ローナ・ウィングについて

ローナ・ウィングとは

ローナ・ウィング(1928年~2014年)はイングランド・サセックスの精神科医で英国王立精神医学会のフェローです。

1956年に生まれた娘のスージー・ウィングさんが自閉症と診断されたことから発達障害、特に自閉症スペクトラム障害の研究に携わり、他の自閉症の親とともに1962年に英国自閉症協会(National Autistic Society,NAS)を設立し、NASローナ・ウィング自閉症センターの顧問を務めました。

ウィングは独自に構造化面接のDISCO(Diagnostic Interview for Social and Communication Disorders)をつくりました。DISCOの特徴は診断に必要な項目以外にも非常に多くのことについて聞いていくことで、3~4時間もかかります。

TEACCHを開発したショプラーとの論争は広く知られており、ショプラーはウィングの提唱したアスペルガー症候群や自閉症スペクトラム概念に批判的でした。しかし、ローナ・ウィングは実際の診療の場面で親に勧めていたのはDISCOではなくTEACCHでした。

ウィングは1960年代から1970年代前半に次々と自閉症児の親や教育関係者に向けに分かりやすい自閉症の啓もう書を書いてきました。これらには自閉症が脳の器質障害で起こること、親の不適切な養育によるものではないということを明示しました。

この時期はロンドン学派が脳器質障害説を打ち立てた頃で、ウィングはロンドン学派のの中心的な存在でした。

ウィングの3つ組

1979年、同僚のジュディス・グールドとの共著論文で「子供の社会的相互行為の重度の障害とそれに関係する異常性について:疫学と分類」を発表しました。この論文は自閉症概念の拡大のきっかけになりました。

この論文で対象とした人の特徴を「重度の社会的相互行為の異常性と、話しことばや身振りを含む言語発達の異常性と、主として反復・常同的な活動からなる諸行動を生まれつきあるいは生後数年以内に発症する子ども」としています。これら3つの中で最も重要視されている特徴が「重度の社会的相互行為の障害」で、この障害が「社会性の障害」といわれます。

この論文の根拠となった研究はキャンバーウエル調査といわれます。それはウィングとグールドはロンドン南部のキャンバーウエル地区にある子どもたちを調査しました。

この調査で重要な発見は、自閉症児は対人関係の不器用さ、社会性の欠如、創造力の欠如の3つの特徴があるということです。これは後に、自閉症の「ウィングの3つ組」とも呼ばれています。

もう一つ大事な事として、「積極奇異型」の提唱です。ウィングは対人交流の質を4つに分類し、孤立型、受動型、積極奇異型、適切な交流群としました。当時、自閉症のイメージは孤立型に限定されていましたが、一件社会性に問題がないように見え、他者と積極的にかかわるが、相互的な関係が取れない子ども達にも社会性の障害があること、そのような子ども達にも典型的自閉症と連続した3つ組の障害があることを注意喚起しました。

アスペルガー症候群と自閉症スペクトラム

1981年に「アスペルガー症候群:研究報告」はハンス・アスペルガーの研究成果を広く普及させるきっかけとなった論文で、アスペルガー症候群という用語を初めて使ったものです。この論文は精神医学会に大きな影響を与えました。ウィングはその中で、「筆者が記述した患者は全員が適応に問題があるか二次的精神疾患があるため、精神科の受診を要するほどの重篤な患者であり、 …ここで記述された症例はより重篤な障害のものに偏っているおそれがある」と注意を促しています。

同年、国際障害者年を記念して来日し、東京で特別講演と日本の専門家と座談会が行われました。

また、自閉症スペクトラムは「奇矯さと正常性を統合し、両者の区別をあいまいにするもの」として、その範囲を「自閉症スペクトラムは広汎性発達障害とオーバーラップし、より広いもの」だと述べ、しばしば「自然はクリアーな境界をつくらない、子どもをみるときは、個々の子どもを見なければならない」と言っていました。

著書に「自閉症児との接し方」(1973年)、「自閉症スペクトル 親と専門家たちのためのガイドブック」(1998年) 、「あなたがあなたであるために―自分らしく生きるためのアスペルガー症候群ガイド」(2005年)などがあります。

2014年6月6日に亡くなられました。85歳でした。

参考

Wikipedia

よこはま発達クリニック

SYNODOS

立教大学応用社会学研究 自閉症の定義における「社会」概念の変遷について2011年

わたしのお薦め本コーナー 自閉症関連書籍

ぷらう51号 2014年秋号

軽度発達障害フォーラム

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