集団随伴性3 集団随伴を用いた指導例

集団随伴を用いた指導例

宿題提出行動、清掃行動、給食準備行動などの研究報告があります。

具体例1 給食準備行動

対象:小学生

目標:給食の準備時間の短縮

給食当番の仕事は手分けしておかずや主食を盛りつけて手渡すことです。
当番でない児童は自分の給食を取りに行きます。
給食の準備時間は給食台が教室に搬入されて、配膳が終わり日直が「いただきます」の号令をかけるまでの時間とします。
学級担任はストップウォッチで準備時間を測定して、児童に特別な声掛けをせず、慌てたり配膳が雑になった様子が見られた場合に慌てず丁寧にするよう指導を行います。
給食前の授業が教室内で行われる場合に測定をし、欠席者が多い場合は測定しません。
測定している時間はテレビ画面に拡大されて映るようにします。
さらに、行動契約とトークンエコノミーシステムを利用します。
行動契約では給食の約束という名称のプリントを配布し、児童が行動契約にサインします。

行動契約(旧職の約束)の内容には以下の通りです。

・ 早く準備できるように頑張ります。
・ 友達と仲良く給食の準備をします。
・ おしゃべりをしないで、給食の準備をします。
・ 順番を守って列に並びます。
・ 目標より早く準備ができたら、給食マークを貼ります。
・ 目標は先生が決めます。
・ 給食マークが5つ貯まったら、シールがもらえます。

トークンエコノミーシステムとしては目標時間を設定し、基準を達成すると トークン強化子として給食マークが個別に与えられます。
これは著作権フリーのイラスト集の給食当番のイラストをカラー印刷しラミネートしたものです。
それが5つ貯まるとそれぞれの児童が希望するアイドルタレントやアニメなどのキャラクター、スポーツ選手などのシールがバックアップ強化子としてもらえます。

その結果、取り組みの前には給食の準備に12分から15分かかっていたのが、この取り組みによって10分から12分程度にまで短縮されました。

具体例2 授業妨害行動

対象:小学生

目標:授業妨害行動の減少

授業中に学級担任の許可なしに発言することを不適切発言として、その回数を記録します。
適切な発言については10分当たりの発現数を記録します。
また集団随伴性を用いた「いかりをおろそう!」というゲーム形式の介入を実施して、学級担任の許可なしに発言する不適切な発言、立ち歩き(離席)、課題に取り組まないといった3つの授業妨害行動を抑制し、授業開始から2分ごとに基準を満たした場合、授業後に担任によって船に鎖(クリップ)が1つつけられます。
このクリップが6つたまると、離れていた船といかりがつながり、グループの児童全員にシールが与えられます。
まず最初の段階として、学級担任が適切な行動と不適切な行動の違いを指導します。
上手な聞き方の条件は以下の5つです。指導後はこの5つの条件を黒板に掲示します。

① 相手を見る。
② 他のことをしない。
③ 静かに話を聞く。
④ 姿勢を正す。
⑤ 手をあげて質問する。

学級担任は上手な聞き方や適切な発言に対して積極的に言葉によって賞賛し、不適切な発言に対する返答を止めます。
挙手している児童に対して積極的に発言の機会を与え、不適切な発言に対して注意する場合には、「手を挙げて」などの適切な発言を促す指示を行います。
また、授業開始時に学級担任が聞く準備の合図が出されたら、手を握ってじゃんけんのグーの形をとって手を挙げ、学級担任に提示します。
1分以内にグループ全員がグーを挙げた場合にも鎖(クリップ)が1つつけられます。
これは全ての授業で実施され、学級担任は児童全員がグーを上げたことを確認して授業を開始します。
鎖(クリップ)が6つついたグループには終わりの会でいかりがつけられ、グループの児童全員に児童が好むシールが渡されます。

これらの結果は「いかりをおろそう!」の介入により、不適切な発言は減少しました。
ルールの掲示や聞く準備の合図、担任の対応の導入などの取組みにより、適切な発言の増加がみられました。
ただし、「いかりをおろそう!」の実施には学級担任一人で行うのは難しいため、簡便な方法にする必要があります。

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