学習障害(LD)は、読み書き能力や計算力など算数機能に関する特異的な発達障害のひとつです。的確な診断・検査が必要で、ひとりひとりの能力に応じた対応策が求められます。AD/HD・高機能自閉症などを伴う場合には、それらを考慮した学習支援も必要で、家庭・学校・医療関係者の連携が欠かせません。
学習障害(LD)には教育的な立場でのLD(Learning Disabilities)と医学的な立場でのLD(Learning Disorders)の2つの考え方があります。最近は健常児とは異なった学習アプローチをとるという点から、Learning Differences(学びかたの違い)と呼ぶ人も出てきています。教育の立場では聞いたり話したりする力など学習面での広い能力の障害を含み、医学的LDは「読み書きの特異的な障害」「計算能力など算数の特異的な発達障害」を指すことが多いようです。一時期、言語性LD・非言語性LDという言い方もされていましたが、現在は用いられません。
発達性ディスレクシア
小児期に生じる特異的な読み書き障害は発達性ディスレクシアとして知られ、知的な遅れや視聴覚障害がなく充分な教育歴と本人の努力があるにもかかわらず、知的能力から期待される読字能力を獲得することに困難がある状態と定義されます。なお読み能力だけでなく書字能力も通常劣っています。
発達性ディスレクシアの発生頻度はアルファベット語圏で3~12%と報告されています。日本では2002年に小中学校教師を対象とした大がかりな調査が行われました。それによると学習面単独で著しい困難を示す児童生徒は3.3%存在することが示されています。しかし日本語は、ひらがな・カタカナ・漢字の3つの文字表記があり、文字別も含めた発生率の詳細なデータはまだ出ておりません。今後の研究成果が期待されます。ディスレクシアの診断は、標準化された読字・書字検査に基づいてなされることになっていますが、確定されたものはまだ存在しないという現状にあります。
診断の流れ
ディスレクシアの診断の流れを以下に述べます。
- 最初に知的機能評価を行います。このためにはWechsler系など標準化された知能検査が重要です。認知機能のかたよりをみるために、他の心理検査たとえばK-ABC・Rey複雑図形模写などを行う場合もあります。
- 学習到達度を知るために標準学力検査(とくに国語や算数)を行い、該当学年よりマイナス2学年以上の乖離があるか否かを明らかにします。
- ついで読み書き機能に関して「仮名のみの問題なのか」「漢字の問題なのか」「単語あるいは文章の音読書字に問題があるのか」を明らかにします。
読字や書字の特徴
発達性ディスレクシアの読字や書字の特徴には、以下のものがあります。
- 文字を一つ一つ拾って読むという逐次読みをする
- 単語あるいは文節の途中で区切って読む
- 読んでいるところを確認するように指で押さえながら読む(これらは音読の遅延、文の意味理解不良につながる)
- 文字間や単語間が広い場合は読めるが、狭いと読み誤りが増えて行を取り違える
- 音読不能な文字を読み飛ばす
- 文末などを適当に変えて読んでしまう適当読み
- 音読みしかできない、あるいは訓読みしかできない
- 拗音「ょ」促音「っ」など、特殊音節の書き間違えや抜かし
- 助詞「は」を「わ」と書くなどの同じ音の書字誤り
- 形態的に類似した文字「め・ぬ」等の書字誤りを示す
どこに相談するか
学習障害が疑われるときには、中枢神経系の器質的な疾患の有無を明らかにするために、医学的な評価も重要となります。
これまでの発達歴・既往歴などを確認し、必要な場合は頭部画像検査などが行われます。また心理学的検査によって視覚認知機能・視空間認知機能・音韻認識機能を知ることも重要です。発達性ディスレクシアでは音韻操作、呼称の速さの能力をみることが支援につながるため、専門家(小児神経科医師など)と相談することが必要になります。注意欠陥/多動性障害(AD/HD)、高機能広汎性発達障害がある場合は、学業不振症状がそれらに伴うものかどうか見極めが必要となります。家庭と学校そして医療関係者の連携がとりわけ必要な疾患です。
厚生労働省「e-ヘルスネット」より