行動契約(behavioral contract)とは
「行動契約」とは、行動することを他の人と契約することです。
非常に強力に行動を促し、継続させることが出来ます。
行動契約には次のものが含まれます。
1 実際に取り組む具体的な行動(またはパフォーマンス)
例 毎日、読書を15分以上する。
毎日5kmランニングする。
2日に1回、ジムでトレーニングをする。
2 行動を遂行した際のご褒美
3 契約違反の罰則(行動をさぼった際のペナルティ)
例 できなかったことをあらかじめ決めた友人に発表させる。
罰金として1万円を嫌いな政治家または団体に寄付をする。
罰則は、本当に嫌だと思うくらいのものに設定しなければ、意味がなくなります。また自分一人では「なあなあ」になって、結局は罰則を実行しなかったりして、そのうちにやらなくなってしまいます。
行動契約書を作成して、いつでも確認できるようにしておき、行動が停滞した場合、取り組みの関係者に協力してもらって、モチベーションの維持と方法の再点検をすると良いでしょう。
親が発達障害の子どもに行動契約を行う場合のポイント
1 約束は視覚化する
聴覚的な情報は消えやすく、発達障害の子は視覚的な認知が優れていることが多いためです。具体的には文書化すること、内容を思い出しやすくするため分かりやすく掲示しておくことが挙げられます。
2 代わりにどうすればよいかを明確にする。
「何をしてはいけないのか」ということだけでは、子どもは具体的に何をしたら良いのか分かりません。そこで「代わりにどうすれば良いのか」ということを具体的に示す必要があります。この内容は子どもが理解でき、かつ達成可能なものにすることが重要です。
3 約束の期間を決める
約束の期間をいきなり長くしたのでは、それを守ることが難しいものです。子どもが確実に守れる短期間から始め、徐々に長く伸ばすことが大事です。
4 達成したことを確認する
確認する際のポイントは誰が、いつ確認するかです。この場合、達成基準を設定しておいた方が良い場合もあります。例えば、こまめに達成感を感じることがモチベーションの維持に繋がるような場合です。
5 守れた場合のご褒美を決める
よくあるのは「約束は守れることが当たり前」という事で、守っても何の得(強化)も得られない場合があります。これでは、モチベーションが下がってしまいます。約束を守ることで、得をする体験を積み重ねることを通して、約束を守る行動を増やす(強化する)のです。
6 守れない場合のペナルティを決める
よく用いられる方法はトークン(ポイント)を撤去する方法で、これを「レスポンスコスト」といいます。これを進めるうえで注意すべき点は、達成基準を厳しすぎないようにするという事です。なぜなら、一度失敗しただけで約束事態を放棄してしまう危険性があるからです。
7 子どもの同意を得る
これは最も重要ですが、約束(行動契約)は必ず本人の納得や同意のもとで取り交わすことです。大人からの一方的な押し付けではうまくいきません。行動契約書を作成し、双方で署名しておくと効果的です。
行動契約書の例
目標 「怒りに飲み込まれ、感情的な言動をせず、冷静に話し合える。」
方法 ・リラクゼーション能力を向上(呼吸法)し、怒りを感じたら深呼吸をしてリラックスをする。
・一旦席を離れ、気持ちを落ち着かせる(トイレで顔を洗う)
・コーピングカード(気持ちを落ち着かせる言葉のカード)を見て考えがまとまってか
ら再度話しあう。
・毎晩、腹が経ったとき、同振る舞いどう話したらうまく言ったかを考え、うまくい
くまで繰り返しイメージトレーニングをする。
・妻と取り組みについての内容を確認し、怒りが抑えられなくなった時は部屋を出て
いき、どれほど怖かったかを交換日記に書いてもらう。
取り組み期間 20××年×月×日 ~ 20××年12月末日
ルール :自己流になっていないかをカウンセリングで週に1回チェックする。
特記事項:怒りをコントロールできるようになったら、どんな良いことが起きるかをイメージ
し、それを実現するように、自分のため家族のために毎日コツコツと取り組みま
す。
氏名 ○○○○
日付 20××年×月×日
取り組みを続けながら、改善点が出てきたら契約書を書き直し、文章化して再度共有するようにしていきましょう。
応用行動分析としては
嫌子出現阻止による強化(イヤなものが出現することが約束されているので、それを阻止するために行動する)
好子消失阻止による強化(よいものを失ってしまうことが約束されているから、それを阻止するために行動する)となります。