アクセプタンス&コミットメントセラピー(ACT)3 基礎理論とACTにおける精神病理

ACTの基礎理論

ACTの基礎理論は関係フレーム理論です。
これは機能的文脈主義に基づいた人間の言語と認知に関わる理論で、行動科学という観点からは、応用行動分析から発展してきた言語と認知の関係づけ学習理論です。
ある刺激事象と別の刺激事象を恣意的に、任意に結び付ける事で学習が成立するとみます。
関係フレーム理論では人間は刺激と刺激の関係性を結合させ、さらに派生させていくことが出来るとされ、そこには3つの特性があるとしています。
それが「相互的内包」、「複合的内包」、「刺激機能の変換」です。
外国語でリンゴはappleで、漢字でリンゴは「林檎」と書きます。赤くて甘いと認識されていた子どもは青くすっぱいリンゴを食べれば、リンゴがすべて赤くて甘いとは限らないと学習します。
簡単にいうと3つの特性はこのようなものです。
関係フレーム理論は、言語、認知、行動、感情の間の関係性が、直接的な体験によって学習されたり、直接的な体験によって学習されたり、直接的な体験がなくとも派生したりするものであると前提としている理論です。

ACTにおける精神病理の構成要素

ACTでは精神病理を心理的非柔軟性(psychological inflexibility)といい、六角形の角に6つの核となる構成要素を配置し、相互に作用している関係と線で結ばれていると考えます。

1 認知的融合(cognitive function)

思考がくっついて分離できない、あるいは思考に巻き込まれている状態です。
「私はダメだ」「もうよくならない」「私はいつもこうだ」などの思考に融合(フュージョン)していて、否定的なことを考え続けます。
また、過去のつらい思考に融合(フュージョン)していて、過去の出来事が今起こっていると錯覚することがあります(=フラッシュバック)。

2 体験の回避(experiential avoidance)

人は望まない、欲しない”私的体験”から逃げよう、回避しよう、除去しよう、または抑制しようとするもので、そのことが問題となり、問題行動を持続させています。
この回避は人の精神病理を考える場合には重要な指摘になります。
不安や怒り、恐怖などを回避しようとして、そのような不快な感情が生じるであろう場所に行くことを避けるようになります。
そして人との交流を避けることで、孤独や寂しさという不快を感じ、またほかの嫌な感情から逃げる行為(アルコール、薬物、長い睡眠、ギャンブルなど)をとってしまいます。

3 概念化された自己への執着
(attachment to the conceptualized self)

勝手に作り上げた自己にとらわれていることです。通常、自分というものを概念で捉えています。名前、性別、年齢、職業、生い立ちなどで規定した「自分」です。
「自分はこういう人間だ」という自己イメージです。
否定的な自己イメージを持っている人は、「私は能力がない」「私は敗者だ」「私は価値がない」「私はのろまだ」など、そして、その自己イメージに囚われています。

4 概念化された過去と未来への恐れの支配
(dominance of the conceptualized past and feared future)

いつまでも過去にこだわり、未来を心配することです。過去の嫌な出来事を繰り返し反すうしたり、未来のことを空想し、不安や心配を膨らませます。
そのことによって、今の生活に集中できず、今やるべきことができなくなってしまいます。

5 価値の明確化の欠如
(lack of clarification)

価値ある生き方の欠如に問題があることです。
思考や感情に翻弄されていると、自分の価値(観)を忘れて、価値を達成する価値に沿った行動ができなくなり、活力のない空虚なつまらない人生になってしまいます。

6 非行為・衝動性・回避
(inction,implsivity and avoidance)

機能しない行動を取ることに問題があるという事です。
衝動的、反射的な行動で、価値に基づいた行動ではなく、つらい思考、感情を回避する行動、自己破滅的な行動によって、苦しむことになります。

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