関係フレーム理論(Relational Frame Theory:RFT)
関係フレーム理論は1990年代に入って、登場した新しい考え方です。日本では、2010年以降に入門書や翻訳書が刊行されてきました。関係フレーム理論では、人間の言語や認知に対する行動分析学的な説明がされています。
関係フレーム理論によって、スキナーの言語行動理論を補完され、人間の「生成的」、「創造的」な行動に対する研究が発展しました。これには、ルール支配行動の制御変数に対する精緻な分析も含まれ、ルール支配行動に関連するセルフ・コントロールに対する新たな理論的展開が行われています。
関係フレームとは
「フレーム」というのは、フレーム(frame)と呼ばれる特殊な反応クラスのことです。例えれば「同じ」、「~より大きい」といったラベルのついた箱あるいは額縁(フレーム)の中に、まず元の写真が入っており、そこへ新たに別の写真を入れるというような行動を意味しています。基本的なフレームとして「反射」、「比較」、「時間」、「因果」、「視点確立」などが挙げられます。
・「同じ」という箱に10円玉の写真が入っており、そこに5円玉2枚の写真を入れれば、10円玉1枚と5円玉2枚は「同じ」と関係づけられます。
・「より大きい」という箱に、象の写真が入っており、そこに猫の写真を入れれば、「象は猫より大きい」と関係づけられます。
というようなものです。個々の比較は個別になされますが、「同じ」、「~より大きい」はそれぞれまとまりをもっています。これが反応クラスとして定義されます。
フレームは、関係フレームだけと限らず、例えば「親がお辞儀をする」という行為が「模倣」という箱に入っていて「自分も同じポーズでお辞儀をする」ことが後から入れられます。
その模倣が、「親がお礼の挨拶をする」、「親がお詫びをする」というような行為にも自動的に拡張されれば「般化模倣」となり、1つのフレームを形成するでしょう。
関係フレームの留意点
・関係づけることはオペラント行動で、全てのオペラント行動と同様に結果を通じて形成され
る必要があります。
関係フレーム理論では、標的となる行動を複数の範例で指導することで、学習すべき行動の抽象化が進み、指導された反応が一般化されるという考えがあります。
・関係フレームは認知構造ではなく、行動分析学はあくまで「行動」に徹底しており体の内部
に何らかの構造を仮定してたり、構成概念で説明を試みません。こうした誤解を避けるため
に「フレーミング」という動詞形を使うこともあるそうです。
・脳内に関係性を把握するような何らかの神経構造があることは仮定していませんが、脳科学
の進歩によって、将来的に対応する脳機能が解明されれば、関係づけがうまくできない障害
や過剰に関係づけをしてしまうといった障害に対して、より有効な治療法が開発される可能
性はあるでしょう。
・関係反応のほとんどは直接的な訓練を必要とせず、派生するという点です。これは学習時間
に節約になるという点で適応的である反面、様々なダークサイドをもたらす危険性を含んで
います。
関係フレーム理論では、恣意的に適用可能な関係反応(arbitrarily applicable relational responding)が、人間の言語や認知の中核とされます。
恣意的に適用可能な関係とは、物理的刺激ではなく、同じ言語共同体に属する人間によって定められた“社会的な”あるいは“勝手気ままな”刺激関係に基づいて区別することです。
物理的刺激にもとづく大小関係の区別は、非恣意的な関係反応です。
例えば、10円玉は50円玉より大きいということです。
その一方で、大小関係による価値の区別は、恣意的に適用可能な関係反応です。
例えば50円は10円より大きいということです。