ヴォルフガント・ケーラー1 チンパンジーの洞察実験まで

ヴォルフガング・ケーラー(Wolfgang Kohler 1887~1967)

ドイツの心理学者で、ゲシュタルト心理学者の創始者の一人です。

学習心理学が専門で、それまでの学習理論における連合主義的な部分と部分を組み合わせる試行錯誤学習では説明できない、類人猿が試行錯誤によらない洞察学習を行うことを発見しました。
洞察学習とは「学習者は洞察力により問題場面を構成している諸情報(要素間の関係)を統合し、認知構造を変化させ、問題を解決する」というものです。

1887年 当時ロシア領のエストニアにあるレヴァル(現:タリン)に生まれました。

6歳で両親の故郷であるドイツに戻りました。

1905年 1906年までテュービンゲン大学、1906年~1907年までボン大学に在籍し、
1907年~1909年までベルリン大学でマックス・プランク(Max Planck)の下で
物理学、またシュトゥンプの下で心理学を学んで聴覚に関する研究で博士号を
取得しました。

1913年 フランクフルト大学での助手を辞めて、アフリカ南西のカナリア諸島テネリフェ島に
派遣され、プロイセン科学アカデミー人類学研究ステーションの所長に任命されまし
た。1920年まで6年間働き、類人猿研究所で、「チンパンジーの学習実験」を行い
ました。

ケーラーがなぜそのような島で、チンパンジーの研究をしたのかという理由として、第一次世界大戦中の英国の艦船の動きを偵察するため偵察するスパイの役割を果たしていたのではないかという説もあります。

1917年 「Apes」を出版しました。

1921年 ゲッチンゲン大学教授に就任しました。

1922年 ベルリン大学の心理研究所教授に就任して1935年まで務めました。

1921年 「類人猿の知恵試験」を発表しました。

「チンパンジーの洞察学習」

チンパンジーを高い天井からバナナをひもで吊るした部屋に入れて観察しました。バナナを取ろうと何回か飛びついてみましたが届きません。やがてチンパンジーは部屋の隅にあった木箱に気がつき、それを積み重ねて上りバナナを取ることができました。

また、葦の茎を置いてみると、2本の足で遊んでいるうちに偶然、細い茎を太い茎に差し込んでみると長くなって、吊るされたバナナを叩き落としたチンパンジーもいました。

さらにチンパンジー達を檻の中に入れ、檻の外の手の届かない場所に長い葦の茎と反対側に好物のバナナを置き、チンパンジーの手の届く範囲に短い葦の茎を置きました。短い葦の茎ではバナナを取るには長さが足りません。

チンパンジーは檻の中を歩き回ったり、周囲を見回したりしているうちに、突然短い葦の茎を使って檻の外のバナナの反対側にある長い葦の茎を手繰り寄せ、そしてその長い葦の茎を使って目的のバナナを手に入れることに成功しました。

ケーラーはこれらのチンパンジーの行動は、考えた結果(洞察した結果)であると考えました。
ソーンダイクの試行錯誤説に対して洞察学習の特徴は、「解決行動が突然現れる」ということです。また、同じ状況に立った時にも解決策は繰り返され、消えにくい傾向にあります。

ちなみに1981年、アメリカのロバート・エプシュテイン博士(Robert Epstein)とB・F・スキナーはハトを使って天井に吊るされたバナナを箱を移動してその上に昇って手に入れることに成功します。
これは洞察による行動も外的に操作可能な経験、つまりバナナをつつくと取れるという行動と踏み台を動かして目的の場所につくという2つの訓練によって生みだせることをやって見せました。

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする