フリー・オペラント技法について

フリー・オペラント技法とは

フリー・オペラント技法とは、自閉症児への個別指導の技法で、「先行刺激、反応、後続刺激の3項のうち、先行刺激による制御を最小にして、後続刺激による制御を最大にするオペラント技法」と定義されています。
ですからフリー・オペラント技法では、指導者が「~しなさい」という誘いかけや指示的言葉かけ、注意叱責をなくした場面を設定し、子どもが自由に動ける状況の中で、子どもの自発した適切な行動に対して強化をします。
子どもの行動を一切拘束せずに、日常場面で自発される行動を強化することで行動の変容を図ります。
ある行動を強要するのではなく、その主体的な行動を持つことと、自閉症児の内的な世界に目を向けて、その行動を積極的に認めて支持し、見守り、不安や楽しさを言葉と表情で伝え返して共有しながら、彼らが安心して自身の世界で過ごせる環境を設定することを常に心がける必要があります。
また、フリー・オペラント技法は、ヒトの応答を強化刺激として機能させようとする点が特徴です。
多くの自閉症児には身体接触が回避反応や逃避反応を引き起こす刺激になる傾向が見られますが、軽い刺激を徐々に与えていくことで、くすぐり、タッチング、抱っこなどの身体接触が有効な強化刺激となり得ます。

フリー・オペラント技法の開発者

日本の佐久間徹先生と久野能弘先生によって、確立された療法です。
佐久間徹先生(1935~)は、北海道生まれで関西学院大学文学部心理学科卒。
行動分析学や障害児療育が専門で、梅花女子大学や関西福祉科学大学の教授を歴任し、一般社団法人子供の城協会理事をされている方です。
久野能弘先生(1937~2017)は、京都府生まれで関西学院大学文学部心理学科卒。
兵庫医科大学助教授、金澤大学文学部教授を経て、中京大学心理学部教授・同大学院心理学研究科教授でした。
大学を定年退職後は「たけのこの家」で行動療法による障害児療育を行いました。

フリー・オペラント技法の効果

フリー・オペラント技法は、社会性や自然な言葉の獲得に効果があります。
そのため適切な行動が自発するような環境設定が大切になります。
この方法では指導することによって、指導場面以外において適切な行動が自発しやすくなること、指導場面や指導者が嫌いになりにくいなどのメリットがあります。

フリー・オペラント技法の実際

自発的な行動を重視しており、人と関わることが楽しいと思う気持ちを育てるために、子どもの行動や発声を親が真似する方法をとります。
この方法は言葉の獲得に有効であるとする研究結果も存在します。

実際の指導場面では、1セッション内で単一の行動のみを強化していくのではなく、アイコンタクト、接近行動、クレーン行動、要求発声というような多様で連鎖的な子どもの関わりの自発に対して、指導者が応答的に強化していきます。
したがって、標的行動や指導者の対応は常に変化していくことになります。

例えば、シーツブランコや抱っこしてぐるぐるしてもらうためのブロック、円盤などの指導者に協力してもらわなければならないような遊び道具が置いてあります。
そして、ひき出したい行動である指導者とのアイコンタクトが生じた時に遊び道具で遊ぶことによって強化をします。
また、子どもをおんぶしている時に子どもが「あっあ」と声を出したら、ジャンプします。

しかし、子どもの自由な行動を全く制限をかけず、いたずらがエスカレートした結果、家の中で散らかしや汚し放題、また大声や大きな物音などで近所迷惑という方もいるようです。

参考図書

広汎性発達障害児への応用行動分析(フリーオペラント法)
著者:佐久間徹
二瓶社・2013/7/1

発達障害児の言語獲得 応用行動分析的支援(フリーオペラント法)
著者:佐久間徹・石原幸子
二瓶社・2015/4/28

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする