音楽療法について⑦ アメリカの音楽療法

アメリカの音楽療法の歴史

アメリカでの音楽療法に関しては 1800年代初期に、医療現場の中で音楽が必要だと認識され、第二次世界大戦後の健康のためプラクティスとして成長し始められました。

第一次世界大戦と第二次世界大戦の直後、アメリカの退役軍人病院の医師や看護士たちは、入院する患者たちのためにミュージシャンが病院に来て演奏した際に、感情的な変化と、さらには肉体的な変化が起きていることに気づきました。

この後、退役軍人病院にミュージシャンを常時配置するべきだという動きが出ましたが、病院のミュージシャンたちには、医学や心理学の訓練と指導が必要であることが判明しました。

このような、いくつかの先駆者が道を開きながら、1944年(昭和19年)にミシガン州立大学において上級クラスにおける専門分野の教育課程(カリキュラム)として、音楽療法という科目が新規に開校され、世界で最初の「プロ音楽療法士」になるための正規の大学教育課程が始められました。

その後、1950年に音楽療法士連合(NAMT)が設立され、1971年には音楽療法のためのアメリカ連合という同様な組織が創設されました。

1998年には2つの団体はアメリカ音楽療法学会として1つになりAMTA(American Music Therapy Association)となりました。音楽療法士の資格もそれによって統一されました。

アメリカの音楽療法制度

アメリカでは米国認定音楽療法士(Board Certified Music Therapist = MT-BC)という音楽療法士の認定資格が存在しており、この資格を取得するには米国音楽療法学会の承認を受けた大学で学び、カリキュラムを修了する必要があります。音楽療法専攻の課程は、ほとんどの場合、州立大学などの総合大学にあります。ただしその数は非常に少ないようです。

MT-BCは国家資格ではありません。あくまでも民間の資格です。

さまざまな自治体や団体が独自の音楽療法士の民間資格を認定する日本とは異なり、アメリカでは音楽療法士の資格が米国音楽療法学会(Certification Board for Music Therapists=CBMT)というひとつの団体からのみ音楽療法に関する資格が出されていることが特徴です。

音楽療法士認定資格(アメリカでは「MT-BC」と呼ばれる)は、全米 50州で全国的に認められ、現在、アメリカには 7,289名の認定音楽療法士がいます。(2017年5月)

米国認定音楽療法士(MT- BC)になるには

アメリカの音楽療法は、資格取得を承認されている大学で一般教養として米国音楽療法連盟(AMTA)が音楽療法課程に必要としている心理学、以上心理学、特別支援教育、医学(生理学や解剖学など)を学びます。

音楽一般としては、個人レッスン、器楽(専門外の楽器)、ピアノ・キーボード、音楽史、民族音楽、作曲・編曲、和声、ソルフェージュ、アンサンブル(オーケストラ・室内楽・吹奏楽・コーラス…)、コンピュータ音楽などが含まれます。

音楽療法の学位を取得している認定の音楽療法士によって講義と演習がマネージメントされています。

音楽療法の全ての必修教科を履修した後、1040時間のインターンシップがAMTで義務付けられており、フルタイム(8時間)を週5日で6ヶ月間必要になります。

インターンシップでは2名の音楽療法士(スーパーバイザー)のもとで、もう1名の音楽療法インターンと共にフルタイムとして働き、インターンシップ終了後に独り立ちができるようにスーパーバイザーより徹底的に指導を受けます。

受け入れ先は学校、精神科やホスピスなどさまざまで、学生は書類選考や面接、小論文などで審査をされます。インターン中は様々な課題が与えられます。特に研究課題を見つけデータを分析し、リサーチを行うことが最も大きなものになります。

その後、試験を受験する資格が与えられます。試験はコンピュータで行われ、指定の試験日はなくCBMTから委託された会社に各自予約を取り、各都市の試験会場で受験します。

米国認定音楽療法士になるには、ピアノとギターが弾けないといけません。歌が歌えることも条件の1つです。多くの音楽療法士は、クライアントのニーズ応じて、ピアノやギター以外の楽器も使います。

そのため、「認定音楽療法士(MT-BC)」を名乗った場合、その人がどれだけのトレーニングを積み、どのような資格をもっているかということがはっきりとわかります

アメリカでの音楽療法の進め方

アメリカでの音楽療法は、ヘルスケアの規律として認識されており、ニーズを満たすための臨床的かつエビデンスに基づく、治療への音楽介入の使用を支援するための研究結果の上に行われています。

音楽療法は、個人またはグループと協力して音楽療法士がアセスメント(評価)を行い、そのニーズに対応する治療計画を立案します。音楽療法を受ける人たちは、その人たちの音楽的背景を必要としません。

そのため、各グループまたは個人にそれぞれの独自性をもたらして目標が個別化されるため、いわゆる「典型的な」音楽療法セッションというものは存在せず、完全な自由な形式のセッションもあります。

ホスピスケアとしての音楽療法

アメリカでは余命6カ月と診断されると、どのような病気の人でもホスピスケアを受けることができます。

そのため、亡くなる人全体の約45%がホスピスケアを受けるといわれており、ホスピスケアの現場でも、痛みの緩和やストレスの軽減などを目的とした音楽療法がよく取り入れられているようです。

音楽療法士の活躍場所

そのほか、学校などの教育現場や医療現場、高齢者施設、個人指導、子供センター、刑務所など、多岐にわたる場所で音楽療法が実践されています。そのような場所では、知的障害、行動とコミュニケーションに問題を持つ場合には、社会的および精神的なニーズや不安への対処に対処しています。

企業の音楽療法士たちも、企業のリラクゼーションを強化し、従業員の不安を軽減するために大企業に働いています。

参考

http://yumikosato.com/

https://nofia.net/

音楽療法のホームページ ラララ ミュージックセラピー

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