無誤弁別学習と無誤学習(エラーレス・ラーニング)

無誤弁別学習(Errorless discrimination leaning)

通常の継次弁別訓練は、訓練終了までの間にいくつもの弁別の誤りが生じます。
反応したにもかかわらず強化が行われないことは、実験対象にとっては嫌悪的なものとなる可能性があります。
実際にハトの場合は、威嚇行動や攻撃行動をとることが知られています。
また何ヶ月もの訓練でも、通常は弁別が完全なものとはならず、負刺激に対してバーストと呼ばれる反応の爆発が起こってしまいます。
この負刺激に対する反応の誤りがほとんど、あるいは全く起こらない方法を「無誤弁別学習」と言います。
この方法はコロンビア大学の心理学教授であるハーバート・テラス(Herbrt・S・Terrace)が考案したもので、訓練の速い段階で負刺激を導入しますが、最初は確実に反応しないであろう弱く短い刺激を用いて、徐々に強く長い刺激へと変更していきます。
これによって負刺激への諸反応が生じないままハトは弁別を完成させました。
ちなみに、ハーバート・テラス教授は「プロジェクト・ニム」というチンパンジーを人間の子どもと同じように育てて、手話を教えるという実験をまとめたドキュメンタリー映画で知られています。

無誤学習 エラーレス・ラーニング(Errorless Learning)

子どもに間違いを多くさせずに行動を修得させることを、無誤学習またはエラーレス・ラーニングといいます。
失敗をさせず成功体験を積み重ねる指導を行う事によって動機づけを高めることができます。
誤った行動を行わせてしまうと、誤った行動を強化してしまう可能性がるため、十分なプロンプトによって失敗をさせなということが大切です。
「なくしたい行動は起こさせない」ということが基本です。
また、失敗経験が多くなると、動機づけは低くなってしまいます。
様々な行動を教える際の基本的な方法は、「子どもがミスをせずに正しい行動ができる程度の十分なプロンプトを与え、正しい行動を行わせて、正しい行動を強化する」ということです。
ABCの三項随伴性で考えると、「A指示+十分なプロンプト、B(必要なプロンプトが与えられ)正しい行動を行う、C正しい行動が強化される」と随伴性を繰り返し経験させます。
正しい行動を頻繁に行わせて、十分に褒めて挙げ、楽しい雰囲気で成功体験を積ませてあげましょう。
増やしたい行動をより多く経験させるという事が大切です。失敗してもめげずに頑張って取り組むスキルは、次のステップになります。
課題の難易度を調整し、必要なプロンプトを与えて成功体験を積ませることで、課題の動機付けが高まります。

挨拶をする行動

「挨拶をする」行動を例にすれば、先生に「おはようございます」と挨拶をします。
お父さんが帰ってきたら「おかえり」というなどと教えているとします。
子どもが少し言えるようになってきたからと言って、「何というの?」と子どもに考えさせて言わせるのはまだ早いです。時間遅延法を用いて反応を待つのも同様です。
まだ子どもは頑張って考えないと正しい挨拶が出てこないかもしれませんし、間違えることも多いかもしれません。
誤った挨拶をしてしまうと、頑張って考えたことが強化されず、挨拶をするのが嫌になったり、間違った挨拶を誤学習してしまう可能性があります。
まずは、十分なプロンプトを用いて正しい挨拶をして強化される機会を増やします。
「先生に何ていうの?」ではなく、「先生におはようございますって言って」と言ったり「おはようございます」と言って模倣させるなど、正しい挨拶をすると挨拶が返ってくることで強化される機会が多くなります。
当面は、このようなプロンプトを十分に行い、正しい挨拶をさせていきます。
そして次のステップとして、プロンプトをフェイディングし、「先生に挨拶して」「先生いるよ」などと言って、自発できるようにしていきます。

他の行動を教える

他の行動を教える場合も同様です。子どもが少しできるようになったからと言って自発させようと頑張らせすぎると、嫌悪感を抱かせてしまったりして失敗してしまう事があります。
まずは十分なプロンプトを用いて正し行動だけを無理なく行わせて、強化させる経験を積ませます。
そして、プロンプト・フェイディングとして、徐々に侵襲度の低いプロンプト(指さしや手を添えるなど)に移行し、プロンプトの頻度を少なくしていきます。
最終的には自然な社会的手がかり刺激や声掛けによって正しい行動ができるようにしていきます。

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