行動分析の成り立ち2 新行動主義と徹底的行動主義

新行動主義(Neobehaviorrism)

ワトソンの行動主義から発展した心理学で、クラーク・L・ハル(Clark Leonard Hull,1884~1953)、アメリカの心理学者エドワード・C・トールマン(Edward Chcase Tolman,1886~1959)が代表的です。

ハルは人間の心や情感などの仕組みをモデル化して、そこから行動を説明するという発想をします。つまり行動と見なされなかった心的な現象を数値化して分析するという方法を考えました。これは「方法論的行動主義」と呼ばれます。

ハルは「行動の原理」(Principles of Behavior)という著作の中でS-R理論を改良したS-O-R理論(Stimulus-Organism-Response Theory)を提示します。この理論におけるO(Organism,有機体)が刺激・反応に影響を与える媒介変数によって、同一刺激に対する反応の個体差に答えることを提案しました。

トールマンは新行動主義を積極的に推し進めた心理学者で、固体は盲目的に行動するのではなく、特定の目標に向かって進み、内在する目標や状況の認知をその媒介過程の内容として考える必要があるとしました。

ドイツ留学時にゲシュタルト心理学のに触れて影響を受け、人間は環境を認知して行動している。そのため人間の行動を理解するためには環境をどのように捉えているかを知らなければならない。この認知の過程を仲介変数と見なして、それを重視するのがトールマンの特徴です。

彼の提唱した「サイン・ゲシュタルト説」は、環境世界にある部分的な手がかりやサインを見出して、問題解決のヒントを得る認知地図を作成し、全体性(ゲシュタルト)を構成することで行動に変化が起きるというものです。また、トールマンは認知心理学の先駆けとなった心理学者と言われます。

徹底的行動主義(Radical behaviorism)

ハルの提示したS-O-R理論は、人間の行動の生起と変化を統合的に説明できるという意味で、一般法則としての完成度は高いものの、同時にO(Organism)という概念に科学的な客観性がないという問題があります。B.F.スキナーは、実証主義や操作主義を前提とする自然科学としての行動主義を志向し、ハルの反証可能性に乏しい理論に対して批判的だったとされます。

スキナーはソーンダイクの試行錯誤学習からヒントを得て、大学院生の頃にネズミがバーを押せばエサが出るスキナー箱を考案して、動物の自発的な行動(オペラント行動)は随伴性強化(その行動を行えばエサが与えられるということ)によって生起確率が増すというオペラント条件づけで実験条件の統制とネズミの行動観察から実証主義的な理論化を進めました。新行動主義を批判し、ワトソンの古典的行動主義をさらに徹底させ、認知心理学で盛んに研究されている記憶などの概念を排した徹底行動主義を展開していきました。

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