行動分析の成り立ち1 行動主義心理学

行動分析学は、20世紀半ばに成立した、心理学における実験科学の1つです。その系統は哲学的にはジョン・ワトソンの古典的行動主義の系譜に連なり、心理学的には「学習」と呼ばれる領域から発展しました。

行動主義心理学の誕生

1879年、ドイツのライプチヒ大学のヴント(Wundt,1832-1920)は、世界初の心理学実験室を開設しました。

ヴントはベルリン大学卒業後、1856年にハイデルベルク大学で医学の学位を取得、同大学で講師、教授となり、その後ライプチヒ大学の教授を長く務めました。

彼の提唱された「精神の科学」は、精神と肉体の二元論で、内観主義、意識主義、要素主義という3つの特徴を持っていました。ヴントの手法は、断片的な刺激を実験参加者に与えて、その反応を取り出しそれらの要素を組み合わせて考察する方法です。

しかし、心理学を哲学から切り離したという功績は大きいのものの、観察手法は個人の内観法によるもので、「人の意識は客観性にかけるので、外から観察可能な行動を分析する。」という批判から行動主義心理学、精神分析学などが誕生しました。

行動主義心理学(behaviorism)

行動主義心理学は、アメリカの心理学者のジョン・ワトソン(J.B.Watoson,1878-1958)が創始者です。

行動主義では、客観的、実証的な研究法法として、環境条件を統制して実験を行う「実験法(Experimental method)」と客観的な行動記録を行う「観察法(Observational method)」が採用されました。また、科学心理学を確立するために「抽象的な内面」ではなく「客観的な行動」を研究対象として、行動の生成、変化、消去のメカニズムを解明する行動実験が実施されました。

ワトソンは、帝政ロシアのイワン・パブロフ(Ivan Pavlov,1849-1936)による犬を用いた条件反射の実験にヒントを得ました。

ワトソンは、心理学の目的は行動の法則を定式化して行動を予測し、それをコントロールすることであると論じ、行動の単位は刺激(Stimulate)―反応(Response)の結合からなるとしました。これを[S-R理論]といいます。

また、彼は、「発達」を規定する要因を、経験によって成り立つと考え、健康な1ダースの乳児と、適切な環境が整えば、才能、好み、適性、先祖、民族など遺伝的と言われるものとは関係なしに、医者、芸術家から、泥棒、乞食まで様々な人間に育て上げることができると唱えました。

ワトソンは特定の刺激に対して特定の反応(行動)が結びつくというSR理論によって人間行動の一般法則・因果関係を明らかにしようとしましたが、同一の刺激に対して異なる反応(行動)が起こるという反証によって、行動原理の一般法則化(行動生起の環境決定論)は否定されました。

教育心理学

アメリカの心理学者・教育学者のエドワード・L・ソーンダイク(E.L.Thorndike,1874~1949)は教育に客観的な数値などによる測定を導入しようとする教育測定運動の父として知られ、「教育心理学」を著しました。またワトソンと並んで行動主義の代表的な人物でもあります。

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