学校コンサルテーションの実践例

中学校の特別支援教育コーディネーターに対して、特別支援学校の巡回相談を活用した事例

(1)クライアント

通常の学級に在籍する中学校1年生男子

(2)コンサルティ

特別支援教育コーディネーター

対象児の担任(特別支援教育に関する研修は受けたことがありません)

(3)コンサルタント

県立の特別支援学校の特別支援教育コーディネーター、要請を受け、巡回相談による支援を実施しました(前回記事 図2参照)

(4)学校及び校内委員会の状況

生徒数370人、11学級(特別支援学級1)、教員数23人の学校規模。

校内委員会は、年3回定期的に実施され、校長、教頭、教務主任、特別支援教育コーディネーター、養護教諭、生徒指導主任、学年主任、対象生徒の担任で構成されています。

(5)担任の主訴

授業中に突然質問したり、授業に関係のない話を始めたりする。また、突然教室を出ていくことがあります。校内委員会での特別支援コーディネーターの提案により、2学期からはチーム・ティーチングでの指導を一部実施したところ、教室から出ていくことは少なくなりました。

(6)情報の収集

授業参観や日頃の学習状況の様子、テストやノートの確認、障害の状態などの必要な情報を収集しました。また、保護者の了解を得て特別支援教育コーディネーターが実施したWISC⁻Ⅲ知能検査によるアセスメントを行いました。

(7)問題の見立てと提案

授業参観を通して、図のように行動に関する機能的アセスメントを実施し、気になる行動の背景や行動により得られた結果等について分析しました。そして、望ましい行動を獲得するための事前の環境の工夫や望ましい結果について検討しました。

クライアントは注意集中に課題があり、、チャイムの音に気付いていなかったり、いつ質問したらいいかという基本的なルールを理解していなかったりする様子が見られました。

また、気になる行動を起こした際に、担任に注目してもらえたり、質問に答えてもらえたりすることで気になる行動がさらに強くなりました。

そこで、望ましい行動と事前の環境の工夫、望ましい結果を検討し、コンサルティに提案した。同時に、事前・事後の環境の工夫を行っても望ましい行動が起こらなかった時の対応についても提案しました。

(8)コンサルティによる自己決定

コンサルタントの提案を受け、コンサルティは担任と一緒に事前の環境を工夫し、実践を行った。コンサルティとコンサルタントは、定期的に連絡を取りながら担任と連携した。その結果、少しずつ望ましい行動が増えてきた。

(9)校内委員会を活用した指導・支援の共有化

中学校においては、複数の教師が授業を担当するため、指導・支援については、情報を共有化することが必要となった。そこで、コンサルティは特別支援教育コーディネーターとして、校内委員会を開催し、クライアントに関わる全ての教師が同じような指導・支援を行えるように提案した(図4)。その際の支援ツールとして、「個別の指導計画」を活用しました。

こうな委員会で共通理解を行い、「個別の指導計画」を活用した取り組みを行ったことで、担任が一人で問題を抱え込むことなく一貫した指導・支援を行う事ができました。

クライエントも、一貫した指導・支援により、見通しを持って落ち着いた行動をすることがより一層増えてきました。

さらに授業前には黙想することが、学校共通のルールとなってクライアントだけでなく、全ての生徒にとって有効な指導・支援となりました。

以上が特別支援教育における「学校コンサルテーション」の実践例について述べてきました。「学校コンサルテーション」を取り入れることによって、コンサルティが解決に向けての方策を自己決定していく過程を大切にすることが出来ます。そして、より適切な対応を選択し、意欲的に解決策に取り組むことが可能になると考えられます。

今後も、児童生徒一人一人の教育的ニーズに応えるために、「学校コンサルテーション」を活用し、多くの教師が互いに専門家として協働し、より良い支援体制を作り上げていくことが望まれます。

参考

鹿児島県総合教育センター特別支援教育第167号

高知県教育センターホームページ 特別支援教育における学校コンサルテーションの在り方に関する研究

特別支援教育士資格認定協会ホームページ

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする