発達障害と食欲
食欲については空腹という感覚がなかったり、食欲を全く感じなかったり逆に異常に感じる、あるいは食欲の差が激しく、食欲がないときはとことん食べず、ある時はとことん食べまくるといった特有の感覚を抱える人が多くいます。空腹の目安として、時刻を一番頼りにしている人もいます。
発達障害と食行動
あごのコントロールが下手だったり、上手く飲み込めないのでよくかまずに飲み込んだり、口いっぱいに詰め込むなどの困難を示す割合が多いです。そのような場合は、口にどのくらい入れれば良いか、何回かめばよいかを教えてあげましょう。
ご飯やおかず、汁物などをバランスよく食べようとしない子の場合、食べ物の味が混ざるのが嫌で、ご飯とおかずを一緒に食べられないと感じる子や、食べる順番や一緒に食べるつけ合わせなどにこだわりがある子も多くいます。一つのおかずを食べていると、他のおかずを忘れてしまって一つを食べ終わらないと次のおかずを食べない子もいますし、几帳面な性格のために、自分に割り当てられたおかずを一つずつきれいに食べきってから次のおかずに進みたいという子もいます。
どうしてバランスよく食べられないのかを聞いたり、観察してその理由を知っておくことは必要でしょう。
必要であれば優しく教えてあげてもよいでしょうが、残さずに食べる事ができているなら特になおす事はないと思います。
箸や食器の使い方が下手であったり、皮を向いて食べるものなど細やかな手指の動きを必要とする食べ物をうまく食べられず、しかたなく皮ごと食べるという食べ方を強いられる場合もある子やひどい猫舌で熱いものが食べられない子もいます。
学校給食ではゆっくり食べることができ、食べやすい大きさに切って食べ、残さず食べる事を強要せず、自分の状態に合わせて残すことも認めてもらうなどの配慮が必要でしょう。箸が上手に使えない場合、家の食事でリングのついたしつけ箸で練習したり、学校に自分のスプーンやフォークを持参して使用することを相談するのも良いと思います。
摂食障害との関係
摂食障害は治療が難しいことで知られていますが、一部の患者にはADHDや自閉症といった発達障害の傾向を持つことが分かってきました。胃の中を空にする、隠れ食い、会食を避けるという特徴がADHDに関係しており、これが摂食障害の早期介入のヒントになるという報告がありました。(第17回日本心療内科学会学術会2013年)また、ADHDで摂食障害を合併している際の症状として神経性大食症による過食やむちゃ食いが見られ、その結果による肥満の多さも報告されています。
自閉症スペクトラムの子で摂食障害を持っている場合、神経性食欲不振症が多いそうです。こだわりの強さなどのために、食事の種類やカロリーにこだわり、体重へのこだわり、食事の時間や食べ方、ときには儀式的な行動になるといった摂食障害の一般的な症状に自閉症スペクトラムと合併している場合はやせ願望や肥満恐怖からくる食事へのこだわりや、何度も繰り返し確認する行動、周囲に対して一方的な関わり方で巻き込む行動が加わるそうです。
なお自閉症スペクトラムと摂食障害の合併率は研究によって幅があり10~20%となっています。
参考
発達科学研究教育センター 発達障害を有する子どもの「食・行動」の困難に関する発達支援研究2015
M3.com臨床ニュース2013年
精神経誌 特集 摂食障害:病態・診断・治療の最前線2010年
うちの子流~発達障害と生きる 三角食べが出来ない理由