子どもの感覚の発達
感覚統合療法を開発したエアーズは、子どもの感覚の発達を4段階に分けて示しました。ブロックを1段、2段、3段…と積むように感覚情報処理機能の発達も、基礎的な感覚の発達を基に徐々に高次の発達をとげて、学習能力や運動能力など学校で学ぶための必要な能力を獲得しているのです。
4段階 学校で学ぶために必要な能力 | ・学習能力、集中力 ・複雑な運動技術 ・注意力の調整 ・秩序がとれた運動 ・自尊心と自己制御(セルフコントロール) |
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3段階 知覚運動 協応 | ・聴覚による識別能力 ・話しことばと言語能力 ・視覚による識別能力 ・目と手の動作の協調 ・目的をもって行動する能力 |
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2段階 感覚-運動 統合能力 | ・自分の体の全体像や各部分の認識 ・両側反応(体の右側と左側を協調的に使用する能力) ・利き手の発達 ・行為機能(体を上手く使う能力) |
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1段階 基礎的な感覚系 | ・触る、食べる、触覚的心地よさ ・姿勢、バランスと動き ・体の各部分の配置 (視覚、聴覚など、その他の感覚) |
感覚統合とは
脳は、神経を通して外界や体内からの様々な感覚情報を一つに統合します。例えば「黒板をノートに書き写す」という動作を行っているとき、黒板からノートの書き込む個所に目を落とす(前庭感覚)、鉛筆を握る(触覚)、鉛筆を動かす(固有受容覚)というように一つの動作でも、様々な感覚刺激が子どもの脳に入力されます。入力された感覚刺激を、目的に応じて処理したり、組織立てたりすることを感覚統合といいます。
つまり、体内外から絶えず脳に入ってくる多くの感覚刺激を、脳は使いやすい形に処理して、環境に対して適応的な意味のある反応を起こしていくといった、脳における一連の処理過程のことです。
体で感じる感覚
味覚、嗅覚、視覚、聴覚などの感覚は知られているものの、それ以外にも次のような感覚があります。
触覚
皮膚で感じ、危険を察知したり、触って何かを確かめたり、痛みや温度、圧迫などの情報を脳に伝えます。
動きの感覚 前庭感覚
前庭感覚は、耳の奥の前庭器官で感じます。手足や頭の位置やその動きを感じ取り、その変化に対応できるような自動的な体や目の動きを生じさせます。
例 黒板を見た後ノートの書き込む個所に視線を戻すことが困難
サッカーボールを蹴るために片足を上げることが困難
体の位置の感覚 固有受容覚
体の各部がどんな位置にあるのかということを教えてくれるものです。
手足を動かす時に、その部分を見ていなくても思いのままに動かすことが出来るのはこの感覚がはたらいているのです。
感覚統合が十分に成熟していないと情緒面、行動面、対人コミュニケーション面、学習面、言語面などで問題が起こってきます。エアーズは「脳が消化不良を起こしている」、または「脳の中が交通渋滞になっている」状況と表現しています。
落ち着きがない
・周りの刺激にすぐに反応してしまう。
・注意や集中ができない
触覚、前庭感覚、視覚や音刺激に対して過敏
・触られることを極端に嫌がる
・ブランコなど大きく体が揺れたり、不安定になることを極端に怖がる。
・新しい場所が苦手
・ドライヤー、泣き声など特定の音が嫌い
感覚刺激に対して鈍さがある
・頭をたたいたり、自分から強烈な刺激を求める。
・体の痛みに気がつかない。
・声をかけても気がつかない。
動作の協調性に問題があり、不器用
・跳び箱、縄跳びやボール投げのような大きな運動が苦手
・ひも結びや橋の使い方など細かな運動が苦手
言葉の遅れ
・言葉が出ない。
・目が合わない、振り向かない。
・自分が思っていることをうまく言えない。
・助詞の間違い。
対人関係
・友達とうまく遊べない。
・ルールの理解ができない。
自分の行動を上手にコントロールできない
・我慢が難しい、待てない、すぐに怒るなど衝動的な行動をする。
・気分の切り替えができない、こだわりがある。
自分に自信が持てない
感覚統合の障害によって、様々な活動で失敗することが多くあります。周囲からは怠けていたり、甘えているといった見方をされることも多くあります。その結果、自信を無くして消極的になったり、逆に投げやりになったりすることもあります。
参考
itoh.com
奈良県総合リハビリテーションセンター
Pacific Supply
ショップ294
子どもとお出かけ情報サイト「いこーよ」
愛知県立名古屋特別支援学校
山口リハビリテーション病院
前田鍼灸接骨院スタッフブログ2013年
鳥取県立皆生養護学校 自立活動通信2,008年
NPO法人つみきの会 オーストラリア自閉症早期療育エビデンス・レビュー2006年
じゃじゃ丸トンネル迷路 広島大学医学部保健学科投稿意見 1997年
株式会社ゆう建築設計 感覚統合(SI)療法とその部屋の在り方について 2018年
立命館大学人間科学研究所 感覚統合療法アプローチの今日的課題~作業療法は何を支援できるのか?~
作業科学研究 第6巻第1号 2012年