単一事例実験デザインについて

行動の分析と記述

自らが行う療育や環境設定が対象児に及ぼす効果を評価するという分析的な特性は、発達障害の問題を解決するにあたって、応用行動分析学が持っている特に大きな利点です。

分析

障害児の問題解決に向かって実践的・治療的な介入をすることを「トリートメント(treatment)」といいます。トリートメントをまだしていない初期の状態(特別な介入などを行わず、ありのままの自然な状態)や行動療法を実施してから時間が経過した状況のことを「ベースライン(baseline)」と呼びます。
行動療法ではその治療効果を客観的に測定するために「トリートメント期」treatment phase)、介入期」と「ベースライン期(baseline phase)、日常期」における問題行動や望ましい行動の出現頻度を比較して検討します。
行動療法のトリートメントをする前とした後の何回かのセッションを「ベースライン」と見なすことがあります。ベースライン期に問題行動が減っていたり適応的な行動が増えていたりすれば、その前に実施した行動療法のトリートメントに『臨床的・具体的な効果』があると判断することが出来ます。
反対に、問題行動が持続していたり適応的な行動が全く生起していなければ、それまでの行動療法のトリートメントには効果がないということになり、そのやり方(介入方法)を変更していく必要があります。

単一事例実験デザイン
(single-case experimental design:SSD) シングルケースデザイン  

単一事例実験デザインとは「一人の被験者を対象に、何らかの実験的介入を行い、その直後の行動変化に基づいて介入の有効性を、条件の導入と除去を複数回繰り返すことで確認する研究法」をいいます。
スキナーや行動分析学の研究では単一事例実験デザインが方法論的に確立して、数々の成果をあげています。また、事例の個別性や臨床症状の多様性が大きい事などから多数のサンプルを集めるのが難しい事もあります。
一人の被験者を一人の療育者が経時的にカウンセリングを行います。

一被験者に対する反復測定

単一事例実験デザインでは、一人の被験者に対して、経時的に標的行動を生起頻度などの定性的変数や、検査や薬物に対する反応変数の値などを測定します。データは原則として単一被験者に対する反復測定データになります。

ベースラインとその選択

単一事例実験デザインでは、原則として特別な実験操作を加えず標的行動の生起頻度などの何らかの指標を測定し、その値の安定性や変動を確定する必要があります。
ベースラインはその後の療育者による標的行動に対するカウンセリングの効果を査定するための基準値の役割を持ちます。

一変数操作

単一事例実験デザインでは、一度に単一変数だけを操作することが重要です。複数の治療変数の相互作用を検討する場合でも、その基本原則を守る必要があります。
変数には独立変数と従属変数があり、独立変数は治療法を指し、従属変数は行動指標や観察した行動をいいます。またA段階は介入を行っていないベースライン期で、B段階は介入(トリートメント)期をいいます。

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