強化スケジュール(3) 累積反応数とその他の強化スケジュール、強化履歴

強化スケジュールの累積反応数

FRスケジュールでの累積反応数は、階段状の特徴的な反応パターンを示します。強化子を得た後はしばらく反応がない強化後反応休止(PRP)という状態が見られます。

FIスケジュールも強化後反応休止が見られ、その後徐々に反応が増えていって、強化子が得られる前になると急激に反応が増えます。累積反応数には扇形のパターンが繰り返されるので、この形がホタテガイの縁に似ているためFIスキャロップと呼ばれますこれは強化子の提示直後には反応休止期間が続き、時間経過と共に加速的に反応率が上昇していく反応パターンですスキャロップ(scallop)とは、反応が強化されると、しばらくは反応が起こらず、時間経過と共に段々反応率が高まり、次の強化の直前に反応率が最高になる反応パターンを言います。

VRスケジュールは、一本の直線に近い傾斜となります。これは反応の頻度が安定していることを示しています。FRスケジュールと比べ、強化後反応休止は極端に短く、強化子提示の比率が高い場合は特に短くなり比率が低くなるほど強化後反応休止は長くなります。

VIスケジュールは、VR同様に一本の直線に近い傾斜となります。反応の頻度は安定しているものの、VRスケジュールと比べ反応率はやや低く、反応率が上がっても強化率はあまり上がりません。

その他の強化スケジュール

比率累進スケジュール(Progressive Ratio schedule:PR)

強化子を与える条件を少しずつ増やしていくスケジュール

例 ラットに2回の反応をすれば甘いミルクが与えられる。次は4回、6回、8回とミルク
が与えられる反応数を増やしていく。

定時スケジュールと変時スケジュール

・ 定時スケジュール(Fixed Time schedule:FT)

反応とは無関係に一定時間が経過すると自動的に好子が与えられるスケジュールです。

例 一ヶ月間一度も出勤しなくても給料がもらえる。

・ 変時スケジュール(Variable Time schedule:VT)

反応とは無関係に不定の時間が経過すると自動的に好子が与えられるスケジュールです。

FTとVTは、迷信行動の形成や問題行動の解消に重要な役割を果たしています。

複合型の強化スケジュール

・ 多元強化スケジュール(Multiple:MULT)

異なるスケジュールを交替で用いる場合に異なる弁別刺激のものを「多元強化スケジュー
ル」といいます。継時弁別訓練に用いられます。

・ 混合強化スケジュール(Mixed schedule of reinforcement:MIX)

異なるスケジュールの連続で同じ弁別刺激のものを「混合強化スケジュール」といい
ます。

・ 固定長反応連スケジュール(Fixed Consecutive Number schedule:FCN)

2つのオペランダムのうちの一方に、あらかじめ定められた回数以上、連続して反応した
後に、もう一方に移って1回反応すると、強化確率1で強化子を提示するスケジュール。

例 左のレバーへの反応の回数に応じて右レバーへの反応の強化確率が変わる。

オペランダムとは、個体の行動が環境に対して効果を与える環境との接点のことです。例えばハトのキーつつき行動では、キーへの反応が入力装置を介してコンピュータに取り込まれるので、キーがオペランダムとなります。

・ 並立強化スケジュール(Concurrent schedule of reinforcement)

複数の刺激を同時に提示し、刺激ごとに異なるスケジュールで並列的に強化スケジュール
が同時進行することを「並立強化スケジュール」といいます。
同時弁別訓練に用いられます。

・ 並立連鎖強化スケジュール(Concurrent chain schedule)

並立強化スケジュールを適用する際に強化刺激の代わりに強化スケジュールを提示するス
ケジュールを「並立連鎖スケジュール」と言います。

強化履歴(reinforcement history)

ヒト以外の動物での実験の多くは、それまでにどんな強化スケジュールも受けていない動物が用いられます。
しかし成人のヒトの場合は、日常生活において多様で複雑な強化の履歴を持っています。
この強化履歴の違いによってその後の強化に影響を与える要因になっていることは、ヒトやヒト以外の動物での実験で証明されています。