①数感覚:数量概念の障害
数を数として識別して読み取ること、それを認識して書けること。また数の一般的な性質を理解して数の順序を理解することです。この領域に障害があると、数の大小や数え方、四捨五入、10進法と時計の数え方の違いがわからないといった症状が現れると考えられます。
認知発達心理学の研究では、数字の読み書きで「読み」を先に身につけてその後に「書き」を身につけます。数概念の獲得は数字の「読み」に影響を受けています。2歳頃には1から10まで数字を唱える数唱ができるようになってきますが、「書き」ができるようになるのは、一般に4歳~5歳頃です。それ以前の段階で「擬似数字」を書き始めますが、それよりも前に数字とは何かを理解しています。
ひとつ、ふたつ、みっつなどの数詞を覚え「読み」ができるようになるには、聴覚認知能力や聴覚的短期記憶などが必要になり、1,2,3,といった数字を覚え「書き」ができるようになるには視覚認知能力や視覚的短期記憶などが必要になります。
順序としての数の性質を知る序数性の獲得には継次処理能力が必要となり、さらに量としての数の性質である基数性の獲得には同時処理能力が必要となってきます。継次処理能力とは物事を一つずつ処理をする能力のことで、同時処理能力は物事の全体を捉える能力をいいます。
計数の原理
物を数える能力を計数といい、その身につけるために必要な発達の過程を、アメリカの心理学者ゲルマンとガリステルは5つの原理として示しました。これを「計数の5つの原理」といいます。
1 一対一の原理…1つの物に1つの数詞を割り当てて数える。
例 本 本 本
いっさつ にさつ さんさつ と数える
2 安定した順序の原理…計数する際に用いる数詞は常に「いち」、「に」、「さん」、「し」と同じ順序で唱える。
例 いち、に、さん、し、ご
3 基数の原理…物の集まりを数えた時に、最後の数詞がその物の集まり全体を表す。
例 ミカン ミカン ミカン ミカン ミカン
1こ 2こ 3こ 4こ 5こ ← ミカンは全部で5こ
4 抽象性の原理…計数する物の色や形、大きさに関係なく数として正しく数えられる。
例 りんご くるま ひと イヌ
1こ 1だい ひとり いっぴき
5 順序無関係の原理…正しく数えれば、物の集まりはどのような順番で数えてもよい。
例 りんご
3こ
りんご りんご
1こ 5こ
りんご りんご
2こ 4こ
②数的事実の記憶
記憶して計算できる暗算ことで、20までの足し算や引き算、九す九の範囲で計算できる掛け算や割り算のことをいいます。
日本数学教育学会では足し算と引き算の双方において、結果が反射的に言えるようにしておくことが、以後の計算練習を発展的に導くために必要なこととしています。
1桁どうしの計算で、繰り上がりのわからない子どもの支援方法としては、10にすることを考えてもらいます。
例えば、6+7の計算であれば、6に何を足したら10になるかといえば4です。7は4+3にわけることができますから、6+7=6+(4+3)となって、6+4+3=10+3で13という答えを導くことが出来ます。
九九の計算をする場合は、5の段まで暗記して、それ以上の掛け算は5の段までに分解して足し算します。例えば6×9の場合、6×(5+4)となって、6×5+6×4=30+24で54という答えを導くことが出来ます。
参考
全国地域生活支援機構ブログ ディスカリキュア(算数障害)とは?
文部科学省
京都女子大学発達教育学部紀要 数表記・数詞・具体物の三項関係に関する論考(2016)
指折り克服
子供の発達を支える~発達.net~
パチパチ通信
国立特別支援教育総合研究所 発達障害教育推進センター
公益社団法人日本心理学会 特集:数から算数へ 算数障害とはいったい?
タマノモリ
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