エドワード・L・ソーンダイク(Edward.Lee.Thorndike,1874~1949)

アメリカの心理学者、教育学者、教育評価の分野では教育測定運動の父、教育評価の父とも言われます。
ハロー効果(他者評価に対する評価エラー)の発見者です。ネコを用いた試行錯誤説の創始者、アメリカにおける教育心理学の創始者です。

1874年 アメリカ・マサチューセッツ州のウィリアムズバーグに生まれました。

ウェスリアン大学で学び、アメリカで初めて心理学の講義をし、研究室を設けたウィ
リアム・ジェームズ(William James,1842~1910)の本を読んで心理学に興味を持
ち、彼のいるハーバード大学に進学したものの、児童を被験者とする教授法や学習の
研究が難しかったため、動物を用いた学習研究をする事になります。

1896年 この年の前後から、動物の知能や学習に関する研究を開始して、様々な脊椎動物を用
いて実験を開始しました。
ネコを用いた問題箱による試行錯誤学習(S-R学習)の実験を行い、学習には動物の能
動的な行動が必要で数多くの反復をしなければならないという練習の法則(Law of
exercise)及び、効果の法則(Law of effect)を提唱しました。

ネコの問題箱
ひもを引くと、扉が開いて外に出ることが出来る箱にネコを入れます。ネコは外に出
ようとして色々な行動を取り、偶然ひもを引いて外に出られる経験をします。外に出
たらまた箱の中に入れます。
始めは時間がかかりますが、試行回数が増えるにしたがって、猫が箱から出る時間が
徐々に短くなっていきます。これを試行錯誤(try and error)といって、試行錯誤学
習を提唱しました。

結合の法則(効果の法則・レディネスの法則)

効果の法則
1 満足をもたらす反応は、結合を強め、反応が起こりやすい(満足の法則)
2 嫌なことが起こると結合は弱くなり、反応が起こりにくい(不満足の法則)
3 満足と不快の程度が強いほど、状況と結合の変化は大きくなる(強度の法則)

レディネスの法則
あるものへの準備ができていると、そうでない時よりも能率的に習得できるという法

1898年 コロンビア大学に移って、世界で初めて心理学教授になったジェームズ・M・キャッ
テル(James Mckeen Cattell,1860~1944)のもとで研究を行い1898年から1901
年の間に「動物の知性―動物における連合課程の実験的研究―」(Animal
Intelligence)で博士号を取得します。この研究では、動物の行動に過度に知的なも
のを読み込むのを戒める姿勢が貫かれています。
動物の行動は、個々の行為を何らかの見通しの下に行っているのではなく試行錯誤に
過ぎないという事が彼の協調点でした。しかし試行錯誤ではあっても、学習過程であ
ることに変わりなく、試行錯誤学習という考え方はスキナーのオペラント条件づけの
知的基盤になりました。

1899年 コロンビア大学講師になりました。

1903年 「教育心理学」(Educational Psychology)を出版

1904年 コロンビア大学教授(~1940年)

「精神的社会的測定学序説」を著し、個人内測定への理論的根拠を与えました。

1912年 コロンビア大学在学中に日本からの留学生新井鶴子を指導し、日本人女性初となる哲
学博士号を授与されました。(新井鶴子は博士号授与の日に結婚して原口鶴子になり
ます。)

1913年 「教育心理学」を3巻本として2年をかけて出版。

1914年 教育測定第1回大会で、「全て存在するものは量的に存在する。量的に存在するもの
はこれを測定することが出来る。」のスローガンを発表。

1917年 心理学を戦争に応用するために全国学術研究協議会(National Research Council)の
要請で、心理学委員会が創設され、理事になりました。

さらにその下部組織の一つに、ソーンダイクを委員長として徴募兵の持つ熟練を調査
していた「特別の適性を必要とする任務に適切な人を選考する委員会(Committee
on the Selection of Men for Tasks Requiring Special Aptitude)があり、徴募兵の
精神検査の手法を研究しました。

同年、ソーンダイクは陸軍組織の人事分類委員会の議長となり、そこでソーンダイ
クらは飛行士の選考方法に関する研究を主眼に行いました。

1920年 「人々を管理する能力」により、SQ(Social Intelligence Quotient)を定義しまし
た。SQは社会性の知能指数、社会指数などと訳され、人と人との関わり、対人能
力、社会性がどれだけ秀でているのかという点に焦点を当て、他者の感情を理解し、
さらに自分の行動が相手に及ぼす影響も考慮して対人関係を円滑にする能力のことを
言います。

1929年 発表した論文「A Constant Error in Psychological Ratings」で初めて「ハロー効
果」を使いました。

1932年 学習の基本原理(Fundamentals of Learning)を著しました。

1949年 ニューヨーク、モントローズで76歳で亡くなりました。

ソーンダイクの言葉

心理学は目標達成の確率を測る助けになる。

Psychology helps to measure the probabillity that an aim is attainable.

色は褪せ、寺院は朽ち果て、帝国は滅ぶ。しかし賢者の言葉は残る。

Colors fade, temples crumble, empires fall, but wise words endure.