消去と消去手続きについて

消去(extinction)

環境からの応答がなく行動が減ることを「消去」といいます。計画的に、また継続的に行動を無視することで、将来的にその行動の頻度を下げることを意味します。他者の注目を引くための不適切行動の対処法として特に有効です。

例 A君はうちに来るたびに、話しかけられて困っていたので、A君が来ても無視をするように
した。

消去手続きについて

内制止(internal inhibition)

一般的な消去手続きで、反応を生じさせまいとする生体の積極的な抑制作用のことです。

例 メトロノームとエサで条件反射を形成した後に、メトロノームのみを与え、エサを与えな
いと唾液が出なくなった。

外制止(external inhibition)

強い音や刺激として与えることなど、外的な刺激で条件反応を消去する手続き

例 ランプの光で条件反射を形成しておいた犬に強い音を聞かせると、条件反射が弱まりまた
は消失する。

脱制止(disinhibition)

消去訓練中に条件刺激とは無関係な刺激を提示すると、一時的に条件反応の強度が回復すること

例 メトロノームとエサで条件反射を形成した後、消去の手続きを実行している最中に強い音
を聞かせると、その瞬間、唾液の分泌量が増加する。

消去抵抗(resistance to extinction)

条件づけの後、強化をやめてしまうと反応は次第に生じなくなり消去しますが、あらかじめ部分強化で条件づけすると、強化をやめても反応はなかなか消去せず持続することがわかっています。この持続性を消去抵抗と呼びます。

消去バースト(extinction burst)

消去抵抗で、消去の対象の不適切行動が一時的に消去の手続きを採用する前の段階より悪化することです。消去に対する行動の悪化はあくまでも一時的で、消去バーストを経たのちその行動は鎮静化します。

例 A君は話しかけても無視されたので、必死になってこれまで以上に話しかけた。

例 テレビをつけようとリモコンのスイッチを押したがテレビがつかなかったので、いつもよ
り強くボタンを押したり、リモコンを叩いたり電池を入れ直したりした。

強化されている行動が消去された場合、それと似たような状況で以前に強化されていた行動が再び現れる現象を「反応復活(resurgence)」といいます。

自発的回復(spontaneous recovery)

消去にはこのような行動の変化が見られますが、強化がなければ、行動はやがて減少していきます。ただし、しばらくするとまたその自動販売機でジュースを買おうとしてしまうことがあります。

このように自発的回復とは、いったん消去されてほとんど生じなくなった行動が一時的にまた起こるようになることをいいます。

例 D君は授業を始まる前に授業を妨害するような行為をして、なかなか授業を始めることが
できませんでした。D君を静かにさせるために、担任の先生はいつもD君を追いかけ回して
注意を促しています。 → 好子出現による強化

ある時、担任の先生は追いかけ回されることがD君にとって楽しいと気づいて、追いかけ
回すことをやめました。→ 消去手続き

追いかけ回すのをやめた直後にD君は一時的に妨害行為が激しくなりました。
→ 消去バースト

そのうちD君は徐々に妨害行為をしなくなりました。
しかし、それでも時々、D君は妨害行為をする事があります。     → 自発的回復

消去バーストと消去に誘発された攻撃行動

消去バーストは、消去手続きを開始した直後に一時的に行動の生起頻度が急激に増えることを言います。

これまで強化されていた行動が消去されると、それに伴って色々な行動の変化が見られます。例えば、自動販売機でボタンを押すとジュースが出てきます。ボタンを押すという行動がジュースという好子で強化されています。もし、ボタンをおしてもジュースが出なかったら、ボタンを押さなくなる前に何度もボタンをおしてみるでしょう。このボタンを押すという行動が頻発することを「消去バースト」といいます。

それまで強化されていた行動が爆発的に行われ、それでもジュースが出なかったら、今度は自動販売機を蹴ったり、叩いたりする行動がでてくるかもしれません。これを「消去に誘発された攻撃行動」といいます。

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