アスペルガー症候群は広い意味での「自閉症」に含まれるひとつのタイプで、幼児期に言語発達の遅れがなく比較的わかりにくいですが、成長とともに対人関係の不器用さがはっきりすることが特徴です。これまでは学童期以降あるいは成人後に初めて診断を受けることが少なくなかったのですが、幼児期に診断を受けるケースも増えてきました。早い時期から子どもの特徴を理解し、ニーズに合った適切な支援につなげていくことが、子どもの発達には望ましいことです。
アスペルガー症候群とは
アスペルガー症候群は、広い意味での「自閉症」のひとつのタイプです。最初に症例を報告したハンス・アスペルガーというオーストリアの小児科医の名前にちなんでつけられました。アスペルガー症候群は、自閉症の3つの特徴のうち「対人関係の障害」と「パターン化した興味や活動」の2つの特徴を有し、コミュニケーションの目立った障害がないとされている障害です。言葉の発達の遅れがないというところが自閉症と違うところです。知的発達に遅れのある人はほとんどいません。
広い意味でのアスペルガー症候群
高機能自閉症・非定型自閉症などは、厳密にはアスペルガー症候群と区別されますが、「知的発達に明らかな遅れがないが、自閉症の特徴を有している」という点では共通しています。そのため一般的には「アスペルガー症候群」は、それらの人たちも含めて広い意味で使用される傾向があります。以下で述べる特徴等は、それらの障害にも当てはまります。
また「高機能」というのは「知的発達に明らかな遅れがない」ことを表し、自閉症状の程度(現れ方)とは無関係な用語です。「高機能」でも自閉症状の強い人々もいますので、決して支援が少なくていいわけではなく個人にあった支援が必要です。
アスペルガー症候群の特徴
アスペルガー症候群の人々には、「表情や身振り、声の抑揚、姿勢などが独特」「親しい友人関係を築けない」「慣習的な暗黙のルールが分からない」「会話で、冗談や比喩・皮肉が分からない」「興味の対象が独特で変わっている(特殊な物の収集癖があるなど)」といった特徴があります。このほかに身体の使い方がぎこちなく「不器用」な場合が多くみられます。
幼児期のアスペルガー症候群の特徴
アスペルガー症候群の子どもは、言語や知能の発達に遅れがないため、これまで幼児期に気づかれることがあまりありませんでした。しかし近年では、幼児期にみられる特徴が少しずつわかってきました。「ひとり遊びを好む」「人とするごっこ遊びが広がりにくい」「同じ遊びを繰り返す傾向が強い」「行動がパターン化し融通がきかない」などです。保育園や幼稚園では「他の子どもにあまり関心がない」「集団で遊ばない」などの特徴がみられます。
このような子どもは集団生活ではストレスをためやすいので、できる限り早期から子どもの特徴を理解し、その子どもにあった支援を専門家に相談して、家庭や地域と連携して行うことは、子どもが安心して力を伸ばしていくことにつながります。
アスペルガー症候群の発生頻度
狭い意味でのアスペルガー症候群は約4000人に1人と言われています。しかし知的な遅れがなく言葉の流暢な非定型自閉症の人々も含めた広い意味での「アスペルガー症候群」の発生頻度は自閉症よりも多いことが知られています。
性別では男性に多いですが、女性でも診断につながらずに対人関係の悩みを抱えている人々が、これまで考えられていたよりは多いことが分かってきています。
アスペルガー症候群の原因と治療
原因や治療については、自閉症と共通することが多いため、自閉症の項をご参照ください。
厚生労働省「e-ヘルスネット」より