遺伝子による原因
自閉症スペクトラム障害の一卵性双生児における一致率は60~90%と高く、二卵性双生児では0~24%と低いものになります。
また男子は女子と比べると4倍と高いものになります。
さらに、自閉症の子どもがいる場合に第2子が自閉症になる危険率は、一般家庭に比べて45倍になる事が知られています。
これらの事から、遺伝要因の締める割合が大きいと考えられています。
シナプス伝達制御タンパク質
2017年、杏林大学医学部の発表によると、シナプス伝達を制御するタンパク質STX1Aの遺伝子が自閉症スペクトラム障害患者の一部で欠損していることが見出され、その遺伝子の発現量の変動が自閉症スペクトラム障害に関連があることが明らかになりました。
シナプスを形成するタンパク質
シナプス膜に存在するタンパク質がニューロリギン(Neuroligin:NLGN)で、その結合分子がニューレキシン(Neurexin:NRXN)、シャンク(Shank)から構成されるNLGN-NRXN-Shank経路で、複数の自閉症関連遺伝子が同定されています。
つまり、この経路の異常は自閉症の発症と関連していると考えられています。
シャンクタンパク質はホーマータンパク質とシナプス付近で網目構造を作りシナプスを巨大化させることで、神経細胞が正常に発達することが2009年に日本・理化学研究所の研究で発見されています。
ニューロリギンタンパク質の遺伝子
2003年、フランス・パスツール研究所認識機能・ヒト遺伝学の研究で、自閉症と自閉症スペクトラム障害を兄弟を持つ2つの家系で、X染色体のニューロリギン3,4(NLGN3,4)という2つの遺伝子の変異が報告されました。これはシナプス形成時にシナプス接着タンパク質として機能するとともに、シグナル伝達に重要な遺伝子です。
2017年、自閉症や自閉症スペクトラム障害の発症に関与する可能性がある遺伝子として、新たにニューロリギン1を同定しました。
これは人に5つあるニューロギン遺伝子の1つのシナプス関連遺伝子で、この変異遺伝子が自閉症患者から発見され、これが興奮性のシナプスに存在し、シナプスの形成や維持に関わっているニューロリギン1タンパク質の減少などの異常を引き起こし、またシナプス形成不全などの機能喪失を引き起こしていることが分かりました。
さらに自閉症患者で発見された変異遺伝子を導入したモデルマウスを作成したところ、変異を持ったマウスは社会的コミュニケーションや空間記憶能力などに異常を示すことが分かりました。
これらの研究は自閉症は遺伝子変異で生じること、自閉症と自閉症スペクトラム障害は同一遺伝子変異で生じうること、自閉症はシナプス機能の異常によることを示すものです。