WISC-Ⅲとは
ウエクスラーが開発した知能検査のうち、子ども(5歳~16歳)を対象とした検査の第3版です。子どもの知能発達の状態をプロフィールで表示し、個人内差(個人の中での得意、不得意)が見られます。
WISC-Ⅲの数値の意味
(1)全検査IQ(FIQ)
全般的な知的発達の水準を把握するものです。WISC-ⅢのIQは全て偏差IQで、平均が100、標準偏差が15に設定されています。知能水準の段階としては表のとおりです。実際の解釈には、測定標準誤差を考慮する必要があります。また、言語性IQ(VIQ)と動作性IQ(PIQ)の間に著しい差、下位検査の評価点(SS)に著しいばらつきがある場合は、慎重に解釈します。
表 知能水準の分類
IQ | 分類 | 理論上の
割合(%) |
130以上
120~129 110~119 90~109 80~ 89 70~ 79 69以下 |
非常に優れている
優れている 平均の上 平均 平均の下 境界線 精神遅滞 |
2.2
6.7 16.1 50.0 16.1 6.7 2.2 |
(2)言語性IQ(VIQ)と動作性IQ(PIQ)
検 査 | 概略 | 測定される主な能力 | |
I
Q |
言語性 | 言語性IQ(VIQ)は、主に言語性の脳力や聴覚-音声処理過程の能力を測定する指標であり、過去の学習経験を得られた判断や習慣などの結晶性知能との関係が深いとされています。 | 耳からの情報をことばによって応答する力 |
動作性 | 動作性IQ(PIQ)は、動作性能力や視覚-運動処理過程の能力を測定する指標で、また、新しい状況に適応する流動性知能との関係が深いとされています。 | 目からの情報を動作によって応答する力 |
言語性IQ(VIQ) > 動作性IQ(PIQ) → 言語性優位の可能性 (VC > POで確定)
言語性IQ(VIQ) < 動作性IQ(PIQ) → 動作性優位の可能性 (VC < POで確定)
(3)群指数
知能により分析的な解釈を可能にする指標であり、以下の4つがあります。
表 4つの群指数と、各群指数で測定される主な能力
検 査 | 概略 | 測定される主な能力 | |
群指数 | 言語理解
(VC) |
言語的な情報や、自分自身がもつ言語的な知識を状況に合わせて応用できる能力
この指標得点は、ことばの概念の理解、ことばに関する推理の力、日常生活の中で得られた言語的な知識を示しています。この指標得点が高いと、普段の生活の中で、会話や文章などのことばによる情報をきちんと理解し、その理解をことばで表現する力が高いと言えます。 |
言語意味理解・言語的知識・言語的推理・言語表現 |
知覚統合
(PO) |
視覚的な情報を取り込み、各部分を相互に関連付け全体として意味あるものへまとめ上げる能力
この指標得点は、目で見た情報を統合して推理を働かせる力と、視覚的なパターンを識別しとらえる力を示しています。 |
視覚的刺激の統合・非言語的思考・非言語的推理・同時処理 | |
注意記憶
(WR) |
注意を持続させて聴覚的な情報を正確に取り込み、記憶する能力
この指標得点は、耳で聞いた情報を保持し、求められた情報になるように頭の中で操作する力を示しています。 |
注意の範囲・聴覚的な短期記憶・聴覚的な系列化・継次処理・聴覚的情報の記号化 | |
処理速度
(PS) |
視覚的な情報を、事務的に数多く、正確に処理していく能力
この指標得点は、単純な視覚的情報を、素早く正しく区別して見極めていく力を示しています。高い得点を取るためには、注意力や目で見た情報の記憶力も必要です。 |
反応の速さ・視覚的短期記憶・視覚的情報の記号化 |
表 下位検査の概略と測定される主な能力
検 査 | 概略 | 測定される主な能力 | |
下位検査 | 知 識 | 日常的な事柄や場所、歴史上の人物など、一般的な知識に関する質問をしてそれに言葉で答えます | 一般的事実についての知識量 |
類 似 | 共通の概念をもつ2つの言葉(刺激語)を口頭で示し、どのように類似するか答えます | 論理的なカテゴリー的思考力 | |
算 数 | 算数の問題を口頭で指示し、子どもは紙や鉛筆を使わず暗算で答えます | 計算力 | |
単 語 | 単語(刺激語)を口頭で指示しその意味を答えます | 言語発達水準・単語に関する知識 | |
理 解 | 日常的な問題の解決と社会的なルールなどについての理解に関する一連の質問をして、口頭で答えます | 実際的知識を表現する力・過去の経験や既知の事実を正確に評価する力 | |
数 唱 | 数字(数系列)を読んで聞かせ、同じ順番で(順唱)あるいは逆の順番(逆唱)でその数字を答えます | 聴覚的短期記憶 | |
絵画完成 | 絵カードを見せ、その絵の中で欠けている重要な部分を指さしか言葉で答えます | 視覚刺激に素早く反応する力・視覚的長期記憶 | |
符 号 | 幾何図形(符号A)または数学(符号B)と対になっている簡単な記号を書き写します | 指示に従う力・事務処理の速度と正確さ・視覚的短期記憶 | |
絵画配列 | 短い物語を描いた何枚かの絵カードを決められた順序に並べてみせ、物語の意味が通るように並べ替えます | 結果を予測する力・時間的な順序の認識ないし時間概念 | |
積木模様 | モデルとなる模様(実物またはカード)を提示、同じ模様を決められた数の積み木を用いて作ります | 全体を部分に分解する力・非言語的な概念を形成する力・自分が考案した空間構想に対象を位置づける力 | |
組合せ | ピースを特定の配列で提示し、それを組み合わせて、具体物の形を完成します | 感覚運動のフィードバックを利用する能力・部分間の関係を予測する力・思考の柔軟性 | |
記号探し | 左側の刺激記号が右側の記号グループの中にあるかどうか判断し、回答欄に〇をつけます | 視覚的探索の速さ | |
迷 色 | 迷路問題を解きます | 視覚的パターンをたどる力・見通し能力 |
IQとは 「知能・能力・理解力」の指数
同年齢の子どもに比べてどのくらいの力があるのかが分かります。平均を100とし、
85~115の間に68.2%70~130の間に95.4%の子どもが入るよう作られています。
参考
岩手県立総合教育センター教育支援相談担当ホームページ