音楽療法について② 日本の音楽療法に影響を与えた人たち

加賀谷哲郎 (1911~1983)

明治44年1月秋田県生まれ。声楽家を目指して武蔵野音楽大学に入学。その後、中野音楽学校に入学し教員免許を取得、音楽教師としての道を歩み始める。水上生活者、山谷の子どもたちの学校づくりに力を注ぎ、校長を務める。子どもたちの荒んだ心のケアにこそ音楽が必要だと考え、音楽療法に取り組み始める。学校退職後、今まで育んできた集団音楽療法を東京や横浜などの知的障害児の施設で実践する。その間に日本音楽療法協会を設立。東京学芸大学講師、日本社会福祉事業大学講師、国立秩父学園講師も務める。また、日本愛護協会のスクーリング講師も務め、広く育成に関わってきた。存命中、「加賀谷集団音楽療法夏季セミナー」を13回開催。ジュリエット・アルヴァン女史とは親交が深い。

ジュリエット・アルヴァン
Juliette Alvin (生年不詳~1982)

フランス生まれの有名なチェリスト。英国音楽療法協会(BSMT)の創始者としてパイオニア的な業績により、世界にその名を知られている。1967年と69年の2度の来日時には、音楽療法の基礎と具体的な方法を示し、日本の音楽療法界に大きな影響を与えました。女史の主張は、ミュージックセラピストが常に第一級の演奏家でなければならない、という信念に支えられていました。著書に「音楽療法」(Music Therapy)「自閉症児のための音楽療法」(Music Therapy for Autistic Children)

櫻林仁 (1916~1995)

音楽心理学者。日本の音楽療法活動の先駆的存在で、著書に「生活の芸術」「音楽療法入門」「心をひらく音楽」、訳書に「音楽の精神分析」「音楽療法」など多数。中でも1968年に翻訳されたイギリスの音楽療法家ジュリエット・アルヴァン女史にある「音楽療法」は反響を呼びました。この翻訳に至るエピソードがあります。ロンドン大学で都市行政を担当されるロブソン教授が、1967年に東京都の都市計画のコンサルタントとして招かれたことがきっかけとなり、それに同行した夫人と、かねてから日本に音楽療法の認識と開発啓蒙を推進しようと努力を続けてきた桜林氏とが、東京で偶然出会いを持ったことが訳書の実現のきっかけとなりました。

その後アルヴァン女史の来日も続き、日本の音楽療法が知識の時代から実践の時代へと移るきっかけとなりました。日本心理学音楽懇話会を主宰、日本芸術療法学会世話人をはじめ様々な団体の相談役を務めました。

「人間の本質を重視し、初歩の方にも実践の方にも音楽療法の基礎や応用を学ぶ場」を提唱し、それを受け継ぐことを目的に、桜林記念「音楽療法研究会」が1995年に発足され、日本音楽療法学会認定の研究会として登録されています。

クライヴ・ロビンズ Dr.Clive Robbins (1927~ )

イギリス生まれ。ノードフ=ロビンズの創造的音楽療法創始者。1954年よりシュタイナー施設の指導員として、特別支援教育と芸術療法に携わる。1959年、イギリスのサンフィールド共同体という、クライヴ博士のケア施設にアメリカの作曲家であるポール・ロビンズ博士が長期休暇中で訪れたことにより、共同で音楽療法の研究開発を始める。1965年、最初の共著「障害児のための音楽療法」を出版し。ノードフ・-ロビンズ音楽療法を確立する。

臨床実践、著作、療法のための作曲、教育など音楽療法のすべての領域にわたって革新的な活動を行い、特に音楽療法の中心に高度の創造性と音楽性を置くという新時代のスタンダードを呈示した功績は大きい。

ノードフ氏没後はキャロル夫人とチームを組み、研究や後進の指導に従事。以後、イギリス、ドイツ、オーストラリア、アメリカにノードフ=ロビンズ音楽療法センターが設立される。1979年、アメリカ、コームズ音楽大学人文学博士、1988年、ドイツ、ヴィッテンヘルデッケ大学名誉医学博士、1993年、アメリカ、ニューヨーク州立大学名誉人文学博士。1984年初来日。以後日本各地で講演やセミナー、ワークショップを行っている。現在、ニューヨーク大学ノードフ=ロビンス音楽療法センター所長。

著書に「障害児のための音楽療法」

松井紀和 (1930~ )

北海道大学医学部卒、精神科医。日本臨床心理研究所所長。昭和30年、東京武蔵野病院において音楽療法を開始。昭和32年よりソシオメトリーを応用した集団力動の研究を開始。昭和33年10月「精神分裂病集団における対人関係の研究」で学位取得。

昭和34年、山梨日下部病院に赴任後は、力動精神医学に基づく精神療法、集団力動の他、作業療法、音楽療法、心理劇等に力を注ぎ、病院精神医学会、芸術療法学会等で活躍。昭和62年11月、日本芸術療法学会学会賞受賞。昭和52年日本臨床心理研究所(山梨県甲府市)を開設してからは、全国向けのセミナー、音楽療法セミナー、グループダイナミックスセミナー、看護と活動療法のための力動精神医学セミナー等を毎年主催し、その講師、コーディネーターとして尽力しているほか、年間を通して、精神分析研究会、活動療法研究会も主催している。その他、県内精神保健関係の地域活動、全国各地での幅広い講演活動をしている。

村井靖児 (1936~ )

東京都生まれ。1960年慶応義塾大学医学部卒業。1965年東京芸術大学音楽部楽理科卒業。1967年同大学院修士課程修了。1989年より国立音楽大学教授。国立音楽大学音楽研究所所長、1988年より日本芸術療法学会理事、1995年より全日本音楽療法連盟常任理事、1987年より東京音楽療法協会会長。2001年より聖徳大学人文学部音楽文化学科教授。専攻は日本音楽史、音楽療法、精神医学。

著書に「音楽療法を語る」「精神治療における音楽療法をめぐって」「心を癒す」「音楽療法の基礎」「こころに効く音楽」など

参考

和歌山大学教育学部教育実践総合センター紀要No17(2007)

太成学院大学 乳児期における音楽療法の可能性と課題・堀清和

全日本ピアノ指導者協会(ピティナ)ノードフ・ロビンスの音楽療法

日本大学広報特別版第42号(2017)

日本ミュージック・ケア協会 加佐ノ岬倶楽部音楽療法研究所サイト

イミオン(意美音)サイト

Wikipedia

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする