大人の発達障害について 星野先生の報告より1

大人の発達障害

社会人になると学生時代とは比べ物にならないほど高度で複雑な社会性やコミュニケーション能力を求められます。時には嫌な上司や苦手な同量、取引先ともうまく付き合っていかなければなりません。これは発達障害者にとって大変な難題であるため、多くの場合い、社会に出ると仕事や人間関係で悩みを抱えたり不適応状態となります。

ADHDの基本的症状と随伴症状

基本的症状

1 多動(運動過多)…いつも落ち着きがなくソワソワしている

2 不注意(注意散漫)…気が散りやすく、集中できない

3 衝動性…後先考えずに思いつきで行動する

4 仕事の先延ばし傾向・業務不振…期限が守れず、仕事がたまる

5 感情の不安定性…気分が変動しやすい

6 低いストレス耐性…心配と不安が感情の暴発を招く

7 対人スキル・社会性の未熟…空気が読めず、人の話が聞けない

8 低い自己評価と自尊心…マイナス思考とつのる劣等感

9 新規追求傾向と独創性…飽きっぽく一つのことが長続きしない

随伴症状

1 整理整頓ができず、忘れものが多い…仕事は出来ても家事が不得手

2 計画性がなく、管理が不得手…低すぎる日常生活のスキル

3 事故傾向…交通事故、産業事故など

4 夜間の低い睡眠効率と昼間の居眠り

5 習癖…男性に多いチック症、女性に多い抜毛癖

6 依存症や嗜癖(しへき)行動に走る…アルコール、タバコ、薬物、ギャンブル、浪費、セッ
クスなど

7 のめり込みとマニアック傾向…パソコン、ゲーム、その他

発達障害者に向かない職業

1 高度な協調性や熟練したスキルが要求される営業関係や接客関係

2 優れた管理能力が要求される経理、人事、総務関係

3 ミスが大事故に直結するような交通、運輸関係(運転手、パイロット、航空管制官など)

4 その他、複数の要求を同時にこなす必要がある仕事、不測の事態への臨機応変な対応が求
められる仕事

発達障害者に向いている職業

1 専門的、マニアックな知識やひらめきが活かされる研究者、学者など

向いているかどうかは微妙であるが、中学・高校や予備校・塾などの理数系、美術・芸
術・音楽系、歴史、社会などの教師にも発達障害者は多い

2 強い刺激と変化に満ちた職業として、警察官、消防士、救急救命士、新聞・雑誌などの記
者、マスコミ関係、作家、ジャーナリスト、カメラマン、各種ディレクター、プロデュー
サーなど

3 視覚的な才能に長けている職業として、カメラマン、イラストレーター、スタイリスト、
漫画家、画家、建築業一般(建築、設計技師、大工など)、コンピュータ・プログラマー
(CG)アニメーター、広告関係全般、ファッション・グラフィックなどの各種デザイナー
など

4 人間よりむしろ機械類や物を相手にした職業として、調理師、ピアノなどの調律し、自動
車整備士、技工士、電気技師、図書館司書、校正者など

発達障害の人は、一般社会の中では協調性やチームプレーを発揮しにくく、適応しにくい人たちです。適職につけた人は良いとしても、ほとんどの場合、あまり向いていない職業に就いています。

その理由の一つは本人の自己認知(自分の能力を客観的にみる認知能力)が未熟なことであり、もう一つは親の否認・認識不足にあります。適職に就くためには、遅くとも中学・高校までに親が発達障害に気づいてあげて、本人の向いている技能や資格を取らせるための適切な専門学校や短大・大学に入れなければなりません。しかし多くの場合、これが十分になされていません。

参考

内閣府 ひきこもり支援者読本

東京人権啓発企業連絡会

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