習慣行動と習慣逆転法について

習慣行動と習慣逆転法(habit reversal)

「習慣逆転法」はネイサン・H・アズリン博士(Nathan・H・Azrin)が開発した行動修正のための介入パッケージです。
1973年に出版した「神経症やチックを減らす方法(Habit reversal:a method of eliminating nervous habits of tic)」の中で紹介されました。
「ハビット・リバーサル訓練」ともいいます。
神経性習癖(nervous habits)、チック、吃音症、とレットなどの症状が適用対象になります。
「神経性習癖」は、爪かみや髪ひき、貧乏ゆすりなど、同じ形態の行動が繰り返される、いわゆる「癖」ですが、臨床的には出血や身体的損傷、社会的に不利など何かしら不適用が現れる場合に言います。
一般的に「癖」はストレスがかかった時や活動が拘束された時に自発しやすいことがわかっています。

「癖」を一種のスケジュール誘導性行動と見なし、強化率が低くなった時や嫌子の出現頻度が高まったときに、「癖」による自己刺激が好子として確立される、あるいは「癖」が最初は偶発的に強化され、そのまま誤学習した「癖」がスケジュール誘発性行動として自発され、随伴性はないにもかかわらず維持されてしまっているという仮説を元にしています。

習慣逆転法のステップと構成要素

1 意識下練習(癖やチックを意識化させる。)

(1) 反応を定義します。

鏡で自分の行動を見ながら、癖やチックを具体的に言語化します。

(2) 反応を検出する練習

療育者が「今やっていますよ」と指摘します。子どもが自分で気付けるようになるまで続
けます。

(3) 反応を自発する前に検出する練習

癖やチックをする前兆に気付く

(4) 反応が生じる状況を言語化します。

癖やチックが生じる場所や状況、一緒にいる人をすべて書き出します。
意識下学習は、記録をすることです。
癖が現れたらそのたびにメモします。
癖は何も意識していないこともしばしばありますが、メモを取ることで癖に気付くことが
できます。
意識することだけでも癖は軽減される場合があります。
意識か練習のゴールは次の質問に答えられるようになる事です。

・癖にはどちらの手を使うか。
・どのような状況で癖が生じるか。
・癖を始めるとき、どのような姿勢をしているか。
・どこの場所から癖がはじまるか。
・癖が始まる直前に、どのように感じているか。

2 拮抗反応の学習
(癖やチックと置き換える拮抗行動を教える)

拮抗反応とは、習慣的な行動をしようとした時、別の行動でそれを妨げることです。

(5) 癖やチックに気付いたら、あらかじめ決めた拮抗行動を2分間行います。

例えば抜毛症の場合、手が頭や顔に行く行動を妨げる必要があります。
毛を抜きたいという衝動を感じたら、2分間、両手を両手をぎゅっと握りしめます。
まだ抜きたい感情が治まらないのであれば、さらに2分間続けます。衝動が治まるまでこれを続けます。

拮抗行動は以下の条件を満たすことです

A 癖やチックとは反対方向の動作であること

B 数分間保持できる動作であること

C その動作によってアイソメトリックな筋肉の緊張が生じること(筋肉の収縮は起こらずに
持続的に不かをかけられる動作であること)

D 周りからは目立たずにできて、通常の他の動作に妨げにならず、でもそれをしている間
は癖やチックができないこと。

E 筋肉のけいれんを生じさせるチックについては、その筋肉と拮抗する筋肉を強化する
行動であること。

筋肉は二つの動作を同時にすることはできません。この拮抗反応を新しく体に学習させることで、古い習慣を消し去ることができます。
意識下練習の中で、自分がどのような状況で癖が行われるかに気付くことができていれば、拮抗反応の学習と合わせるだけで大幅な改善効果が見られます。

3 リラクゼーション練習

癖はしばしば強いストレスを感じたり、不安や怒りの感情がきっかけとなって起こります。  リラクゼーション箱のきっかけとなる衝動を軽減させるのに効果的です。

A 筋弛緩法

肩こりを感じるとき、筋肉の緊張を意識することができます。この緊張に気づき、意識的に緊張と弛緩を繰り返す方法です。

今、右のこぶしにギュッと力を入れて緊張状態を作ります。右の手に注意を払いながら、そのまま10秒間保ち緩めます。緊張状態と弛緩状態の感覚の違いを意識してみます。 それを体のいたる部位で行うことで身体の緊張がほぐれ、衝動を抑えることができます。

B 腹式呼吸

腹式呼吸は、息を吸ったときにお腹が膨らみ、吐いたときにゆるむ。慣れないうちはお腹に手をやり、動きを意識します。このとき「リラックス」という言葉を合わせると良いといわれます。

息を吸うときに「リ」の音を心の中でゆっくりといい、そして次に吐くときに「ラックス」とゆっくり言う(大声ではなく、そっと発音する)。「(吸い始めるとリィィーー、(吐き始めると)ラァァーーックス」

4 偶然性の管理、手続きの維持(動機づけの手続き)

(6) 不都合さの振り返り:癖やチックによって生じる不快感、不安などをすべて書き出し
ます。
また、癖を消し去るために癖をコントロールできた事によって得られるメリットを
書き出して、いつでも見られる状態にしておきます。

(7) ソーシャルサポート:家族や友人に習慣逆転法について伝え、癖やチックをしていない
ところを見つけて褒めてもらい、気付かずに癖やチックをしているところを見かけた
ら拮抗活動をするように声をかけてもらいます。

(8) 公表:癖やチックについて周りの人に知らせます。

5 般化練習

(9) 創造による予行演習:(4)で書き出した場所や状況、人を思い浮かべながら、癖やチッ
クをしそうになるが気がついてやめ、拮抗運動をする自分を想像します。

癖が起こりそうなケースをいくつか予測しておき、コントロールに成功したことを
事前に想像しておく練習です。
成功パターンをあらかじめ学習しておくことで、実際にその場面になった時にも、衝
動をコントロールでいるようになります。

このように、習慣逆転法のフルパッケージはかなり手間がかかり、専門家の助言なしで進めるのは困難ですが、「(2) 反応を検出する練習」と「(5) 癖やチックに気付いたら、あらかじめ決めた拮抗行動を2分間行う」だけの「簡易版」でも効果があることを示した研究も複数あります。

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