ハズバンダリートレーニング・クリッカートレーニング

ハズバンダリートレーニング(Husbandry Training:HT)

ハズバンダリートレーニングとは

日本語訳としては受診動作訓練といい、通称「ハズトレ」ともいわれます。

応用行動分析学をベースとしたもので、正の強化を利用して動物に苦痛を与えず、より動物福祉に配慮した取り組みです。

動物園や水族館で、安全で健康的に飼育するために用いられます。

例えば部屋を掃除するために他の部屋に自ら移動するように覚えさせたり、採血や検温といった健康管理、緊急時の治療や投薬がしやすい体勢を取ることを覚えさせる、体重計に自分からのるようにするなどです。

エサなどの褒美を挙げる事で、ストレスなく自主的に手足を出したり口を開けたりするほか、方向転換したり移動したりするよう教えます。

叩いたりするような罰は一切与えません。
動物たちは褒められて褒美を貰いたいので自ら行動します。
動物と飼育員両方の安全を確保するためにも、大型動物や肉食動物などで特に必要性が高いと言われています。

日本では、水族館でイルカやアシカ等の海洋動物に対して行われ、動物園では野生動物へのトレーニングは不自然なものと見なされて敬遠されていましたが、野生と異なる環境下では、動物の健康管理やストレスの軽減のために必要な方法として広まっています。
ペットへのしつけとしても、飼い主がペットの世話をするうえでも、お互い負担なく行うのに役に立ちます。

トレーニングでは、動物の性格の違いが現れてきます。完璧主義であれば、こちらの意図を先回りして読んで、それが合っているとスッキリ覚えてくれますが、よく分からない場合、イライラしてしまいます。大雑把な性格であれば、だいたいこんな感じだろうと探りを入れて後から調整するような事があります。同じ動物であっても性格によって違った行動が見られます。

クリッカートレーニング

クリッカーは「カチッ」というクリック音の鳴る道具です。これは動物に何かを覚えさせる際に、補助的に利用して二次的な強化を図ります。
言葉による賞賛であれば、人により声質や口調も違いますし、同じ人でもその時の体調や感情によっていつも同じ調子というわけにはいきません。クリッカーを使用することは人間の声のように感情に左右されませんし、いつも同じ調子の短い音が鳴ります。
その音が鳴るという事は動物にとって「自分は正しいことをしている。」という確認の音になります。

トレーニング法

1 クリッカーを鳴らして、その瞬間にあらかじめ要した褒美(犬であればドライフード一粒など)をあげます。
これを何度も繰り返すことで、クリッカー音が褒美(エサ)がもらえると関連付けることができます。
仮にクリッカーを右手、エサを左手にもって犬に行った場合、はじめはエサを持っている左手を犬は気にするでしょう。
徐々に犬が左手よりもクリッカーを持っている右手の方に注意を向けるようになれば、犬はクリッカーの音がエサを貰える事と関連付けられて理解したといえます。このプロセスを「チャージング」といいます。

2 次にエサを目の高さに持っていき、ペットがあなたの目を見れば、クリッカーを鳴らしてエサを与えます。偶然にペットがあなたを見た瞬間であっても、クリッカーを鳴らし、エサを与えます。これを繰り返すことによってペットはアイコンタクトを覚え、クリッカー音の鳴ることが正しい行動をしていると理解するようになります。

3 2まで理解したなら、号令や手や指のジェスチャー等を取り入れます。号令は「見て」というた命令の言葉やペットの名を呼ぶなどで、ジェスチャーとしては人差し指を自分の目の位置に持っていくなどです。
これらの号令やジェスチャーによってペットがアイコンタクトを取るようにトレーニングし、ペットがしたがうことができたらクリッカーを鳴らしてエサを与えます。

4 ペットが完全に号令を理解できれば、号令やジェスチャーに従っても、徐々にクリッカーの頻度を3回に1度や5回に1度といった具合に減らして不規則的にならしていきます。
その代りに優しい声を掛けたり、なでたりすることで褒めてあげます。

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