ロヴァス・プログラム(ロバース法)とは

ロヴァス・プログラム

ロヴァス・プログラムは1964年からカリフォルニア大学ロスアンゼルス校(UCLA)医学部のオレ・イヴァ・ロヴァス(Ole・Ivar・Lovaas)教授の指導の下で、カリフォルニア大学ロサンゼルス校の早期自閉症プロジェクトによって開発されたものです。

1970年からこれまでの方法をさらに発展させ、「早期自閉症プロジェクト(Young Autism Project)をスタートさせました。
1987年に発表された論文によると、ロヴァス博士らは2歳から3歳の自閉症幼児19人に対して、ABAに基づく週平均40時間の1対1の療育を、2年以上にわたって施しました。
前半は大学から派遣された学生セラピストが、親とともに家庭で療育を行い、後半はセラピストの付き添いをつけて徐々に健常児の集団に入れていきました。
その結果、子どもたちが小学校に入った時点で行われた追跡調査で、19人中9人(47%)が知的に正常になり、付き添いなしで小学校の普通学級に入学することができました(治療前に知的に正常だった2人を含みます)。
2005年には、ウィスコンシン州の研究グループが、ロヴァス博士の研究をモデルにして、2歳から3歳の自閉症児23人(IQ35~75)に平均30~40時間の過程療育を2年以上施したところ、平均IQが51~76に上昇し、11人(48%)が、知的に正常域に達しました。
彼らは「およそ平均的な学業成績を上げ、流暢に話し、友達と普通に遊んでいる。」とのことです。他にも多くの研究で効果が確かめられています。
ロヴァス法として広く知られ、ABA早期家庭教育とも呼ばれますが、ロヴァス自身は早期集中行動介入(EIBI)と呼んでいたそうです。

ロヴァス法の手順

集中的な行動的介入技法を用いて、言葉の遅れのある2~3歳の自閉症の子どもたちを2~3年にわたって治療します。

準備段階として、行動を変化させるための事前の物理的な工夫をします。その例を以下に挙げます。

・つなぎの服を着せることで、性器いじりを難しくする。
・ドアに二重ロックをして、家からの脱走を防ぐ。
・踏み台を撤去することで、高いところに登れなくする。
・教室からの脱走を防ぐために、なるべく入り口から遠い席に座らせる。

これらは問題行動を起こりにくくします。例えばドアを二重ロックにすると子どもがドアを開けようとしても開かないので、強化が得られません。つまりドアを開けようとする行動が消去されます。
事前の物理的な工夫の多くは、自動的に消去を引き起こすための事前の仕掛けと考えられます。

プログラムの初期段階では、週40時間の1対1のDTTを通して、自助スキルや受容的言語スキル、動作模倣や音声模倣、適切な遊びの基礎を教えることに重点が置かれます。
親にも訓練が施され、子どもが起きている時間のほとんどで介入が行えるようにします。
また、2語文から3語文、過去と現在・未来から曜日、時間の理解、数の数え方から足し算となっていきます。

介入の第2段階では、表出的な言語と友だちの相互的な遊びに力点が置かれます。
さらに段階が進むと、家庭や学校で、初期のアカデミックスキルや、ソーシャルスキル、因果関係、観察学習などが指導されます。
例えば会話での質問には「これ何?」「誰?」「どこ?」「何してる?」などの質問に答えることを教え、進んで行くと「どうして?」「どうなる?」といった質問に答えることが加わっていきます。

この治療法ではロヴァス・インスティテュートで訓練を受けた療育者の参加を前提にしています。
攻撃行動や自己刺激行動は、無視やタイムアウト、シェイピングの技法を用いて、コントロールされます。
したがって、治療的強者への依存が、様々なコミュニティ場面への治療効果の般化を妨げることもあり得ます。

アメリカ学術研究会議(National Reseach Council:NCR)によると、週25時間でも著しい成果があることを認めています。

参考図書として、イヴァ・ロヴァス著、中野良顕訳「自閉症児の教育マニュアル」ダイヤモンド社(2011/8/26)があります。