インリアルの特徴
① インリアルでは、言葉の遅れのある子どもをコミュニケーション障害児としてとらえます。
② 話しことばだけではなく視線、表情、身振りなどの非言語行動もコミュニケーション行動としてとらえます。
③ 子どもはコミュニケーションの楽しさを経験することで、コミュニケーションへの意欲や基礎的力を育てます。
④ 言葉については、表象機能だけでなく、伝達機能も重視し、自発的・機能的使用や文脈・場面での適切な使用といった観点も含めて評価・指導します。
⑤ コミュニケーションの成立には、子どもだけではなく、大人の要因も相互に客観的に評価します。関わりの場面をビデオに録画し、分析シートを用いて大人の関わりや言葉かけが適切なものであるかを検討していきます。
インリアルの理論的背景
言語学は、音韻論、意味論、統語論、語用論に分かれています。
例えば「りんご」についてですと、
・音韻論…音と音の記号的関係。正しい発音の誘導
「り」/ri/「ん」/n/「ご」/go/という音からなります。
・意味論…物と言葉の関係。カードによる語彙の獲得。
これは、赤くて丸い果物を指す言葉です。
・統語論…言葉と言葉の関係。プリントによる文法の定着。
これは一つの単語であり、文ではありません。
・語用論…人と言葉の関係
文脈に応じて「りんご(ちょうだい)」「りんご(おいしい)」と
意味が変化します。
今までの言語指導では、正しい発音の誘導(音韻論)、カードによる語彙の獲得(意味論)、プリントによる文法の定着(統語論)などを重視してきました。しかし、そうして得た言葉だけでは、日常のコミュニケーションにおいて機能させにくい面がありました。
インリアルの機論的背景には語用論の考え方があり、語用論では言葉は状況・文脈に応じて意味が変化するものととらえており、場に応じたやりとりを通して得た言葉は、子どもの生活の中で機能的に働くことが期待されます。そこでは、話し手の意図を聞き手がどう読み取っているかが重視され、「どのような場面で」、「どのように発話したか」、行動や表情なども含めて意図を読み取ることが求められます。
例えば、子どもの表現に対して、状況・文脈で変わる意図を示すと
【子どもの表現】 【状況・文脈で変わる意図】
母親にしがみつき犬を見ている → 「イヌがこわいよ」
笑顔で犬を指さしている → 「イヌがいた」
ぬいぐるみをかざして「アー」 → 「こっちをみてよ」
犬に向かって「ワンワン」 → 「イヌさん、こんにちは」
おもちゃ箱を指さし「ワンワン」→ 「イヌのおもちゃをとって」
このように、インリアルでは、大人が子どもの意図を的確に読み取り反応的に関わることで、子どもがコミュニケーションの成功体験を重ねることを重視しています。
参考
鹿児島県総合教育センター 指導資料 2002年
明石書店
岩波書店
ミネルヴァ書房
横浜市養護教育総合センター 特別支援教育相談課 支援のヒント2008年
Amazon
ありのままの私日記“あなたがあなたらしく輝くために~樹庵”
福井県特別支援教育センター
軽度発達障害フォーラム
土曜の会
大阪府立大学学術情報リポジトリ