K-ABCとは

K-ABCって

K-ABCとは、Kaufman Assessment Battery for Childrenの頭文字の略称です。認知心理学の影響を受けて作成された知能検査で、1985年、アメリカの心理学者であるカウフマン夫妻(Alan S.Kaufman , Nadeen L.Kaufman)によって開発されました。

Batteryとあるように、複数の下位検査で構成されたアセスメントツールとなっています。

問題解決に必要な情報処理能力と獲得された知識・技能を測定するもので、情報処理能力はさらに継続的情報処理(言語的・数理的能力)と同時情報処理(空間的・直感的能力)に分けられます。対象は26カ月から16歳までです。

 

日本版KABC-

日本版KABC1993年に改訂した個別式認知能力検査です。26カ月から1811カ月までの子どもを対象としています。日本の心理・教育アセスメントの現状を踏まえ、米国版KABC-Ⅱとも異なる構成になっています。下位検査が20あって、2つのモデルによって検査結果を解釈します。

 

K-ABCの目的

KABCは、認知処理過程及び処理能力を計測することを目的とした検査です。

 

特徴

・何を教えるべきかのみならず、何をどのように教えるかに重点を置いていて、指導に生かす

 ことが出来ます。

・例題や練習問題を設けることによって、課題を理解してもらうチャンスを作り、より妥当性の高い検査を実施することが出来ます。

・検査用具が工夫されており、3冊のイーゼルによる検査、イーゼルの表に子ども用の提示刺激、裏に教示内容が明示されています。

 

1 カウフマンモデル

11の下位検査によって4つの認知尺度、さらに9の下位検査で4つの習得尺度を構成します。ルリアの神経心理学理論における脳の処理機能としての認知能力と習得度(認知能力を活用して環境から獲得した知能及び読み・書き・算数といった基礎的学力)を別に位置づけています。

認知総合尺度(4尺度)

全般的な認知処理能力を示しています。ここでは、知識や技能の量ではなく、新しい知識や技能を獲得していく時に必要となる基礎的な力を示しています。

・継次尺度

 連続した刺激を一つずつ順番に処理する力を示しています。例えば、複数の音声や動作を聞こえた通り、または見た通りの順番でどの程度まねることができるか等の力を示しています。この尺度が高いと、聴覚処理の能力が高い傾向にあります。

→ 数唱、語の配列、手の動作

・同時尺度

 複数の刺激をまとめて、全体として捉える力を示しています。複数の視覚的な情報をまとめる力を示しています。この尺度が高いと、視覚処理の能力が高い傾向にあります。

→ 顔さがし、絵の統合、近道さがし、模様の構成

・計画尺度

課題を解決するために、適切な方法の選択・決定、実行、そして、その実行が適切に行われているかどうかをチェックする等の力を示しています。

→ 物語の完成、パターン推理

・学習尺度

 新しいことを学ぶ力がどの程度かを示しています。視覚的な情報と聴覚的な情報の組み合わせを学習していく力やそれを保持する力を示しています。

→ 語の学習、語の学習遅延

 

習得総合尺度(4尺度)

習得総合尺度は、語彙、読み、書き、算数という領域の総合的な力を示しています。この尺度は必ずしも学力と一致するものではありませんが、基礎的学力の一部を示していると言えます。

・語彙尺度

語彙に関する力がどの程度かを示しています。具体的には、語彙に関する知識や理解力及び表現力等の力を示しています。

→ 表現語彙、なぞなぞ、理解語彙(語彙をどれだけ分かっているか)

・読み尺度

文字の読みや分の理解力等がどの程度かを示しています。具体的には、平仮名やカタカナ、漢字がどの程度理解できるのかを示しています。

→ ことばの読み、文の理解

・書き尺度

 文字の書きや作文力がどの程度かを示しています。具体的には、平仮名やカタカナ、漢字がどの程度書けるのか、また短文はどの程度書けるのかを示しています。

→ ことばの書き、文の構成

・算数尺度

計算力や数的な処理の力を示しています。具体的には、加減乗除の計算や算数・数学におけ 

る文章問題

→ 数的推論、計算

 

2 キャッテルホーンキャロル(CHC)モデル

CHC総合尺度

CHC総合尺度は、知的発達の総合的な力を示しています。「絵の統合」を除くすべての検査を合わせた総合的な力を示しています。 これは、キャッテル、ホーン、キャロルの3名の頭文字を取ったものです。

 

・長期記憶と検索尺度 Glr

学習した情報を記憶し、必要に応じて、その情報をひき出す力を示しています。視覚的な情報とその名称に関する記憶と検索の力を示しています。

→ 語の学習、語の学習遅延 

・短期記憶尺度 Gsm

短時間の記憶に関する力を示しています。具体的には、聴覚的な刺激や視覚的な記憶、また聴覚的な刺激を視覚に変換し、記憶する力を示しています。

→ 数唱、語の配列、手の動作

・視覚処理尺度 Gv

視覚的な情報を正しく捉え、頭の中で変換したり推理したりする力を示しています。視覚情報のマッチングや再生等の力を示しています。

→ 顔さがし、近道さがし、模様の構成

・流動性知能尺度 Gf

推理力や応用力を用いて、柔軟に新奇な課題を解く力を示しています。複数の資格刺激から推理して、適切なものを選択する力を示しています。

→ 物語の完成、パターン推理

・結晶性知能尺度 Gc

これまでに修得してきた知識の量を示しています。日常で用いられる語彙の理解や表現等に関する力を示しています。

→ 表現語彙、なぞなぞ、理解語彙

・量的知識尺度 Gq

蓄積された数学的知識及び数学的推論に関する能力です。四則演算や文章題等の算数の基礎的な力を示しています。

→ 数的推論、計算

・読み書き尺度 Grw

文字や文の読み書き及び文章の読解能力に関する力を示しています。国語の基礎的な学力の程度を示しています。

→ ことばの読み、ことばの書き、文の理解、文の構成