嫌子出現と消去による弱化と強化について

嫌子出現による弱化

行動をした後に出現すると、もうその行動をしようと思わなくなるようなものです。

例 会議中に発言したとき、一瞬で上司に却下されたら発現しにくくなる。この場合、「一瞬
で却下されること」が嫌子になります。つまり、却下されるという嫌子の出現の結果、発
言という行動が弱化しています。

例 会議中にうっかり居眠りをして上司に起こられたら、もう会議中は2度と寝ないようにす
る。
この場合、寝るという行動は、上司の怒りという嫌子によって弱化されるといえます。

例 A君は落ち着きがなく、食事の時にじっと座っていられずすぐ立ち上がってしまいます。
そこでA君の母は、まず椅子に座ってから1分間じっとしていられるようにするため、1分
以内に立ちあがったら、そのたびに軽く腕をつねるようにしました。それを繰り返してい
るうちに、だんだん1分間じっと座っていられるようになりました。

嫌子による弱化のデメリット

1 嫌子は慣れてしまう
上司にガミガミ起こられた時に、毎回真面目に反省しますか?
最初は真面目に聞いて反省しても、何度も起こられているうちに慣れてきて”また怒ってい
る”と思いながら、「すみませんでした」と言ってさっさと終わらせようとしませんか?
つまり、嫌子は慣れてしまうものです。そして効果が薄れてしまいます。これに上司が気
づくと、嫌子の威力を強めようと、さらに厳しく起こるようになります。
これがエスカレートすると、ハラスメントなどにつながる恐れがあり、互いに良い結果を
生みません。

2 嫌子を回避するようになる。触らぬ神に祟りなし、というように、人は危険(嫌子)から距
離を置こうとします。また、嫌子を与えられている人が、この危険をもたらす人物を反撃
する可能性もあります。

ストレス反応の一つに闘争・逃走反応といって、攻撃や恐怖などの脅威にさらされた時、人は不安が高鳴ったり攻撃的になったりします。
つまり、嫌子により弱化しようとする人に対してこうしたメカニズムが作動すると、人は嫌子を与える人(=脅威)を徹底的に回避したり、逆に攻撃したりする可能性があります。

闘争・闘争反応(Fight or flight response)は、闘争か逃走か反応、戦うか逃げるか反応ともいいます。

1929年にアメリカの生理学者、ウォルター・B・キャノン(1871~1945)によって初めて
提唱された動物の恐怖への反応です。
闘争・逃走反応とは「動物が外敵に遭遇する時には、自らの生命を守るために原始的な自
己防衛本能で、身を守るために、敵が弱そうであれば逃走し、敵が強そうであれば逃走す
る」というものです。
動物の怒りは、闘争として現れ、恐れは逃避として現れます。これらはどちらも、立毛筋
収縮、瞳孔の散大、血圧上昇、頻脈、発刊といったような交感神経が優位な反応を伴いま
す。恐れと怒りは混合して生じることもあることが示すように、動物は周囲からの威嚇に
対して個体保全と身体防御に関連して生じる情動と言えます。キャノンは、ここで医学分
野で初めて「ストレス」という言葉を用いました。

3 学習も阻害されるので、新しいことをしない。
いつも上司に怒られていると、部下は上司に怒られたことだけでなく、上司を怒らせない
ような行動し課しなくなります。
変に気を利かせたり新しい取り組みを試みたりして、上司に怒られたくないですからね。
結果的に、嫌子による弱化は、問題行動だけではなく、新たな行動も減らしてしまいま
す。新しいこと挑戦したり創造したりする機会が減ってしまうため、組織全体の損失にも
つながりかねません。

4 問題行動を減らせても、すべき行動を示せない。
嫌子の出現は、その行動が良くない行動だと伝えますが、適切な行動は教えてくれませ
ん。また、新しい行動もしないので、適切な行動を見出せません。

例 デートで彼女に「何食べたい?」と聞いたら、彼女は何でもいいと答えたのにどんな
お店のディナーを提案しても不満げなこと。
このような場合、彼女は嫌子(=不満げな態度)で不適切な行動を弱化しても効果があ
りません。

不適切な行動を弱化するのと合わせて、相手ができていない適切な行動を教えた方が、自
然と不適切な行動を減らすことが効果的です。

5 一時的な効果しかなく。長期的な解決に至らない
これまで見てきたとおり、嫌子による弱化は、慣れたり回避したりする

嫌子消去による強化

行動の直後に嫌子が消失すると行動は強化されます。例えば、雨が降って来た時、傘をさす行動は濡れるという嫌子を消失させるため強化されます。悩みがある人が、友人に電話をすることで、少しでも不安が解消したら、その友人に電話をする行動は増大していくでしょう。これを「嫌子消失による強化」といいます。

例 ガミガミと怒る(嫌子あり)上司に、「申し訳ありませんでした」と謝罪する(行動)と、お
説教は収まります(嫌子の消去)。
そうすると、今度から上司がお説教を始めたら「申し訳ありませんでした」と謝るように
なります(行動の強化)。
つまり、怒るという嫌子の消去により、謝罪という行動が強化されています。

例 いじめを受けたので教室を出たら、いじめを受けなかったので、いじめから逃れるために
教室を出ていくようになった。
教室を出るという行動の直前にいじめという出来事が起きているわけですから、行動の直
後にいじめという出来事が消えているわけです。
いじめという出来事は本人にとって都合の悪い出来事であり、嫌子になります。いじめか
ら逃れるという嫌子消失のために教室を出るという行動が強化されています。

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