多層ベースラインデザインと多層プローブデザイン

多層ベースラインデザイン(Multiple baseline design)

自己検証や自己評価として「反転デザイン」や「多層ベースライン(マルチ・ベースライン)という少数事例の実験計画法を用います。
多層ベースライン法では、一つの折れ線グラフについて、ベースライン期と介入期を比較するだけではなく、そのときに他のまだ介入を開始していない折れ線グラフのベースラインで変化が起こっていないことを確認します。
グラフの縦に多層的に積み並べているのは、横軸の時間軸に合わせ同時性を覚悟し、介入を始めた条件では行動が変わっているのに、同時期に介入をしていない他の条件では行動に変化が起こっていないことを視覚的に確認するためです。
他の条件で変化が起こらなければ、介入以外の剰余変数の影響を排除できる可能性が高まります。そして介入が行動変容の主因であった可能性を高めます。
逆に介入を開始していない他の条件でも行動が変化してしまったら、それは介入以外の剰余変数の関与、もしくは「般化」を示唆することになります。
多層ベースライン法は、AB法(ベースライン期と介入期を比較する方法)の反復による再現(リプリケーション)をしていく方法ではありますが、同時に複数の条件間で時間軸を合わせることで、剰余変数の排除を試み、結果として内的妥当性を確保しようとする実験デザインなのです。
分析的作業を行う上で、人間の行動を記述(記録)する事が必須の条件です。このような分析の方針は子どもを指導する療育行動全体を自己検証するにとどまらず、そうした作業を支える職制システムや、個別の教育的・福祉的な行為を規定する「発達」や「障害」に関わる諸概念についても、その概念を現状で支える「環境条件」について分析していくことになります。
このことは発達障害児を持つ対象児についての実践で「社会的妥当性」という第三者による評定の検討が必須になっています。

多層プローブデザイン

多層プローブデザインは、多層ベースラインデザインの一種です。一つの層が介入条件にある時には、介入しない他の層では測定しないデザインです。そして新しい条件が加えられる時点でプローブと呼ばれる介入条件を含まないテスト試行をすべての層で行い、別の層に介入条件を設定します。
これによって、介入がないのにベースラインの測定が続けられる(例えば、できない問題を繰り返しだされ続けるなど)という多層ベースラインデザインの欠点がカバーされ、対象者に測定の過度な負担をかけずに済むようです。

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