オキシトシンとは

オキシトシンの知られている作用

オキシトシンはホルモンの一つで、大脳と中脳の間にある間脳の視床下部という部分からぶら下がっている脳下垂体の後ろにある後葉という所から神経分泌細胞がオキシトシンをつくりだして血液中に分泌されます。

オキシトシンは1906年ヘンリー・デールらによって妊娠と出産のプロセスを促進する物質として発見され、その強い子宮の収縮作用からギリシャ語でoxy(迅速な)+tocin(出産)と命名されました。また、その作用から産婦人科領域では陣痛促進剤として使用されてきました。

1910年には乳汁分泌促進効果が発見され、1953年にアメリカのヴィンセント・デュ・ヴィニョーらによって9個のアミノ酸からなることが見出されて、1954年に人工合成に成功、1955年にノーベル化学賞を受賞しています。

鎮痛効果は出産、産褥時期の女性においてのみならず、アメリカでの報告では男性でも鎮痛効果が確かめられています。

近年発見されたオキシトシンの作用

近年では、社会行動におけるオキシトシンの役割が注目を集めており、人手の研究も盛んに行われています。夫婦の絆の形成、母子の絆の形成、母性行動の促進、社会記憶の促進、相手の感情の認知の向上、仲間の信頼感の増加、敵対者に対する排他的行動、社会的緩衝のような社会行動に、オキシトシンが重要であることが明らかになってきています。

2000年、アメリカ・エモリー大学行動神経科学センターのトーマス・インセルらがオキシトシン合成酵素の遺伝子をノックアウトしたオキシトシン欠損マウスは、相手を認識したりしていないことを示すデータを発表しました。

2005年には、スイスチューリッヒ大学神経系在学研究所のコスフェルドらの研究によって、オキシトシンのにおいを嗅ぐと、信頼感が高まるという研究結果が発表されました。これは被験者に投資ゲームを行わせることで、オキシトシンを嗅ぐと他人への信頼感が高まって自分の金を託すようになるというものです。オキシトシンを嗅いだ被験者の45%が自分の金に関することで高度なレベルと考えられる信頼感を示し、偽薬を嗅いだ被験者グループは21%にとどまったという結果でした。

さらにオキシトシンは心臓でも作られることが分かっており、循環系の調整に関わって、心拍数や血圧の上昇を抑制し、新機能を正常化させることが出来ます。その濃度は脳でつくられるオキシトシンと同じだそうです。

また学習および記憶過程にも関与していることが明らかになり、および抗炎症、ストレス緩和ならびに摂食抑制作用なども有することが示唆されています。