DIRについて(後編)

以下は個人差があり、何歳で身につくかという時期は示されていません。
一生をかけて徐々に身につくものといえますが、小学生以上とします。

7 小学生    多面的な因果関係と三角的な思考

単純な因果関係の考えから、多面的な因果関係の思考へと発達していきます。例えば感情について複数の理由を探り、感受を比較し、その感情の間による相互作用を理解します。そうすると、物事の原因には複数の可能性があることを理解していきます。

8 小学生    グレーゾーンの理解、さまざまな感情の区別

多面的な考え方をすることで、感情や出来事を様々な程度で理解し、それらの相対的な影響を理解できるようになります。白黒はっきりした考えではなく、グレーゾーンの考え方ができるようになります。妥協することを考え、様々な問題、特に集団内で生じる複数の人間間での問題を解決する方法を身につけます。

9 自己意識、内省と自己規範の確立

複雑な感情的な交流によって、内的な倫理規範と関連付けた考えができるようになり、自己意識が確立していきます。そして、経験を批判的に眺めることができるようになります。推論することを学び、同時に様々なことを参考にしながら物事を考えることができるようになります。現在や過去だけではなく、未来のことを考えられるようになり、同時に二つの観点から物事を考えることができるようになります。

I=Individual-Deference(個人差を考慮に入れた)

個人差の部分は、それぞれの子どもが取り入れて調節、反応して音や触感などの感覚、計画や順序の行動やアイディアを独自の方法で理解するようにします。

・感情情報入力に対する反応  … 感覚過敏の子も多いので、それに配慮した方法で
行います。

・入力された情報の解析と統合 … 子どもは得た情報をどのように処理しているかを
考察します。

・出力にあたる運動の計画と遂行能力…どのような事がどの程度できるかを考慮します。

R=Relationship-Based(相互関係に基づいた)

・決まったことをさせるのではなく、その子との動的な関係の中で実施します。

・感情面で意味のある人間関係に基づきます。感情は発達に強く影響し、言語、認知課題、数概念などは全て感情的に意味のある人間関係の中で学習します。感情は学習の原動力となり、発達には一番身近な養育者との安定した暖かな関係が欠かせませんので、関係は学習の基盤になります。

フロアタイム

「フロアタイム」はDIRの中核技法で、1日20分程度、親や周りの大人が床(フロア)に降りて子どもと同じ目線で関わることです。フロアタイムは心と脳の様々な部分を連携させて、より高いレベルの社会を構築することを可能にする方法を学びます。子どもの自然な興味に従いながら、様々な能力を高めるために行われる特別な技術です。

フロアタイムの目標は以下の二つです。

1 子どものリードに従い、子どもの内側から自然に発生する興味を増やす。

2 子どもが自ら外界と関わりたいと望むようになる。

フロアタイムと称していますが、床の上に限りません。以下のような場所でも工夫によって15分だけは子どものペースに合わせて行動するという試みをしてみましょう。

・スーパーマーケット

その場所でしてはいけないことだけは前もって伝えるようにします。

・ドライブ中の車内

運転はドライバーに任せて、後部座席で子どもとゲームをして過ごすのも良いと思います。例えば、赤い車を見つけたら教えてや、これってなあにゲームなど。

・お風呂に入りながら、ベッドでなど

子どもが生まれ持った資質を最大限に発揮することのできるアプローチと言え、特別な訓練や環境も不要です。子ども一人一人の発達段階と個人差に応じたコミュニケーションや人間関係の可能性を伸ばすアプローチです。

豊富な臨床経験に基づいた代表的な包括プログラムの一つとして注目されています。

TEACCHやDTT等に比べると歴史は浅く科学的根拠(エビデンス)も少ないようです。ただしアメリカ小児科学科医の自閉症ガイドラインとして認められており、その意味ではオーソドックスな技法として認められています。

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする