JASPERのアセスメントSPACE
SPACE(Short Play And communication Evaluation:短い遊びとコミュニケーションの評定)といいます。カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)のコニー・カザリー教授の研究室のステファニー・Y・シャイア(Stephanie ・Y・Shire)らによって2016年に開発されました。
ステファニー・シャイアはカナダ・カルガリー出身の女性研究者で、アルバータ大学で教育心理学の修士号を取得後、UCLAで人間開発と心理学の博士号を所得しました。
UCLAで精神医学の博士号を取得後に研究員となって自閉症スペクトラム障害(ASD)の子どもたちへの介入に焦点を当て、発達障がいのある子どもたちを支援している介護者や学校職員を対象にした地域密着型の研究と訓練を行っています。
また、低所得国などの発達障害児の家族のための国際プログラムにも参加しています。現在はオレゴン大学教育学部の助教授です。
子どもの遊びと要求と共同注意のスキルをチェックします。時間は15分から20分程度で終了する簡単なアセスメント方法でお子さんにとっては遊んでいる感じです。
SPACEの目的は、決められたおもちゃを使って、子どもが自発的に行う事ができる遊びと共同注意、および共同注意と区別すべきものとして要求行動を評定することです。
実施配置
子ども用の椅子に子どもが座り、机を挟んで対面し実施者が椅子に座ります。
実施者の脇には使用するおもちゃを並べるテーブルがあり、壁には指差しで用いるイラストが子どもの左右と後ろに貼ってあります。
手順
① 子どもにとって、見えるが手が届かない場所におもちゃを並べ、「遊ぼう」と子どもに
声をかけます。
② 子どもの要求に合わせておもちゃを机に置きます。(要求がなければ型はめパズルなど一つ
選んで机に置きます)
③ 遊び方や共同注意の様子を見ます。
④ 机の上のおもちゃである程度遊べたら他のおもちゃへの移行を呼びかけます。使ったおも
ちゃは片づけます。
④の後は、②→④を繰り返し、全てのおもちゃを使用したら終了となります。
観察内容
おもちゃセット1:型はめパズル、トラック、箱に入った積木
主に、単純遊び・組み合わせ遊び・共同注意の様子を観察します。
おもちゃセット2:
ドールハウスセット(家、人形2、動物2.テーブル1、イス2、ベッド2、ベッド用布団セット1、ティッシュ1)
クッキーセット(マジックテープ使用のクッキー、フォーク2、スプーン2、ナイフ1、皿2)
主に、前象徴遊び・象徴遊び・共同注意の様子を観察します。
ボール :ボールを子どもに渡します。
主に共同注意の様子を観察します。
シャボン玉 :シャボン玉を目の前で吹いてみせ、容器のふたを閉めて子どもに渡しま
す。
主に、共同注意、要求行動の様子を観察します。
ゼンマイおもちゃ:子どもの手の届かないところでゼンマイおもちゃを動かします。
主に、共同注意、要求行動の様子を観察します。
指差し用イラスト3枚:子どもの左右と後ろに貼ったイラストを驚いた様子で指差します。
※ 順番箱の通りでなくても良く、子どもの要求にあわせて提示します。
把握するポイント
共同注意
・大人の指差しに対して適切に反応することができるかどうか。
・共有のために大人と対照物(おもちゃ)を交互に見る(三角注視)かどうか。
・共有のために大人に対象物(おもちゃ)を指し示すかどうか。
・共有のために大人に対象物(おもちゃ)を見せるかどうか。
・共有のために大人に対象物(おもちゃ)を渡すかどうか。
要求行動
・自分が欲しい物を大人に要求するために手を伸ばすかどうか。
・自分が欲しい物を大人に要求するために指差しをするかどうか。
・自分がしてほしいことを大人に要求するために対象物(おもちゃ)を渡すかどうか。
遊びの段階
・単純遊び :おもちゃを単体で動かす、開閉するなどの単純遊びをするかどうか。
・組み合わせ遊び:2つ以上のおもちゃを組み合わせて使う遊びをするかどうか。
・前象徴遊び:人形を動かす、ふり遊びをするなどの前象徴的な遊びをするかどうか。
・象徴遊び :人形を生きているかのように動かす、ごっこ遊びをするなどの象徴的な遊びを
するかどうか。
以上の観点で子どもが自発的にできる共同注意・要求・遊びの行動を把握し、これから伸ばしていきたい行動(目標)を設定します。それを踏まえてJASPERの支援介入を行います。