結果資料 C君の検査結果から

概要

対象 特別支援学校の中学生、男子

主訴

・学習時は、全体に対する話を最後まで集中して聞いたり、面倒なことを最後までやり遂げたりすることに対して苦手さを持っている。

・相手の気持ちや表情を読み取って話をすることが苦手で一方的に話すことがある。

検査者 学年主任

検査結果

個人内鎖では、同時尺度と計画尺度が継次尺度と学習尺度よりも有意に高いことが明らかになった。(同時尺度=計画尺度>継次尺度=学習尺度)。継次処理よりも同時処理の力を活用した指導が効果的である。つまり、同時型指導方略を用いて「全体から部分へ」指導することを基本として指導することが有効であると考えられる。また、視覚的な作業は比較的得意であるが、新しい物事を覚えるのは苦手である(学習尺度)。さらに、聴覚からの記憶は苦手であるため、得意な視覚からの情報を与えたり、自分で考える場面を設定したりすることが対象生徒にとってよりよい指導へつながるものと考えられる。

また、習得検査では語彙は比較的得点が高く、話し言葉は流暢であるために表面的には苦手な部分が気づかれにくい生徒である。特に言葉でのやり取りの際は、聴覚からの情報の記憶が苦手なため、最後まで話を聞いたり、言われたことを覚えて最後まで取り組んだりすることに本人も気づいていない苦手さがあると思われる。友達との会話で一方的に話すことからも、聴覚的な記憶を苦手としていることに関係があると考えられる。

以上のことから、次の2点に絞って個別の指導計画の指導法を修正した。

・聴覚記憶が弱いために、言語の身の指示は伝わりにくい。指示する際は、できるだけ区切って話しかけたり、文字や視覚情報にして伝えたりする。

・注意をした時、どのようにすればよかったのか本人に考えさせ、動作や言葉で正しい方法を経験させる。

カウフマンモデル

CHCモデル

保護者への説明

保護者への説明では、本生徒の姿として「言葉だけの情報は苦手なため、多くの情報を得ることは難しい。一生懸命聞いても情報が処理能力を超えると、その後の情報が全く伝わらない可能性がある。聞いていないように見えるときは、処理能力を超えているのかもしれない。」ということを伝えた。保護者は本生徒が「話を聞かされる=面倒なことをさせられる。」と思っていたから聞こうとしていないと認識していたようであった。これまで長い間気になっていた部分が分かり、関わり方にも本生徒の特性を意識していきたいとの事であった。

参考

長崎大学学術研究成果リポジトリ KABC-Ⅱを活用した児童生徒の認知機能の実態把握と教育への還元

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