感覚統合療法について2 感覚統合療法の実際

感覚統合療法とは

感覚統合療法(Sensory Integration Approach略してSI)は作業療法と教育心理学の博士号を持つアメリカの女性、ジーン・エアーズ(A.J.Ayres;1920~1988)が1960年、学習障害児や自閉症を含めた発達障害の子のための治療・訓練法として体系化したものです。1976年、九州リハビリテーション大学校の講師であった佐藤剛先生が日本初の感覚統合の理論と実際の研修を企画され、同大学校顧問のバイオレット・ウエルタ(Violet Huerta)先生によって10日間の研修会が実施されました。

感覚統合療法の内容

感覚統合障害を学習障害の原因として捉えており、感覚統合を強化することで学習能力を向上することができる療法です。この療法では、いろいろな体の動きを通して、感覚刺激に対して適切に対応する力を養う活動を行います。これには触覚、前庭感覚、固有受容覚の刺激を伴う活動や、子どもの発達上の必要な身体の動きを含む活動などもあります。この療法は一般に作業療法士によって行われ、、ハンモックに乗せて揺らしたり、平均台で均衡を保持させたり、子どもの体をブラッシングしたり、なでたりといったことを行います。作業療法士は個々の子どもの「感覚上のニーズ」に基づいて、その子どもに合わせた活動を選択しプログラムを作成します。感覚統合療法は直接子どもの神経系の機能に働きけ、神経系の可塑性を利用して、適応的行動の発達や学習能力の向上をもたらす、と考えられています。

重要なのは、子どもにどう反応、運動するかを教えたり練習するのではなく、本人なりの目的や楽しみを得るために活動させてあげることです。

さまざまな感覚刺激を与えるために、体を使う遊びを通して「揺れや回転を楽しむ(前庭覚)」「身体の筋力や関節からの情報を感じる(固有受容覚)」「情緒的な安定、自分の身体のイメージをつくる(触覚)」などの感覚を得るために、リニアグライダー、ローリングマットなどの遊具を用いて子どもに主体的に遊んでもらって治療を行います。

感覚統合療法に使われる遊具

代表的な感覚統合の器具としてはスイングするものがあります。これらは天井から吊るすタイプで、回転運動、軸性運動、軌道性回転などの加速度刺激による運動ができます。例としてはハンモック、ホーススイング、ポニースイング、オーシャンスイング、モンキースイング、チューブスイング、ブランコなど一人や複数人数で寝てたり、立ったり、座ったり、ぶら下がったり、またがったり、腹ばいになったり器具によって様々な姿勢で利用します。

トランポリンは跳ぶことで身体の左右のバランスが整っていきます。トランポリンから主に足底な度から入ってくる筋肉に対する圧迫刺激(固有感覚)と上下に揺れる刺激(前庭感覚)です。これらの刺激が自閉傾向の子どもにとって、通常満たされない感覚が満たされることによって行動上にも変化が見られるようです。対人関係の希薄さが改善され、アイコンタクトがとりやすくなるというセラピストもいます。

ボールプールは触覚防衛反応の改善、身体感覚の育成、平衡感覚の育成、感覚刺激を得るのに用いられます。

ボールプールは、カラフルなボールの中で子供たちが夢中になって遊びます。そしてボールプールは子どもの成長に良いといわれています。それは私たちのからだの様々な調節能力の発達過程には触覚が大きな役割を果たしており、全身にボールが触れることによる触覚刺激が脳に良い効果をもたらすといわれます。

ボールの上を歩いたり、ボールに埋もれたり、ボールを投げたり、ボールをかき分けて様々な動きをしたりします。ボールを投げるのにも、利き手でない方で投げたり、横向きや後ろ向き、頭上や下からなど様々な方向や角度で試し、投げる際にもその動きを工夫していくと身体能力が洗練されていくきっかけになります。

評価の仕方

作業療法士が遊び場面での行動観察や感覚統合検査、保護者の方や幼稚園や学校の先生からの情報収集などによって評価します。

感覚統合療法の実施法と施設環境

一般的には1コマ40分程度で10分程度の休憩、一日5~8コマ実施します。休憩の間に人や道具の入れ替えをします。参加人数は1~2人ですが、グループ療育の場合は7~8人程度。評価テストであれば1名の参加者で行います。施設スタッフやボランティア、親同伴などで子どもたちを支援します。

施設にはなるべく自然光が入ってカーテンで明るさが調節でき、照明器具は物を投げることもあるのでカバー付きが良いです。施設内の照明器具は光に敏感な子どものために調節機能が付いているとさらに良いでしょう。道具を保管するための倉庫があるのが望ましいです。

参考

itoh.com

奈良県総合リハビリテーションセンター

Pacific Supply

ショップ294

子どもとお出かけ情報サイト「いこーよ」

愛知県立名古屋特別支援学校

山口リハビリテーション病院

前田鍼灸接骨院スタッフブログ2013年

鳥取県立皆生養護学校 自立活動通信2,008年

NPO法人つみきの会 オーストラリア自閉症早期療育エビデンス・レビュー2006年

じゃじゃ丸トンネル迷路 広島大学医学部保健学科投稿意見 1997年

株式会社ゆう建築設計 感覚統合(SI)療法とその部屋の在り方について 2018年

立命館大学人間科学研究所 感覚統合療法アプローチの今日的課題~作業療法は何を支援できるのか?~

作業科学研究 第6巻第1号 2012年

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