弁別刺激と弁別訓練

弁別刺激(Discriminative stimulus:SD)

多くの行動は、行動に後続する好子や嫌子によって増減します。しかし、行動の直前の刺激である「先行刺激」もまた重要な働きをします。

電話が鳴ると電話に出ますが、鳴っていない時は出ません。青信号では道路を渡りますが、赤信号では道路を渡りません。電話に出る、道路を渡るという行動が先行刺激に影響を受けています。このように、先行刺激が特定の行動を出現させやすくなるとき、この先行刺激を「弁別刺激」といいます。

弁別刺激の定義は「過去においてあるオペラントが生起したときに同時に存在し、かつ、そのオペラント強化の必要条件となったことがある環境事象のこと」です。

ある特定の環境事象すなわち弁別刺激が存在するときにのみ、オペラントの出現確率は高く、それ以外の時は低い。このようなときオペラント条件づけでは、その弁別刺激が、オペラント反応を統制しているといいます。つまり、弁別刺激が出現すると、その下ではその特定のオペラントの出現確率が高まるという事です。

簡単にいえば、その刺激がある時には、ある特定の反応が強化されたり弱化されたりするような刺激を「弁別刺激」と言います。弁別刺激が形成されることを「弁別」(Discrimination)といいます。

逆に、その刺激がある時には、ある特定の反応が強化も弱化もされないような刺激はSΔ(es-delta)と言います。

弁別訓練(Discrimination Training)

特定の刺激には特定の反応を示すが、類似する刺激には同じ反応を示さないとき刺激を弁別しているといえます。しかし日常生活においては同じ刺激でも別の反応を示すこともあります。これは、時間や場所あるいは文脈といった別の刺激が弁別刺激として働いています。何が弁別刺激になっているかは実際に調べてみなければわからないことも多いです。

ある刺激が提示されている時、ある特定の反応を強化または弱化し、別の刺激の下では、その反応を消去または、弱化からの回復をさせることを「弁別訓練」といいます。

継次弁別訓練(Successive discrimination training)と
同時弁別訓練(Simutaneous discrimination training)

弁別行動の基礎研究の多くは動物によって行われており、その時に用いられる代表的な手続きには「継時弁別訓練」と「同時弁別訓練」があります。

継時弁別訓練は、VIスケジュール(変動時隔スケジュール)と消去からなる多元スケジュールが用いられます。特定の刺激が提示されている時はVIスケジュールによって反応が強化され、別の刺激が提示されている時の反応は強化されず消去が行われます。この時、反応が強化される刺激は「正刺激S+」、反応が消去される刺激は「負刺激S-」と呼ばれます。この訓練によって、正刺激には反応し負刺激には反応しないという弁別が完成します。

同時弁別訓練には複数の刺激が同時に提示されます。並列的に強化スケジュールが同時進行するものは、「並立強化スケジュール」と呼ばれます。また、並立スケジュールにおいて強化子が随伴提示された選択肢に対して、強化後、選好が大きく偏る現象を「選好パルス」といいます。

拡張試行と大量試行

拡張試行(Expanded Ttail:ET)

弁別刺激を意図的に習得済み課題と織り交ぜながら出す方法を拡張試行と言います。

大量試行(Mass Trial:MT)

連続して弁別刺激を5~8回出して課題を修得させる方法で、新しい課題や習得困難な課題に用いられます。