スクリプトとスクリプトフェイディング手続きについて

スクリプト(script)と
スクリプトフェイディング手続き(script fading procedures)

スクリプトは「台本」のことです。スクリプトの定義は「目標に向かう一連の行動を手順を記述したもの」です。スクリプトとスクリプトフェイディングの手続きはパトリシア・J・クランツ(Patricia.J.Krantz)とリーン・E・マクラナハン (Lynn.E.McClannahan)が開発しました。

スクリプトフェイディングはスクリプト(台本)を読ませて、段階的にスクリプトなしでできるようにする方法です。スクリプトはカードであったり、音声を聞くことであったりします。

この指導法の特徴は以下の通りです。
1 会話やコミュニケーション行動を促すプロンプトをスクリプトの提示に限定しているこ
と。
2 プロンプトへの依存を抑えるため、系統的にプロンプトをフェイディングする手続きを決
めていること。
3 スクリプトの提示を本人に可能な限りゆだねること。例えば、プロンプトを活動スケ
ジュールに挿入して、対象者が活動スケジュールを参照して、発話する。

手続き上必要となるものには以下のものがあります。
1 文章カードによるスクリプト、字が読めない場合はボイスレコーダーなどの録音再生機能
のある装置
2 スクリプトフェイディング手続き
3 段階的ガイダンスによるプロンプト
4 強化手続き

手順としては標的とする行動を決定して、それに合わせた状況を作ります。
事前指導としてスクリプトを読ませることで練習をする場合もあります。
スクリプトフェイディングでは、段階的にスクリプトを減らしていって、最終的にはスクリプトがない状態にして、標的となる行動ができるようにします。
一般的には文章や単語の後ろから減らしていきます。
例えば「おいしい」をカードで提示するのであれば、→「おい」→「お」→(白紙のカード)→なし といった順にスクリプトをフェイディングします。

事例1

自閉症の小学1年生男子

目的
母親に話しかけることを増やす。

方法
対象の子どもがミニカーを使って地図の上で走らせ、3つの場所をチェックポイントにしてその近くにはあらかじめ1つずつスクリプトが録音されたレコーダーを設置します。
そのチェックポイントにミニカーが来たらレコーダーを再生して、それを子どもは模倣します。模倣で来たらあとは自由に遊ばせます。
スクリプトは「じゃぽーん ママ、助けて」「お待たせしました、乗ってください」「ママ、勝負しよう」の3つです。フェイディングは4段階に分けて、最終的にはレコーダー自体撤去します。

結果
これにより、身につきやすいスクリプトほど関連する遊びや母親に話しかけが増えていきました。

事例2

自閉症の中学2年生男子

目的
自分の思いをもっと言葉で伝えられるようになり、実生活で役に立つ適切な関わり方を身につけること。

方法
ジェンガゲームを週1回2時間します。ジェンガゲームは、同じ直方体のブロックを組んで出来ているタワーから崩さないように片手でブロックを引き抜いて、最上段に積み上げるのを交替で行うゲームです。
そのゲームの中で相手の間違いを指摘して自分の立場を主張する行動と、相手の良いところに気づき相手に伝える行動の2つを標的行動とします。
状況としてはルールと異なる行動や順番を間違えた人に対して「違うよ。」「次は〇〇さんの番だよ。」「次は僕の番だよ。」、参加者が上手にできた時には「頑張って。」「慎重に。」「すごいね。」「上手だね。」、参加者が失敗した時には「どんまい。」「惜しかったね」「次、頑張ろう。」と言うのを標的行動にしてゲーム中は標的行動の書かれたスクリプトを置いておきます。
事前指導として、ジェンガゲームのルールや進行方法を確認します。また、標的行動の書かれたスクリプトを「○○の時には、どんな言葉を言ったらいいかな?」と質問して、スクリプトを見ながら答えます。
うまく言えない場合は、正しいモデルを示して後に続いて模倣します。
ゲーム中はスクリプトを見ながら話すことができますが、5秒たっても言えなければ後ろから指示棒で、スクリプトを指示して発話を促します。
慣れたらスクリプトの後ろの部分を付せんで隠し、段階的にスクリプトをなくしていきます。
標的行動がスクリプトを使わずに出来るようになったら、別のゲームでスクリプトを使わずに、ゲーム中に標的行動が現れるかどうかを見ていきます。

結果
家庭では家族に標的行動と同じニュアンスの言葉をかけています。学校では友達に「がんばって!」と声をかけたり、掃除のときには「ぼくがやるよ。」など友達を気づかった言葉をかけることが見られるようになりました。家庭でも学校でも、人への働いかけが多くなりました。

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする