インリアルにおける大人のかかわりを理解するための原則と方法
1 コミュニケーションの原則
① 子どもの発達レベルに合わせる。
② 会話や遊びの主導権を子どもに持たせる。
③ 相手が始められるよう待ち時間を取る。
④ 子どものリズムに合わせる。
⑤ ターン・トーキングturn-talking(やり取り)を行う。
⑥ 会話や遊びを共有し、コミュニケーションを楽しむ。
2 大人の基本姿勢 SOUL
S … Silence 静かに見守ること
最初、子どもがその場面に溶けこむための余裕をつくってやることが必要です。そのた
めには、まず大人は自分の考えや意図を押し付けるのではなく、子どもの様子を静かに
見守ります。
O … Observationよく観察すること
静かに見守りながら、子どもが何をどのようにするかをよく観察します。単にコミュニ
ケーション能力だけではなく、情緒・社会性・認知・運動などについて、子どもの能力
や状態を観察します。
U … Understanding 深く理解すること
観察し、感じたことから、子どものコミュニケーションの問題について理解し、子ども
に何が援助できるか考えます。
L … Listening 耳を傾けること
子どもに対して良き聴き手であること、それは単に耳から入る言葉だけではなく、子ど
もの表す様々なサインを全身で感じ取っていくことが必要です。
3 言語心理学的技法による大人の言葉かけのモデル
ミラリング … 子どもの行動をそのまま真似る
まだ、コミュニケーションの存在に気付かず、その基本的図式も形成されてい
ない子どもにミラリングすることによって、自分の行為が他者に与える効果や
意味について気付かせます。
例 子どもがパチパチ拍手をした時、大人も同じように拍手をして見せます。
モニタリング … 子どもの音声をそのまま真似る
ミラリングと同様に、自分の音声が他者に与える効果や意味について気付かせ
ます。
例 子どもが指を指して「アー」と発声したとき、大人も同じように指を指し
て(ミラリング)「アー」と発声する。
パラレル・トーク… 子供の行動や気持ちを言語化する
大人が子どもの気持ちを理解し、コミュニケーションしたいという意図を伝
え、相互作用の糸口をつかみます。また、子どもや大人の行動と言葉(意味)と
の結合を促します。
例 子どもが黙って車を走らせているとき、大人が「ブッブー、シュッ
パーッ」と言葉を添える。
セルフトーク … 大人自身の行動や気持ちなどを言語化します
パラレル・トークと同様に、コミュニケーションしたいという意図を伝え、相
互作用の糸口をつかみます。また、行動と言葉の結合を促します。
例 大人が車を走らせながら、「先生もブッブー、はしるよ」と言葉を添えま
す。
リフレクディング… 子どもの発音、意味、文法、使い方など様々な言葉の言い誤りに対し
て、正しく言い直して返します。
正しい言葉のモデルを聞かせることで、子どもの発話意欲を損なわせずに、聴
覚的フィードバックを適切にし、自然に正しい言葉の修正を促します。
例 子どもの「(ヒ)コーキ」に対し、「違うよ」と否定することなく「飛行
機だね」と返します。
エキスパンション… 子供の言った言葉を意味的あるいは、文法的に広げて返します。
一語文の子どもでは、二語文に広げて返すことによって、自分の発話の内容や
意図を大人が理解していることを示し、発話意欲を促します。と同時にその表
現によって意味的文法的モデルを示すことで、高次の言語の学習を図ります。
例 子どもがぬいぐるみを抱いて「わんわん」と言った言葉に対し、「わんわ
ん、だっこ(した)ね」と返します。
モデリング … 子ども話題に沿いながら、子どもの使うべき行動や新しい言葉のモデル
を示します。
会話のやりとりを通じて役割交替や言葉の使い方、対話の進め方等についての
モデルを示します。
例 子どもがおやつを食べている時に、「もぐもぐ、おいしいね」と言葉をか
けます。
参考
鹿児島県総合教育センター 指導資料 2002年
明石書店
岩波書店
ミネルヴァ書房
横浜市養護教育総合センター 特別支援教育相談課 支援のヒント2008年
Amazon
ありのままの私日記“あなたがあなたらしく輝くために~樹庵”
福井県特別支援教育センター
軽度発達障害フォーラム
土曜の会
大阪府立大学学術情報リポジトリ