DIRについて(前編)

DIR
(Developmental Individual-Deference Relationship-Based)

スタンレー・グリーンスパン教授(Greenspan I Stanly)の研究によると、「DIR」というアプローチによって自閉症などの発達障害を持つ子どもの80%以上が、社会性のスコアで生活年齢の最大2歳上のレベルまで到達しました。

DIRとは

DIRモデルは、自閉症スペクトラムなど発達障害児に対して、医療や教育の専門かと両親で包括的に評価を行って、それぞれの子どものもつ課題や長所に合わせた介入プログラム開発を提供するものです。

DIRの目的

DIRの目的は、社会的、感情的、知的能力のための健全な基盤を築くことです。

スタンレー・グリーンスパン教授について

スタンレー・グリーンスパン教授(1941~2010)は、1941年ニューヨーク・ブルックリン生まれで少年時代は論蔵アイランドに転居し、1966年にイエール医科大学を卒業。

アメリカ・ジョージワシントン大学医学部の精神医学、行動科学、小児科学の臨床教授、発達及び学習障害の学際的協議会(Interdisciplinary Council on Developmental and learning Disogers)の会長、ワシントン精神分析協会の児童精神分析スーパーバイザー、国立精神保健研究所・精神保健研究センター長、臨床乳幼児八達プログラムのディレクター、「3歳までの精神保健と発達障害の基準(ZERO TO THREE)」国立乳幼児家族センターの創立者で会長でした。

アメリカ精神医学会のイッテルソン(Itte Ison)賞受賞、アメリカ矯正医学会イッテルソン賞受賞をはじめ多くのアメリカ国内の賞を受賞しています。彼は2つのイッテルソン賞を個人で受賞したただ一人の研究者で、アメリカ精神医学に対する貢献によって、ストレッカー(Strecker)賞も受賞しています。

心疾患のため州ベセスダの病院で2010年4月27日、68歳で亡くなりました。

邦訳として、「こころの病への発達論的アプローチ」(創元社)、「自閉症のDIR治療プログラム」(創元社)、「子どもの臨床アセスメント」(岩崎学術出版社)、「ADHDの子どもを育むDIRモデルにもとづいた関わり」(創元社)

DIRの特徴

D=Developmental(子どものそれぞれの発達に応じた)

・発達段階に合わせた関わりをします。

これには、子どもたちが参加し、落ち着いて過ごすように管理され、他者と関わり合って感情的、社会的影響にもとづく様々なコミュニケーションをはじめ、対応する能力を養います。連続した対話の連続した流れや、アイディアを使ってニーズを伝え、創造的に考えて遊びや論理的な方法でアイディア同士の橋渡しをします。

9つの発達段階

1 00~03ヶ月  注意の共有と情動の調整

最初の数ヶ月で、自分の内的感覚に気づき、そこから生まれる感情を周りに伝えることを学びます。伝えるためには、周囲の世界への注目が必要であると同時に、周囲の人間も欲求を満たすために努力する必要があります。つまり、大人と赤ちゃんの注意を合わせていく必要があります。早期の感覚刺激が不快なものなら、外界に無関心になります。感覚処理能力には個人差があるため、赤ちゃんの最も好む刺激を探していきます。

2 02~05ヶ月  周囲との関わり

大人と赤ちゃんの注意があっていくと、感情的な相互交流が始まり、やりとりが豊かになっていきます。ここから知能を獲得する基盤が形成され、親の声の調子や表情から、その感情や意図を読み解くことができます。パターンを読み取り、読み取ったことを意味に応じてカテゴリーに分類することも可能になっていきます。

3 04~10ヶ月  双方向コミュニケーション

自分の感情を、声や身振りや表情などの何らかのシグナルに変換し、周囲に伝えるようになります。親は赤ちゃんからのシグナルを出来るだけ正しく読み取って反応する必要があります。このような生き絵画双方向のコミュニケーションにつながり、言葉がなくてもコミュニケーションができるようになります。この時期には、論理と現実感覚が芽生え、大人と同じような理にかなった因果関係のあるコミュニケーションをはじめます。自分の行動と他人の行動を区別するようになり、自分の意図や目的を実感するにつれて、固有の医師も芽生えていきます。自我の誕生です。

4 10~18ヶ月  問題を解決していく

双方向のコミュニケーションができるようになると、身近な問題を解決できるようになります。親との感情的な関わりの中で自分の感情をコントロールできるようになっていきます。感情をシグナルで伝えたり交渉したりすることで、自分の意図を満たしてもらうからです。満たされなくても、慰めてもらえば満足します。自我の意識が少しずつ膨らみ、自分の規定することも始まります。自分が確立することで、自分とあなたという認識や、自分と他人との境界が形成されていきます。物理的側面についての理解も進み、次を予測し適切な行動ができるようになります。

5 18~30ヶ月  言葉を身につける

言葉を理解し、日常で使用できるようになるには、複雑な感情を様々なシグナルで変換し、相手に適切に伝えることができるようにならなければなりません。シグナルに変換された感情は、言語の発達につながり、より高度な知能レベルに発達していきます。感情をシグナルに変換することで、行動と感覚を分けて、イメージを言葉として心に持つことができます。つまり感情を神経細胞の電気的刺激に変換し、言葉の記憶として保持することができます。そのためには、感情的に関連のある体験ややりとりを通じてイメージに意味が与えられ、感情が言葉に置き換えられ、言語能力が発達していきます。自分の要求や感情を行動や言葉と結び付けることが困難な場合、この段階に到達するのに多大な困難を伴います。

6 30~42ヶ月  感情的思考、論理的思考、現実感覚

論理的な思考が発達し、内省ができるようになり、自分の考えと他人の考えを論理的に結び付けることが可能になります。
自分の周りに起こっている出来事を、論理的に理解し整理していくことは、膨大な新しい現実を理解するために欠かせないことです。内的な感情体験を外的な出来事と結び付けるようになると同時に、それらを区別することもでき、主観的な体験と客観的経験を分けることができるようになります。
この論理的思考によって、議論や数学や化学などの新しい技法を身につけることができます。