行動の観察

行動の観察は、観察者が対象者を客観的に観察し、その行動、言動を記録していくものです。

行動観察法といい、それは心理学的測定法の一つで、直接客観的に観測可能な行動の生起頻度・回数を測定する方法です。

大きく分けて「自然観察法」と「実験観察法」があり、自然観察法は主に仮説を設定する準備段階に行うもので、観察対象について、できるだけ主観を加えず、正確に記述・分析するものです。相関関係は分かりますが、因果関係を確定することはできません。これに対し実験観察法は、仮説に基づいて独立変数(治療法)と従属変数(行動指標や観察した行動)を設定します。そのため因果関係が検討可能です。

さらに、自然観察法の特殊形態として「参加観察法」が、フィールドワークや臨床的な事例研究において重要なものと考えられています。これは観察者が本来の立場(教師、療育者など)としての役割を果たしながら観察する方法です。参加観察法に対して「非参加観察法」はビデオカメラなどを利用し、対象者が観察されていることを意識させないように配慮しつつ、対象者の普段通りの行動を観察する方法です。

観察法の利点と弱点

利点

1 対象者の自然な行動や反応を調べるのに適している。

2 対象者に与える負担が少ない。

3 言語能力が未熟な乳幼児や、障害のある対象者にも活用できる。

弱点

1 観察内容の解釈に、観察者の先入観や気分、体調、その場の雰囲気などが影響しやすい。

2 対象者の自然な行動や反応が起こるまで待たなければならない。

3 対象者の全ての行動までは観察できない。

全体的アセスメント

(1) 本人や障害の特性
好き嫌い、得意・不得意、体調の変化、生活パターン、行動傾向、認知能力(感覚・意味理
解の程度など)

(2) 環境の特性
好きなものが周囲に散らばっている、分からない言葉で説明を続ける人がいる、苦手な課
題が続けて出されるなど。

行動問題に焦点化したアセスメント

(1) 一般的アセスメント
頻度、強さ、本人や周囲の人に対する影響度、行動が起きやすい場面

(2) 機能的アセスメント(functional assessment)
行動が起きるときと起きない時の、それぞれに関係する環境要因を特定し、本人の特性と
環境の調和を見出す。行動を理解し、行動を修正および形成のため行動の形態や頻度、持
続時間だけではなく、環境との相互作用から行動の機能(目的や働き)に注目します。
行動の前後関係から行動の機能を推測する手続きを機能的アセスメントといいます。行動
だけに注目していると行動の機能を知ることはできません

他に家族や関係者から聞き取りしたことや成育歴や生活史も重要な情報になります。

また、観察をしていることが対象者に意識されているかどうかで、2つの種類に分類されます。

・顕現的な観察(obtrusive assessment)
対象となる子どもに観察されていることを意識している時に行動を観察する方法です。

・非顕現的な観察(unobtrusive assessment)
対象となる子どもが観察されていることを意識していない時に観察する方法です。

複数の観察者が存在する場合、その一致を確認するものとして、観察者間一致率(interobserver agreement)があります。これは、2人以上の独立した観察者に
よる記録間の一致度をいいます。

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